発達しょうがいのタイプや問題となる行動、症状などによって、それぞれの子供に応じて個別に考えることが必要です。専門スタッフも関わって子供の困難を減らすサポート療育と、薬物療法についてお伝えします。
発達しょうがいの症状に有った治療
発達しょうがいの子どもたちが、社会生活をうまく送れるようにするには、環境づくりが重要です。
治療には必要に応じて療育、薬物療法が行われることもあります。問題となる行動や症状が確認され、それに応じて訓練や相談などが療育で行われます。
気持ちや行動、体に問題がある場合は、薬物療法が行われることもあります。
専門機関での療育は学齢期前の子供なので、小学生以上の場合は、まず学校の教師に相談することが勧められます。
療育を行ってもすぐに問題が解消するわけではありませんので、焦らず、長い目で見守ることが大切です。
療育とは
社会生活をスムーズに送れるようにするため、本人や家族をサポートするのが療育です。
医師、心理士、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、保育士など専門のスタッフが、子供に現れている問題となる行動や症状を、できるだけ正確に読み取り必要に応じてコミュニケーションの訓練などを行います。
全体で子供を支援する環境づくり
専門スタッフが学校や保育園、幼稚園などの様子を見に行ったり、教師などと連絡を取り合ったりしながら、子供の困難を減らすサポートをします。
家庭、学校、地域のつながりを作り、子供が過ごしやすい環境づくりを進めていきます。
社会生活を送るためには、
- 話す力
- 理解する力
- 人と付き合う力
といった、様々な能力が必要ですが、発達しょうがいのある子供は、これらのいくつかがうまく育っていません。
そのため本人が困難を感じたり、周囲に迷惑をかけたりしてしまい、社会生活がうまくいかないことも多い。
療育はそういった問題を減らし、社会生活をスムーズに送れるようにするためのサポートです。
療育を受ける
療育について詳しく知りたい場合は、日本全国の地方自治体で療育を行っている「児童発達支援センター」などに相談することをお勧めします。
基本的に学齢期以前の子供を対象として入るので、小学生以上の場合は、まず学校に相談することが進められます。
ただ、療育をおこなかったからと言って、すぐに社会生活に問題がなくなるわけではありません。焦らず長い目で見守っていくことが大切です。
薬物療法
発達しょうがいの薬物療法は、以下のような特定の問題となる行動や症状がある場合に、それらを軽減するために用いられます。
発達しょうがいそのものを治療するわけではありません。薬物療法に抵抗を感じる人も少なくありませんが、子供の困難を減らすために前向きに検討することも大切です。
- 気持ちに問題ある
- 行動に問題がある
- 体に問題がある
気持ちや行動に問題がある
【気持ち】
- 興奮しやすい
- 衝動性がある
- フラッシュバックがある
- 抑うつ気分がある
など
【行動】
- 多動(おちつきがない)
- 自傷(自分を傷つける)
- 他傷(他人を傷つける)
などがある場合です。
体に問題がある
不眠、腹痛、頭痛、感覚過敏などがある場合です。
発達しょうがいはお伝えしたように、
- 広汎性発達しょうがい(自閉症スペクトラム)
- 注意欠陥多動性しょうがい(ADHD)
- 学習しょうがい(LD)
と大きく3つに分けられますが、必ずしも「このタイプにはこの薬」というように用いられるわけではありません。
例えば、衝動性はADHDでよくみられますが、広汎性発達しょうがいでも見られる場合もあります。どのような薬を使うかは、あらわれている問題となる行動や症状によって判断されます。
多動、衝動性が強い場合の薬物療法
事故などの危険性が高まるのが、発達しょうがいにより多動や衝動が強く表れている場合。注意力が続かなかったり、衝動的な行動をしたりするためです。
- 事故を防ぐ
- 落ち着くことを体験する
ことを目的に薬物療法がおこなわれることもあります。
落ち着くという状態を体験
多動や衝動性が強い子供は、「落ち着いて〇〇して」と言われても、落ち着くという経験がないので、それがどういうことなのか想像できません。
薬物療法で「落ち着く」という状態を体験することができます。それを繰り返すことで多くの場合、薬を用いなくても落ち着けるようになっていきます。
薬物療法を使った子供が、文字を書くことに集中し、落ち着いてきれいに整理された連絡帳を取れるようになったケースもあります。
予想される副作用
現在日本で使われている薬は、「メチルフェニアデート徐放剤」と「アトモキセチン」の2種類です。
脳の中で情報を伝える神経伝達物質が、より適切に調整する働きをするものです。
- 集中力が増す
- 多動や衝動性を抑える
と言った作用があり、副作用としては
- 食欲不振
- 不眠
- 体重減少
がありますが、重篤な副作用は報告されていません。
薬物療法を受ける際は子供の家族などが、予想される薬の作用と副作用についてきちんと説明を受け、納得した上で治療を開始しましょう。
効果が認められればしばらく薬の服用を続けます。多くの場合は、子供の成長に伴って、薬は不要になります。
薬物療法の前に
発達しょうがいの薬物療法は、有効な治療の一つですが、十分な環境づくりが行えれば、受けなくても良いケースは多くあります。
発達しょうがいの治療では、まず、子供を取り巻く環境づくりに取り組むことが大切です。
まとめ~子供と家族をサポート
発達しょうがいでは、問題となる行動や症状に応じた治療が大切。社会生活上の困難を減らし、子供と家族をサポートする療育が行われることもあります。
専門スタッフが関わり、家庭、学校、地域全体で環境づくりを担います。子供を取り巻く環境づくりが重要です。
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