健康と日々の徒然~Anのひとりごと

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乾癬はうつるという誤解はやめて!ストレスが辛い皮膚の病乾癬を悪化

乾癬は慢性的な皮膚の病気でうつりません。見た目から「うつる」と誤解されることも多く、心理的なストレスで更に症状が悪化しがちです。社会が正しい知識を持つことが治療の第一歩かも。今回は乾癬についてお伝えします。

 

乾癬はうつるという誤解がストレスとなり、辛い皮膚の病乾癬を悪化

乾癬とストレス

先日モデルの道端アンジェリカさんが、乾癬であることを発表しましたが、公にしたきっかけは「肌が汚い」と書き込みされたことらしいですね。公表したことで、病気と前向きに向き合うことができ、症状が多少改善されてきたとか。

乾癬とは皮膚症状を含む全身性の慢性炎症性疾患。皮膚が赤く盛り上がり、表面にフケのような白い粉(鱗屑:りんせつ)ができてはがれ落ちる

症状は一般に頭に最初に現れ、その後肘、お尻、ひざなどに多く現れます。かゆみを伴うこともあります。

乾癬はうつらないのですが、皮膚の表面の症状をみて「うつる」と根拠のないうわさ話などが広がりやすい。

乾癬の患者さんはただでさえ辛い皮膚の症状に加え、精神的なストレスを受けて更に悪化するケースも少なくありません。

誰もが乾癬についての正しい知識をもてるよう、積極的な情報発信が望まれます。

 

治療は4種類

乾癬の治療は

  • 外用薬(塗り薬)
  • 内服薬(飲み薬)
  • 光線療法
  • 生物学的調剤

が基本です。症状に併せて選択します。

 

外用薬(塗り薬)

乾癬治療は外用薬(塗り薬)が中心です。

この2種類の塗り薬を組み合わせて使います。

その他に活性型ビタミンD3+ステロイドの配合外用剤新薬として

  • カルシポトリオール水和物/ベタメタゾンジプロビオン酸エステル(ドボペッド)3月2014年9月発売
  • マキサカルシトール/ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(マーデュオックス)2016年3月承認

が発売されています。

 

内服薬(飲み薬)

  • レチノイド(ビタミンA誘導体: 皮膚細胞の異常増殖(新陳代謝)を抑える
  • シクロスポリン(免疫抑制薬): 免疫の異常を抑える

などがあり、皮膚症状が強い場合などに用いられます。レチノイドは単独で用いる場合と、光線療法と組み合わせる場合があります。

 

光線療法

炎症や細胞の増殖を抑える効果のある紫外線を使った治療です。外用薬だけでは良くならないときや、発疹の面積が広くなった場合などに行われます。

紫外線は波長により種類がありますが、効果が認められるのはUVA(長波長紫外線)とUVA(中波長紫外線)です。

ナローバンドUVB療法 
装置を使って紫外線を照射します。UVBに含まれる有害な波長を取り除き、治療効果が高い波長のみを用います。

PUVA療法のように事前に薬をつけたり飲んだりする手間がなく、照射時間が短く効果も期待できる治療法です。通常週に2~3回の照射を行います。

PUVA療法 
UVAを用います。照射の前に紫外線に反応する薬を内服、または外用します。

直射日光をあびることも推奨されていますが、紫外線に皮膚の発がん性などもあるので、適度にあびることが大切です。

 

生物学的製剤

2010年から使われるようになったのが、バイオテクノロジーを用いて開発された生物学的製剤です。乾癬が発症する原因となる物質を標的にして抑える治療薬です。

  • 基本治療で十分な効果が得られなかった
  • 飲み薬を使えなくなった
  • 重症の乾癬

などの場合に行われます。

3ヶ月間程度で約7割の患者さんが十分に満足の行く効果を得ることが報告されており、乾癬の治療状況が大きく変わってきたと言えます。

現在日本で承認されている生物学的製剤は以下の4つです。(2015年2月現在)

一般名(製品名) 作用機序 投与形態 投与間隔 発売日
アダリムマブ(ヒュミラ) 抗TNF-α抗体 皮下注射 2週間毎 (期間延長可) 2010年1月
インフリキシマブ(レミケード) 抗TNF-α抗体 点滴静脈注射 初回投与後は2週間、6週間、以後2ヶ月毎 2010年1月
ウステキヌマブ(ステラーラ) 抗IL-12・23抗体 皮下注射 初回投与後は4週間、以後3ヶ月毎 2011年3月
セクキヌマブ(コセンティクス) 抗IL-17A抗体 皮下注射 1週間毎を4週、以後1ヶ月毎 2015年2月

使い方は薬の種類によって異なり、2~12週間に1回のペースで使われます。

生物学的製剤を使うと免疫の働きが低下して、肺炎や結核などの感染症を起こしやすくなります。使用する際には、重症度や関節絵の有無をチェックし、定期的な通院と検査*を受けることが必要です。

*血液検査や胸部X線検査など

 

乾癬とは~症状の起こり方と原因

スキンケアでよく言われる肌の新陳代謝(ターンオーバー)、体全体の皮膚の表皮も、約28日間のサイクル*で古い細胞が新しい細胞に入れ替わります。

しかし乾癬を起こした皮膚では、新陳代謝のサイクルが4~5日に短縮されてしまい、角質層がきちんと作られない状態になっています。

また乾癬を起こした皮膚では、表皮や真皮に免疫細胞が異常に増加し、免疫の調節がうまくいかないことで、皮膚が赤く盛り上がる炎症を引き起こします。

*年齢とともに遅くなります。

乾癬の種類

汗腺の種類 特徴
尋常性乾癬 最も多く、患者さんの約9割を占める
滴状乾癬 かぜや扁桃炎が起きた後に、小さな水滴程度の大きさの皮膚の症状が多数現れる
関節症性乾癬 皮膚の症状のほか、関節の腫れ、痛み、変形がおこる
乾癬性紅皮症 皮膚の症状が全身に赤く広がり、発熱、倦怠感などを伴う重症のタイプ
膿疱性乾癬 発疹が膿を持ち、高熱、倦怠感などを伴う重症のタイプ入院治療を要する

 

皮膚の状態

健康な人の皮膚構造

健康な皮膚では表皮の下部で表皮細胞が分裂し、新しく生まれた細胞は約28日間で徐々に上に押し上げられ、角質層に達してはがれていきます。これが肌の新陳代謝、ターンオーバーです。

乾癬を起こしている皮膚

乾癬のある人の皮膚では、表皮細胞の分裂の速度が正常の3~10倍に早まり、新しく生まれた細胞はたったの4~5日で上に押し上げられ、未熟なままはがれ落ちていきます。

特殊なTリンパ球*がTNF-α(Tumor necrosisi factora:腫瘍壊死因子)により活性化し、新陳代謝の短縮に関与しています。

一方TNF-αは特殊なTリンパ球や表皮細胞で大量に作られて、皮膚の炎症を悪化させます。皮膚が赤く盛り上がるのはこのTNF-αが炎症を引き起こすためです。

* IL-17(インターロイキン-17)
 IL-23(インターロイキン-23)

 

乾癬の原因

完全にはわかっていませんが、乾癬になりやすい体質に、様々な要因が加わる、本来は体を守る免疫の働きを持つ細胞が、皮膚で起こる免疫の異常に関係して、乾癬の症状を引き起こしていると考えられています。

  • 仕事や家庭でのストレス
  • 不規則な生活
  • 遺伝的素因

また要因として上げられます。そのほかに

  • 喫煙
  • 偏った食生活
  • かぜなどの感染症
  • 薬剤の使用

などが要因になることもあります。

メタボリックシンドロームを併せ持っている乾癬の患者さんが多く、不規則な生活や偏った食生活が影響していると考えられています。

「乾癬はうつる」、という誤解も大きな心理的ストレスとなり、症状の悪化を招くことも少なくありません。

皮膚の症状は、物が当たったりこすれるなどの物理的な刺激によって起こると言われ、強いかゆみを伴うことも、かゆみが無いこともあります。

 

日常生活で意識すること

症状の悪化を防ぐには、以下のような日常生活での注意点を意識しましょう。

衣服 

  • 皮膚にこすれるなどの刺激を与えないことが大切。
  • 衣服は柔らかくゆったりしたものを選ぶ。
 

入浴 

  • 毎日入浴し清潔を保つ。
  • 湯の温度は40℃程度の温めにする。熱いお湯では痒みがでやすい。
  • 炎症を起こしている部位は、石鹸を使う場合はよく泡立てこすらないように優しく洗う。
  • よく洗い流してからタオルで軽く抑えるように拭く。

食生活 

  • バランスの良い食事を心がける。
  • 食べ過ぎで摂取エネルギーが多くなりすぎないようにする。
  • 香辛料は痒みが増すことがあるので控える。

日光浴 

  • 日光には紫外線が含まれている。
  • 光線療法を受けていない患者さんは、日焼けで皮膚が赤くならないように注意しながら、適度に日光をあびることも大切。

 

治療に積極的に取り組む

医師とよく相談しながら、自分にあった治療法を選ぶことが大事です。また、悪化につながる要因をみつけ、できるだけ避けるようにします。

積極的に治療に取り組むことで、乾癬のない人と同じような生活を送ることも加納なので、治療を諦めないことも大切です。

普段と違う発疹や症状がでた場合は、医師に相談しましょう。

乾癬はうつりません!

乾癬は人に感染する病気ではなく、触れたり同じプールや温泉に入っても、絶対にうつりません。

しかし、「乾癬はうつる」という誤解も少なくないので、精神的なダメージを受けやすいのも事実です。

乾癬の症状が悪化する要因の多くは、ストレスですが、誤解されていることからくるストレスが多いのが残念です。

参考:皮膚科Q&A 乾癬 日本皮膚科学会

 

まとめ

乾癬の範囲が広がっていくと治りにくくなったり、糖尿病や高血圧症、脂質異常症、心血管疾患と行った依存症を合併するリスクも高くなるとされています。

メタボの人も多いという報告もあり、乾癬の治療、改善には生活習慣病の予防、改善、また精神的なストレスの解消、改善も重要です。

乾癬は他人にうつらない皮膚病で、死に至るわけではありませんが、生活の質の低下などを起こします。また、乾癬はうつるという誤解からくるストレスで悪化しやすく、身体的、精神的にも追い込まれやすい病気です。

社会全体で乾癬についての正しい知識、理解が広まることが望まれます。

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