一口に中高年看護師と言っても、病院組織により、求められる役割や能力は異なります。経験年数が7年目以上や3~10年を中堅とみなすもの、年齢軸で見て30~49歳あたりとみなすものがあります。
中高年看護師に期待される役割とキャリア開発
2025年問題は、看護師不足が深刻な問題として取り上げられていますが、団塊の世代の大量定年退職で、技能の高い人材が窮乏し、人的資源の痛手も言われています。
企業は定年制の延長、制度そのものの廃止、セカンドキャリアの推進などを始めています。
看護界でも、中高年看護師の人材活用、定年退職後のセカンドキャリアに関する提言が盛んになっています。
中高年看護師の増加は、統計的資料*でも明らかで、40歳以上の就業率はわずかに増加しています。
*厚生労働省保険・衛生行政業務報告の概況 pdf p12
中高年看護師のキャリア開発
職業キャリアの発達の視点からは、30歳ころから45歳までを中期キャリアと呼びます。この層には
- 職業的に責任を持つようになり、中堅どころから上級管理職の昇進、専門性を発揮するなど、充実した職業キャリアの発達を示す
- 労働人口の高齢化に伴い、昇進の機会がなくなり、夢や希望と隔たりがある。現実の将来性のなさへの絶望感から、むなしさや寂しさを感じる
が存在します。これは、この時期後半の中期キャリアの危機段階をどう乗り越えるかによります。
中高年看護師の組織内での役割
「35歳以上の役職を持たない看護師」、が年齢軸でとらえた中高年看護師ととらえる文献が見られます。しかし、組織内での役割と言う視点でとらえると、中高年看護師は、
- 中堅看護師
- ベテラン看護師
と言うとらえ方と重なり合う部分が多いです。
セカンドキャリアへの準備期間
多くの場合、60歳を定年に設定していますので、50代後半から60まで、健康にさしたる障害がなければ、退職後のセカンドキャリアについて、情報を得たり、研修に参加するなどして心構えや準備をしておくことが重要です。
60歳を超えた看護師の就業率は、ガクッと下がりますが、日本看護協会の「潜在並びに定年退職看護職員の就業に関する意向調査」2007年報告書によれば、定年退職後も看護師として働きたいと回答した看護師は42.6%もいました。
さらに、62.7%は現在勤務している場所とは異なる職場を希望しています。診療所、ケアハウス、グループホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、介護老人福祉施設が上位です。
出典: 潜在看護職員の再就業意向 pdf p25 厚生労働省
組織が中高年看護師に求めるもの
中高年看護師に求められるものは
- 看護実践者のモデル
- 師長とスタッフ間のパイプ役
- 新人看護師や中堅看護師などのメンター的存在
- セカンドキャリアへの挑戦
などです。
看護実践者のモデル
単に経験年数を重ねるだけでは、個人の能力は陳腐化します。時代の複雑な要請にこたえ、看護実践能力を絶えず研鑽していく持続力が必要。いつでも要請にこたえられるスキルを身に着け、若年看護師たちの役割モデルとなれることを求められています。
師長とスタッフ間のパイプ役
これからの病院には、変革の必要な課題が山積みです。師長には変革推進者の役割が課せられますが、それに積極的に賛同し、周囲への説得力を持つスタッフが必要です。時には率先して行動し、スタッフの思いや不満を代弁する調整弁となる役割も求められます。
新人看護師や中堅看護師などのメンター的存在
新人看護師やライフイベントを抱えた中堅看護師などの面たー的な存在としての役割を求められています。長い臨床経験、豊かな人生経験に基づいた偉人関係能力や洞察力を駆使し、患者・家族の良き相談相手、スタッフの成長を支えてくれる、メンター的な役割が担えることを求められます
セカンドキャリアへの挑戦
勤務していた医療機関に限らず、在宅看護領域や介護福祉施設への挑戦も含みます。就業意欲の高さの実態としては、今まで経験したことのない領域で、キャリアを生かしたいという意見が多くありました。
参考: 定年退職後看護職のセカンドキャリア開発支援事業報告書 eナースセンター
セカンドキャリア支援 厚生労働省 看護職員確保対策特別事業「定年退職等看護職員のセカンドキャリア開発支援モデル事業」
中高年看護師の自己啓発
キャリア確立期にある看護師が, ライフイベントなどに対応できる多様な勤務形態を整えるのに、短時間正職員と非正規雇用者との組み合わせを考えていくことや。
彼らを支えるバックアップナースの存在も重要となります。ここに中高年看護師の出番があるのではないでしょうか。
さらに中高年看護師の自己啓発、特に,50代後半で健康にさしたる障害がない場合、退職後のセカンドキャリアについて研修に参加して情報を得るなどしておきましょう。
心構えや準備をしておくことが重要です。
組織的にも研修計画にこの課題を取り入れ、組織と個人の協働作業として推進させていくことが求められます。また,日本看護協会や行政の人材獲得事業としても引き続き行ってはしいものです。
看護師不足の解消に潜在看護師の復職
労働環境や人間関係で離職した看護師は、たいていの場合は転職して、他の職場で働いているのが現状です。しかし、結婚や子育て、激務から心や体の病から離床した場合、潜在看護師として、看護師の仕事にはついていないケースも少なくありません。
2025年問題などで、看護師不足がいろいろなシーンで取り上げられていますが、潜在看護師の掘り起こしが看護師不足の解消に大きな力となるであろう、とも言われています。
看護師をとりまく労働環境の改善などの取り組みもあり、看護師の離職率は若干ではありますが低下してきているようです。
ブランクが不安
出典: 潜在看護職員の再就業意向 厚生労働省
(潜在ならびに定年退職看護職員の就業に関する意向調査報告書 日本看護協会)
現場から離れたブランクが不安で、復職の意志はあるものの、就職活動は行っていない看護師も多いです。
病院単位や看護協会などが復職支援を行っているので、それらを利用し、復職する看護師も増えてきました。
ブランクで最新の医療知識などの不足があっても、研修や自己研さんで補えるし、体に染みついた看護の技術は、すぐに実践に生かせます。
役職についていない中高年看護師に病院が寄せる期待と同じように、ブランクがあっても復職、再就職した潜在看護師のスキルは、貴重な戦力となるはずです。
大変な思いをして取得した看護師の資格です。働ける環境にあるのなら、眠らせておくのはもったいない。
新たなキャリア開発にチャレンジしてみるのも、人生を充実させる一つの方法ではないでしょうか。
まとめ~中高年、潜在看護師のキャリアアップ
役職についていない、あるいは潜在の中高年看護師には、新人看護師や、役職がある看護師にはない、貴重な役割があります。
病院側が求めるものを提供しつつ、キャリアアップ、キャリア開発について、そしてセカンドキャリアについて考えてみましょう。
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