脂肪肝ではバランスの取れた食事と運動が治療の基本でした。慢性肝炎が進行して起こる肝硬変の場合はまず血液検査でしらべ、原因に合わせて治療法を決めます。原因別の治療法についてお伝えします。
原因により異なる肝硬変の治療
肝硬変は慢性肝炎が進行して起こります。そのため治療法は、慢性肝炎の原因に合わせて行われます。慢性肝炎の原因には
- アルコール
- 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
- C型肝炎ウイルス
- B型肝炎ウイルス
があり、診断の確定には、まず血液検査を行います。
肝硬変の診断と治療
治療には、まず肝硬変かどうかを調べるために血液検査を行います。血液検査でアルブミンやChE,血小板の値が上がり、総ビリルビンやアンモニアの値が上がっている場合は、肝硬変が疑われます。
エコー(超音波)検査を受け、肝臓の状態を詳しく調べて肝がんの疑いがある場合は、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)などの画像検査が行われます。
慢性肝炎の原因別の治療法
炎症の原因 | 主な治療法 |
---|---|
アルコール | 禁酒 |
非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) |
バランスの良い食事 適度な運動 |
C型肝炎ウイルス | 代償期であれば ペグインターフェロンとリバビリンの併用 インターフェロンの単独療法 インターフェロンとリバビリン併用治療 インターフェロンの経口剤治療(Child-Pugh分類Aに限る) |
B型肝炎ウイルス | 拡散アナログによる治療 |
なかなか改善しない |
|
肝庇護療法 | ウルソデオキシコール酸 グリチルリチン製剤 |
アルコール
- 禁酒が基本
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
- バランスの良い食事と適度な運動を行う、生活習慣の改善が大切
- 糖尿病がある場合はその治療をしっかり行う
C型肝炎ウイルス
代償期(症状があまりない)は肝硬変の初期にあたる
- インターフェロンの単独治療
- インターフェロンとリバビリン併用治療
- ペグインターフェロンとリバビリン併用治療
- インターフェロンの経口剤治療(Child-Pugh分類Aに限る。2014年より認められた。)を行いウイルスを排除したり肝硬変の進行を抑える
B型肝炎ウイルス
- 拡散アナログによる治療でウイルスを減らすことで、肝がんへの進行も抑える可能性もある
このような治療を受けても改善しない場合や、治療を受けられない場合、
肝庇護療法
- ウルソデオキシコール酸の内服、グリチルリチン製剤の内服や注射をする
肝臓の炎症を押さえて、肝硬変の進行を抑える効果が期待できる
日常生活の注意点
肝硬変は日常生活でも心がけると良いことが有ります。例えば、
- むくみや腹水がある場合
減塩に取り組む - 便秘
体内にアンモニアが増えるので感性脳症を起こしやすくなる。
便秘を防ぐために野菜や海草類、キノコ類、豆類などの食物繊維を多く含む食品をたくさん摂る
などです。
肝硬変があると、タンパク質を構成する必須アミノ酸のうち、「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」の消費量が増えてきます。これらをまとめて「分岐鎖アミノ酸」といい、その補給も必要になります。
睡眠中のエネルギー不足を防ぐ
栄養素の合成・貯蔵のは盥が低下し肝臓に貯蔵するグリコーゲンの量が減るため、起床時に健康な人が3日間絶食したのと同じような、飢餓状態に陥ることも。
睡眠中にエネルギーが不足しないように、寝る前に分岐鎖アミノ酸を含む200kcal程度の「肺不全用栄養剤」などを補給します。
運動も必要
肝臓の病気と言うと、かつては安静第一とされていましたが、アンモニアの代謝などは筋肉でも行われるので、筋力を低下させないことも重要とされています。肝硬変でも無理のない運動を行うことが大切です。
肝臓移植
重症化した肝硬変を根本的に改善するには、肝臓移植が必要です。肝臓移植には
- 脳死肝移植 脳死判定された人から提供される
- 生体肝移植 健康な人から提供される
があります。現在は健康保険が適用され、患者さんの経済的な負担はかなり軽減されました。しかし、肝臓を提供する人(ドナー)がまだまだ不足している状態が続いています。
再生医療
臨床研究の段階ですが、患者さんの骨髄細胞を採取し、末梢血管に点滴する再生医療も行われています。現在研究中ですが、骨髄細胞が肝硬変の繊維部分に集まってそれをとかし、肝臓の再生能力を回復させることが確認されています。
iPS細胞
iPS細胞の登場により肝臓再生療法は新たな局面を迎え,人工的に肝芽などの臓器原基の作成が可能となり,新たな概念として臓器原基移植療法が提唱されている.今後,これらの肝臓再生療法の実用化が「再生医療等製品の実用化に対応した承認制度」の実施に伴い加速することが期待される.
まとめ
ウイルス性肝炎は抗ウイルス剤の進歩で、肝硬変の進行を抑えることが可能となっていますが、アルコールの飲み過ぎや非アルコール性脂肪肝炎による肝硬変は増加傾向です。
肝臓の異常をいち早くキャッチし、適切な治療を行うことが重要となり、定期的な血液検査が勧められます。
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