潜在看護師が復職すれば、深刻な看護師不足の解消につながりますが、復職が進まないのは何故か、その前に、そもそもなぜ潜在看護師となったのかも考える必要があります。
確保法の目的と潜在看護師
27年10月、2025年問題に向けて、潜在看護師の復職を支援する、改正看護師等人材確保促進法(以下、確保法)が施行されました。
この制度で、潜在看護師の復職が促されるのかはまだ未知数ですが、確保法のスタートを、あなたの身近にいる潜在看護師に、是非伝えて欲しいと思います。
「看護師などの資格を持ちながら結婚や出産などで退職した人、看護師として働いていない人」の情報を都道府県のナースセンターに登録することで、復職支援を推進することを目的としています。
復職を考える看護師は、多くの場合人材紹介会社に登録して復職先を見つけたり、復職支援を受けたりしますが、確保法により、離職した段階で看護師の情報を得ることで、復職を考える前から様々なサポートをすることが可能となりました。
潜在看護師が生まれる理由
潜在看護師の内1割でも復職すると、看護師不足は大きく緩和され、現場の看護師にとっても働きやすい環境が生まれると思うのですが、なぜ71万人もの潜在看護師がいるのでしょうか。
最近は男性の看護師も増加していますが、95%程度は女性が占める職場です。多くの看護師が結婚や出産の時期に、看護師の仕事を続けるかどうかで悩むことが多い。
看護師としてのキャリアを続けたいと思っても、家事や育児の両立が難しいという現実に、離職する看護師も多いのです。
厚生労働省の調査でも、辞めた理由として「出産・育児」が22%と一番多く、結婚は18%となっています。
家事や育児と仕事の両立
看護師は女性が多く働く職場でも有り、子育てのサポートや院内保育所、保育施設を併設している病院などもあり、一般企業よりも子育てのし易い職場です。
それでも結婚や育児でキャリアを中断する看護師が多いのは、家事や子育ての負担が、依然として女性に大きくのしかかっているためです。
イクメンという言葉も流行り、以前と比較すると、家事や子育てに協力的な男性も増えているのは確かです。それでも女性にかかる負担は大きく、看護師の仕事との両立は難しいといえます。
肉体的精神的にタフでないと務まらない
学生時代は実習で患者さんを1人づつ受け持ち、卒業しますが、実際の臨床では何人もの患者さんを受け持ち看護します。
自分で考えた看護ができなくなり、人の死に対峙し、様々な患者さん、同僚、先輩…。
リアリティショックとカルチャーショックで新人ナースのまま辞めた看護師も、潜在看護師です。
身体を壊したり心を病んだりして、看護師の仕事自体が続けられない、と辞めた人も多い。この場合は、もう一度看護師の仕事に戻りたい、と思う強いきっかけなどがなければ、復職は考えないものです。
看護師は肉体的にも、精神的にもタフでないと務まりません。
もともと看護師になる気持ちが微弱だった
今の医療職は、高校卒業後の進路を決定した時に職業が決まってしまいます。17,8歳での決断が自分には合っていなかった、という場合も少なくありません。
看護師の資格を取得したものの、やっぱり違う、と他の職種に就職したり、看護師になって働いてみたけれど、看護師には向いていなかった、と辞めた場合もあります。
看護師に向いていない、と自覚した人は、看護師とし復職、就職を考えることはまずありません。しかし、この人達も潜在看護師としてカウントされます。
潜在看護師の復職を後押しするには?
退職してからのブランクがながければ長いほど、復職の希望はあっても看護師として働けるか不安を持つものです。
医療の世界は日進月歩であることを、身を持って知っているためなおさらです。復職を考えたら、復職支援の利用がおすすめ。
復職支援
都道府県のナースセンターでは潜在看護師を対象とした、再就業支援などの研修や情報提供を受けられますので積極的に利用しましょう。
人材紹介会社の利用もおすすめです。あなたを担当するエージェントが、様々な相談に乗ってくれて、復職のアドバイスや、復職先のマッチングをしてくれます。
ナースセンター、複数の人材紹介会社の利用がスムースで満足出来る復職に繋がります。
待機時の学習
看護師として働いていない期間も、勉強をしようと思えば様々な手段があります。
女性としてのライフプラン、看護師としてのキャリアプランをしっかり考えていると、やりたい看護のための資格をとったり、研修やセミナーに参加したりといったことも可能です。
しかし、一般的にはそういった気持ちの余裕はなかなか持てず、実現できる人は少数派です。
確保法(改正看護師等人材確保促進法)とは
昨年スタートした確保法が、どのような内容で、何を目的としているのかをお伝えします。
都道府県のナースセンター
- 「看護師などに対して、就業の促進に関する情報提供や、相談などの援助を行うこと」が新たな業務として追加される
- 「業務に必要な情報の提供」を公共職業安定所などに求める権限が付与
看護師など
- 「病院などを離職した場合、住所や氏名などを都道府県のナースセンターに届け出る」努力義務が課される
潜在化を防ぐ
看護師などが退職した後も、ナースセンターが住所や所在を把握できるので、復職を考える前の段階からコンタクトをとり、効果的・総合的な支援を行えるようになると、期待されています。
看護師が届け出る情報
- 氏名生年月日
- 住所
- 電話番号やメールアドレス等の連絡先
- 登録番号と登録年月日(保健師籍、助産師籍、看護師籍、准看護師籍)
- 職歴など就業に関する状況
届け出内容に変更がある場合は、届ける必要があります。
病院には、看護師が離職するときに、この届出を行う努力義務があることを説明して、看護師に届け出を促したり、届け出を代行したりする努力義務が課せられます。
看護師等の届け出制度について
看護師等の届出サイト「とどけるん」から届けます。
看護師等の届出制度は、看護職*の復職支援を円滑に行うために、ナースセンターへ看護職が離職時等に届出を行う制度です。 離職した看護職の状況をナースセンターが把握することで、復職を希望する方の支援やご自身に合う病院の紹介、生活に合わせた働き方の提案が可能となります。 また、結婚・育児等で長期間現場を離れてしまい現場への復帰が不安な方にも、最新医療の技術研修等を用意し、職場復帰しやすい環境を提供します。
*看護職は保健師、助産師、看護師、准看護師を含みます。
出典: eナースセンター
2025年問題
元データ: 厚生労働省医政局看護科調べ
2025年には3人に1人が65才以上、団塊の世代が後期高齢者となる超高齢化社会。医療費の増大に伴う財源確保の問題もありますが、医療従事者の人手不足も深刻です。
2012年時点での看護師等の総数はおよそ154万人、看護師は年間約3万人増加していますが、このペースで看護師が誕生しても、厚生労働省の2012年の推計では、2025年には約200万人(196万人~206万人)の看護師が必要と試算され、約3万人~13万人の看護師不足が生じる計算です。
一方で看護師の資格を持ちながら、看護師として働いていないいわゆる潜在看護師は約71万人いると、厚生労働省は推計しています。
確保法の施行で、復職前からの様々な働きかけが、潜在看護師の減少に効果が出て、2025年問題、看護師不足の解消に繋がると良いですね。
まとめ~潜在看護師の職場復帰を目指して
超高齢化社会での看護師不足の解消に、確保法は潜在看護師の掘り起こしを後押しすることが出来るのでしょうか。
スタートしたばかりですので利用がどのくらい進んでいるのかなどわかりません。
しかし、復職の気持ちが有っても、不安や様々なハードルがあって、復職をためらっている潜在看護師の背中を押すことができれば、2025年問題、深刻な看護師不足への対応もできそうですね。
復職支援などの情報、サポート窓口
潜在看護師の再就業に向けたサポートは、確保法の施行で潜在化する前から可能となりそうです。各地の看護協会やナースセンターが積極的に取り組んでいます。
人材紹介会社のよりきめ細かいサポートと組み合わせ、希望の職場に復帰して活躍してください。
復職先の病院で、独自の復職支援プログラムなどの研修を受けることができる場合もありますので、積極的に利用しましょう。
日本看護協会、全国の看護協会
看護職が健康で安全に働くための就労条件や環境の整備、ワークライフバランスを推進するための情報を提供。育児休業などからの再就職にも活用できます。
eナースセンター、全国の都道府県ナースセンター
潜在看護師師などを対象とした再就業支援などの研修、情報提供
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