ナースほど誇れる仕事はありません

健康を大切にしたい方へ贈るひとりごと

信じるものは治る?がん患者の4割が試す「民間療法」とプラセボ効果

 

f:id:lady-jhones:20160106111646j:plain

現代西洋医学で十分に対応しきれない病気について、患者さんの心と身体を総合的に捉え、治療を行う必要があるのではと言う考え方も登場。

 

民間療法を再評価して補完代替医療として認め、現代西洋医学(通常医療)と組み合わせて「総合医療」が実践され始めています。

 

日本で利用者の多い補完代替医療の種類と、利用する理由や期待する効果、目的をまとめました。がん患者さんとご家族のお力になれるとうれしいです。

 

 

補完代替医療の種類~日本と欧米の違い

日本は健康食品が圧倒的に多く、薬と同じよう捉え過剰な期待をかけています。一方欧米では、症状の緩和や通常医療の補完が主な目的です。

 

日本の補完代替医療                

年齢が若い患者さん、高学歴の患者さん、進行がんの患者さんに補完代替医療を利用している人が多い。圧倒的に多いのが健康食品でアガリクスなどのきのこ類が8割近くを占めています。

  • アガリクスやAHCCなどのきのこ類
  • プロポリス
  • 漢方(医師の処方は除く)
  • サメの軟骨、
  • プロバイオティクス
  • アロマセラピー
  • 気功・鍼灸 など

 

欧米先進国の補完代替医療

がんの補完代替医療の取り組みは、非常に進んでいて、その有効性と安全性について、科学的根拠を求める研究も盛んです。

 

健康食品の利用頻度はあまり高くなく、鍼灸、マッサージ、ハーブ、ビタミン、ミネラルなどが多く利用されています。

 

利用の理由と目的

日本では、代替医療(健康食品)を薬と同じようにとらえ、がんが治る、進行を抑えると言った、直接的な効果を期待して利用している人が多い。

 

がん患者さんが一ヶ月に補完代替医療にかけている費用は、平均57,000円と言う報告もあります。薬ではないのにこれだけかけているのは、がんが治ることを期待しているからこそ。

 

一方、欧米では、症状の緩和や通常医療の補完が主な目的です。

 

健康食品は「効果があるかわからない」

健康食品はその有効性は証明できていません。しかし「効果がない」のではなく、「効果があるかどうかはわからない」いうことです。

 

日本の補完代替医療の検証は欧米に比べて非常に遅れています。しかし利用者の多さに何らかの対策が必要であると、補完代替医療の考え方や利用法をまとめた「がんの補完代替医療ガイドブック」が、厚生労働省がん研究助成金「がんの代替医療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班によって作成されました。

「がんの補完代替医療ガイドブック」 第3版2012年2月

 

ガイドブックによると、補完代替医療で有効性が確認されているのは、がんの痛みや抗がん剤の副作用(悪心やおう吐のあど)に対する鍼灸治療、不安や痛みに対するマッサージぐらいです。

 

ガイドブックで取り上げられている補完代替医療

  • 健康食品・サプリメント
  • プロバイオティクス
  • アロマセラピー
  • 漢方薬
  • 鍼灸
  • 運動(エクササイズ)

それぞれの詳細はガイドブックで確認出来ます。

 

健康食品利用に関して絶対に覚えてほしい注意点

・健康食品は、身体の中で薬と同じような働きをする可能性があります。
・健康食品は、身体の中で他の薬の働きに影響を及ぼす可能性があります。

また、この二つに併せて、「天然物質、食品・食物だからといって、それは安全であることを意味しているわけではない」ということも頭に入れておくべきです。

健康食品の「食品」という単語の中には「食べるもの=そんなに危険なものではない」といった安心感が存在しているかもしれません。一方で、その食品が持つ健康や病気に対する効果・効能となると、雑誌やインターネットなどでは、あたかも薬かそれ以上の効果・効能に近いことが、何の検証もなされず漫然と掲載されています。

そして、がん患者さんの中には「医薬品=副作用を有する危険なもの、健康食品=食べ物だから副作用がなく、どれだけ摂取しても大丈夫」といった誤解を抱いている場合も見受けられます。その結果、現代西洋医学を完全に否定し、科学的根拠のない治療法を選択して不幸な結果になることだけは、絶対に避けなければなりません

出典:上記のガイドライン

 

がん患者さんのQOL、アロマや鍼灸

西洋医学で言う、「治った」「治らなかった」という2極ではなく、患者さんの生きる質。QOLを重視する、アロマセラピーや鍼灸の効果は、東洋医学的な考え方です。

 

アロマセラピー

リラックス効果を期待できる、アロマオイルを使った療法がアロマセラピーです。

がん患者さんにアロママッサージをしたところ、マッサージ中、あるいは後に眠りにつき、倦怠感の軽減に効果がありました。

 

鍼灸

鍼灸でがんが消滅した、という症例も報告されていますが、鍼灸でがん独特の疼痛の緩和に役にたったという例がありました。

 

鍼灸師は言葉だけでなく身体を触ったりする、非言語のコミュニケーションで患者さんの意識が変化し、安心と希望を持つようになったと報告しています。

 

「ほかに良い方法はないだろうか」

西洋医学で治りにくいとされる病気の患者さんは、わらにもすがる気持ちで、民間療法や健康食品に救いを求める傾向があります。現代医学に有効手段がないのなら、それ以外の治療法を探すのは自然なことです。

 

がん患者さんの4割以上が民間療法を試している、とも言われます。しかし、治療目的の民間療法や健康食品の多くは、その有効性に科学的根拠が乏しいといえます。

 

患者を喜ばせる薬プラセボ効果ときのせい?ホーソン効果

プラセボはラテン語で「私は喜ばせる」の意味。医療では「偽薬」として使われていますが、正確には「患者を喜ばせる薬」ですね。

 

薬に依存性がある患者さんに処方されるのが、プラセボです。本物の薬と全く同じで看護師にも見分けはつきません。勿論害はなく、乳糖、食塩水、小麦粉などが使われることが多い。

 

偽物ですから本来は何の効果もないのですが、本物と同じ効果がある場合もあります。

 

信じるものは治る?

プラセボ効果について、その秘密を明らかにしたのは「医師が治療の効果を患者に信じこませることができれば、それだけでも患者の症状は改善する」ということを証明したのがイギリスのジョン・ヘイガース医師。1800年に本を出版しています。

 

さらにプラセボ効果を高める要素は次の3つと結論づけました。

  • 医者の評判が良いこと
  • 治療費が高いこと
  • 治療法が目新しいこと

実に鋭い洞察といえます。現代の民間療法でも同じことが言えるからです。

  • メディアで話題になっている
  • 有名人が推奨している
  • 費用がかかるが効果がありそう
  • いままでにない

どうですか?健康食品や民間療法を売り物にしている業者は、これをマネジメントに利用しているのでしょう。

 

3分の1は偽薬で効果あり

1955年にアメリカの麻酔医ヘンリー・ピーチャーがさらにプラセボ効果の研究をすすめました。モルヒネが無くなった時に、生理的食塩水をモルヒネと偽って注射したところ、モルヒネと同じ効果が得られました。

 

激しい痛みも抑える力を目の当たりに下のです。その後大規模な研究をした結果、手術後の痛み、頭痛、狭心症、席、風邪などの患者の3分の1は偽薬で良くなったのです。

 

それまで普通に行われていた治療法のうち、いくつかはプラセボ効果によるものだったということも解りました。

 

プラセボ効果のメカニズム

どういうメカニズムで身体に変化をもたらすのか、解明が行われています。

 

一つは条件付け反応説。「パブロフ反応」ではないかというもの。無意識に怒ります。

もう一つは期待感。「この治療でよくなる」という期待感で、治療の効果が上がる可能性がたかまるというもの。

 

ホーソン効果

人が潜在的に持っている「人に注目されたい」「特別な存在と思われたい」という心理に働きかけることで症状が改善するもの。言わば「気のせい」が症状の改善に役立つと言ったことです。

 

これは、シカゴ郊外のホーソン工場で行われた、医療とは関係ない実験がもとになっています。

  • 誰かが自分の体調を気にしてくれたということが嬉しく、無意識のうちに以前より良くなったと感じる部分をさがす。
  • 手に入れた健康食品が特別なもの、手に入りにくいもの、高価なものだったりすると、手に入れた満足感で体調が良くなることもあります。

ホスピスでは、お見舞いの多い患者さんのほうが、生存期間が長いと言われています。

 

まとめ

なぜ4割ものがん患者さんが代替医療に頼ろうとするのか。医師はこのことをもっと考えなければいけない。

 

ただ症状を伝えているだけでも、患者さんがどんな気持ちでそれを聞いているのか、想像したことはあるでしょうか。

 

医師は心理学を学んでいるわけではないので、患者の気持ちがわからないかもしれません。しかし、少なくとも患者の気持ちに思いをはせる努力はしてほしい。

 

 

乳がんで余命2年と宣告されても、抗がん剤も延命治療も拒否し、日常生活に支障がないように、身体を楽にしてもらう治療を受けていた、亡き佐野洋子さんの言葉です。

 

「こんな私でも一つだけ言えるのは、お医者さんだけは気の合う人に出会うまで探したほうがいい」 出典:文藝春秋SPESIAL 2010年冬号

 

「ナースのひとりごと」~今日も1ページ

 

 画像出典: アガリクス - Wikipedia