冬になると特に増えるノロウイルスによる感染症。健康な人では軽症で回復しますが、子供や高齢者などは重症化することもあります。ワクチンはないので、予防することが大切です。ノロウイルスの予防と対策についてお伝えします。
ノロウイルスの特徴と治療
ノロウイルスによる感染症は感染性胃腸炎の一つです。年間を通して発生しますが特に11月から3月に多発します。なぜ寒い時期に多発するのか、理由ははっきりわかっていませんが、
- 寒さを好む
- 乾燥に強い
- 非常に強い感染力
という特徴が重なってノロウイルスが冬に蔓延していくと考えられています。
ノロウイルスになったら、ワクチンがないので対処療法が中心になります。症状が軽い場合は自宅で安静にし、脱水症状を起こさないようにすることが大切です。
出典:ノロウイルス食中毒予防対策リーフレットPDF 厚生労働省
ノロウイルスの予防と対策
ウイルスに対するワクチンがないので、ノロウイルスにならないことが一番です。予防と対策で最も大切なことは、
- ウイルスをつけない
- ウイルスを撃退する
です。
家族などに感染者がいる場合は、嘔吐物などの処理を適切に行うことが必要です。後述する感染経路を確認し、二次感染を防ぐことも大切。
ウイルスをつけないために注意する3つのこと
ウイルスをつけないためには
- 手洗い
- 生で食べる食品は流水でよく洗う
- 嘔吐物に直接触れない
ことに注意しましょう。
手洗い
調理を行う前、食事をとる前、トイレに行った後、汚物を処理した後、おむつ交換の後などは特に時間をかけ、手指の隅々まで丁寧に洗います。特に指先、指の間、爪の間、手首などは見逃しやすいので洗い残しに注意しましょう。
アルコールや石けん、中性洗剤などは汚れと一緒にノロウイルスを落としやすくはなりますが、殺菌効果は期待できません。過信せず、丹念に洗い流しペーパータオルなどで拭きます。
蛇口にもペーパータオルなどをかぶせ、直接手を触れないように栓を締めましょう。
嘔吐物に直接触れない
身近に感染者がいる場合は、嘔吐物などの処理を適切に行うことが大事です。
使い捨てのマスクや手袋などを着用し、ペーパータオルなどで静かにふき取った後、家庭用の塩素系漂白剤などで消毒します。
ふき取った嘔吐物や手袋などはポリ袋に密閉して捨てます。
ウイルスを撃退する
飲食物のノロウイルスを殺菌するには、熱を加えることが最も有効です。中心温度が85℃以上で1分間以上加熱すると、感染性が失われる十言われています。
食品の中心部まで確実に加熱してください。まな板や包丁などの調理器具も熱湯消毒します。
ノロウイルスが流行する背景
ノロウイルスは温度が低いほど長く生存でき、4℃では1~2週間安定していると言われています。家庭の冷凍庫(マイナス18℃以下)でも生存できるため、冷凍保存した食品でも食中毒が起きる場合もあります。
ノロウイルスの流行は4月になると落ち着いてきますが、ウイルスは存在するので、暖かくなっても用心し続ける必要があります。
月別事件数の年次推移
出典:ノロウイルスによる食中毒発生状況 厚生労働省
2次感染も起こりやすいので、一人がノロウイルスになると家族全員が発病することも少なくありません。
2次感染
症状が治まってからも約2週間は、便と一緒にノロウイルスが排泄されるので注意が必要です。
治ったように見えても約2週間は2次感染が起こる可能性があります。ノロウイルスになったら、本人も家族も、油断せずに対処することが大切です。
また、多数の遺伝子型があるので、違う遺伝子型のウイルスが流行すれば、一度感染した人でも、何度もノロウイルスになる危険があります。
感染経路
ノロウイルスの感染経路はほとんどが経口感染で、
- 飲食物からの感染(食中毒)
- 人からの感染
の2つに大別できます。
飲食物からの感染
かきなどの二枚貝が原因となることが知られています。ノロウイルスにに汚染された井戸水や、簡易水道水を消毒不十分で飲んだ場合も感染が考えられます。
汚染された貝を生、あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合ですが、近年かきによる食中毒は、出荷する際の衛生管理が徹底してきたので、減少傾向にあります。
しかし、旬の時期には生で食べる機会も増え、加熱が不十分でウイルスが死滅しなかったりすることで、感染することもあります。十分に注意が必要です。
人から人への感染
患者の世話をしている家族や、食品取扱者からの感染などがあります。
- 経口感染 ノロウイルスに感染した人の便や嘔吐物に触れた手を介して口から菌が入る
- 飛沫感染 吐いた時などにウイルスを含む飛沫が飛び散り、その飛沫を吸い込む。
- 空気感染 適切に処理されなかった嘔吐物が乾燥し舞い上がって、空中を浮遊。浮遊するウイルスを吸い込む。
ノロウイルスに感染したら~症状と対策
ノロウイルスになったら、強い吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの症状をおこし、発熱、頭痛、筋肉痛などを伴うこともあります。感染してから1~2日ほどの潜伏期間のあと、これらの症状が現れます。
一般的にこれらの症状は長くは続かず、2~3日で自然に回復することがほとんどで、ノロウイルスになっても症状が出ないケースもあります。
しかし乳幼児や高齢者がノロウイルスになったら、重症化する場合もあるので、注意が必要です。
また、高齢者は嘔吐物の誤嚥で肺炎をおこしたり、気道に詰まらせたりして窒息する可能性もあるので、油断しないことも大事です。
対策
ノロウイルスを死滅させる抗ウイルス薬はありません。対処療法が主となり、症状が軽い場合は自宅で安静にします。
嘔吐している場合は、吐き気止めの座薬を使い、吐き気が治まってきたら脱水症状を起こさないように、水分、塩分を少しずつこまめに摂ります。
スポーツ飲料、経口補水液などで水分・塩分の補給をするとよいでしょう。
嘔吐はほとんどの場合半日~1日で治まります。嘔吐が続いている間は食事を無理に摂る必要はありません。
水分・塩分を少量ずつ取り、症状が落ち着いたらおかゆなどを取るようにします。
下痢止めは使わない
嘔吐、下痢が続いている間、下痢止めは使わないようにすることが大切です。ウイルスを体内から出そうとして下痢が起きています。
下痢止めを飲むと腸の動きを弱めるので、ノロウイルスが体外に排出されにくくなり、症状が長引く可能性があります。
嘔吐が2日以上続くなど重症化したり、脱水が疑われるときは医療機関で点滴治療が必要になります。場合によっては1~2日入院となる場合もあります。
実録:感染性胃腸炎で生死の境目
実は、長男が1歳半のころ、感染性胃腸炎になり、あわやの状況になったことが有ります。
下痢を繰り返し、嘔吐も始まったのでかかりつけの小児科を受診、3日ほどたって「良くなったね」と言われたその日のことでした。(ウイルスの種類は失念しました)
診察帰りに買い物をし、欲しがるままに乳酸菌飲料を与えたのです。バカでした。
折角よくなってきていたのに、下痢、嘔吐がひどくなり、あわてて帰ってきたばかりの小児科を再訪、医師も驚いてすぐに市民病院と連絡を取り、そちらで診察を受けることに。
急変・入院
小児科の医師の診察を受け、その場で入院となりました。長男は脱水症状がすすみ目も落ち込んでいたのです。本当にあっという間の急変でした。
「連絡をもらった時、ちょうど帰る時でした。間に合ってよかった。もし僕が帰った後でしたら、息子さんは危なかったかもしれません、」担当医師の言葉です。
まさに生死の境目にいたのです。初めての子育てでわからないことばかり、私も若かった…手遅れにならず、本当に良かったと思います。
回復
たしか3日ほどは点滴のみ、回復してきて、ほんのちょっぴりの重湯が配膳されたときは、ひったくるようにつかみ、一瞬で呑み込んでいました。
同室の子供たちがご飯を食べているのをみて、「もっと、もっと」と泣き叫んだことは今でも覚えています。
今考えれば、おなかがすく、と言うことは元気になってきた証でもありますが、当時はただ、食べられなくてかわいそうと思っていました。
その息子は、その後大きな病気もせず、頼もしく成長しています。
小さな子供と高齢者の病気には、本当に最新の注意を払わなければいけません。
(下痢と嘔吐、その対応には本当に疲れ果てました。処理したそばから嘔吐です。辛いのは息子の方なのに、八つ当たりしたり…。ごめんね。その後、家族にも症状はでましたが大事には至りませんでした。)
画像 厚生労働省 感染性胃腸炎(特にノロウイルス)についてより
健康情報について、結構お役立ちなのが厚生労働省のホームページです。ただし、知りたいことが○○とはっきりしていない場合、わかりにくくて、検索上手でないと目的のページにすんなりたどり着けないことが多いのがもったいないなと、いつも思っています。
現時点では「今冬のインフルエンザの総合対策について」というページが目立つので、タイムリーな話題であればすぐ見つかるようですが…
生活習慣の改善にはe-ヘルスネットもおすすめですよ。役立つ情報がたくさんあります。
まとめ~感染経路を断つ!
流行期には、施設などでノロウイルスの集団発生のニュースがよく聞かれますが、家庭でも感染に十分注意しましょう。
出典:手洗いの手順リーフレットPDFより 厚生労働省
ノロウイルスに感染したら注意することは、感染経路を断つことですね。ノロウイルスの予防と対策、しっかりおこなって寒い冬を乗り切りましょう。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ