緊急性がないのに救急車を要請する人がいる一方で、世間体や遠慮から救急車を呼ぶのをためらい、残念な結果になるケースも少なくない。救急車が必要な時、判断に迷った時の、相談窓口も記載しましたので確認してください。
救急車を緊急時に効率よく稼働させるには
近年、増加を続ける救急車の出動回数。高齢化社会も一つの要因ですが、緊急性がない場合や、中にはタクシー代わりの身勝手な要請も少なくありません。
その結果、本当に救急車を必要としている人への対応が遅れてしまうことも。コード・ブルー(ドラマ)ご存知ですか。「トリアージ」がよくでてきますね。救急医療の現場では、傷病者が多い場合、トリアージが行われます。
東京都では、本当に必要な場合に遅滞なく出動できるようトリアージ*を導入しています。
トリアージとは
もともと災害などで傷病者が多数出た時に、効率よく対処するために、患者さんを重症度に応じて判別する仕組みです。(簡単な説明を後述しました)
それを一般の救急医療の現場でも積極的に利用するもの。東京都では現場に駆けつけた救急隊がトリアージを試行しています。
また、電話で緊急度・重症度に関する相談も始まり、救急車の出動が抑えらるようになり、本当に必要な場合に延滞なく出動できる体制を維持することが可能に。
院内トリアージを実施する病院もあり、患者さんの満足度の向上などにも効果を見せています。
どこにでもいるモンスターペイシェント
救急外来に救急車でやってきた人が大騒ぎ。「救急車で来たんだからすぐに見て!」と大声で叫び続けるのです。見た限りではどこが悪いのだか…
しかし、騒ぐ人は周りの患者さんの迷惑になります。とりあえず中の処置室などで事務が対応して待たせる、話だけ聞いて帰ってもらう、あまりにもわけのわからない人は、警察を呼んで対応することもあります。
というわけで、この患者さんはすぐに呼ばれました。
騒げば先に見てもらえる、とは普通の人は考えませんし、まして救急の場合騒ぐ元気もないでしょう。こんな場面に遭遇した患者さんは釈然としないと思いますが、実際の対応はどこの病院も、こんな感じなんですよ。
救急外来では、トリアージ*で診察の優先順位をきめて、皆順番を待っているのです。騒げば先に見てもらえるなら、みんな騒いで収拾がつきませんから。
このような患者さんは救急外来にはよく来るものです。大抵の場合救急の必要がないことが多い。そして困ったことに、こういったモンスターペイシェントは、リピーターが多いものです。
院内トリアージ
最近は外来の患者に対し、看護師がトリアージを行ない、緊急度の高い患者さんを優先的に診察する院内トリアージを実施するところも出てきました。
患者さんが来院するとすぐに、看護師が病状などをチェックし、丁寧に容体を尋ねて、状態に応じトリアージタッグをつけます。
赤:緊急度が高く、すぐに診察を要する
黄:検査などを先に行ない、例えば30分以内に診察を有する
緑:数時間待っても大丈夫
色に応じて順番に診察をすることになります。
トリアージは救急搬送数減の他にも意外なメリットが
真に救急車を必要としている人が利用できるよう、東京都では「トリアージ」システムを導入し、緊急度の低い救急搬送を減らす試みが、成果をあげています。
救急車の数は限りがあります。少しでも現場に早く向かうため、東京やさいたまなどでは消防車も出動し、先に到着することも多い。緊急性の高い患者さんの要請にすぐに応じられないケースも多いのです。
急性期病院に救急車で搬送される患者さんの中には、軽症の場合もあり、対応に追われて、緊急性の高い患者さんに影響が有ったり、救急医や救急外来の看護師の疲労を加速させています。
救急搬送される患者数が減った
トリアージを始めた結果、救急車の出動要請があった半分くらいの患者は、救急搬送をしない同意を得られ、患者からのクレームもほとんどありません。
緊急度が低いので、救急搬送は必要ないことを告げると、安心するのでしょう、様子をみて自分たちで病院に行きます。とほとんどが素直に応じてくれる。
看護師・患者さんの満足度アップ
院内トリアージを実施している医療機関では、患者の緊急度を判定する役割を与えられた看護師は、仕事満足度も高まるという効果も波及しています。
救急では、診察の順番が守られない場合が日常茶飯事にあります。症状の重い、急患がいつ来るか分からないからです。それが救急外来でのトリアージです
また、待たされる患者さんからの苦情を減ったという報告も。来院してすぐに丁寧な応対をされるので、なぜ待たされるのか、理由が解り納得してもらえるのです。
トリアージは看護師のモチベーションや患者の満足度の向上にも繋がり、真に救急を要する患者さんとは何かを知ることができると言えます。
広域災害救急医療情報システム(EMIS)
災害時には近隣の自治体との連携も重要となります。
災害時及び超急性期の診療情報や、急性期移行の患者受入情報などを集約、提供。患者受入の可否や他医療機関の紹介などのポータルサイトの役割を果たしています。救急隊も患者の受け入れ先の照会に利用したりします。
一般向け情報の提供、照会
東京都の救急相談センターでは、看護師と医師が24時間365日体制で電話相談室に常駐しています。
救急度・重症度に関する相談で、電話を受けるのは看護師、対応できない場合は医師が判断します。
#7119、(ダイヤル回線からは23区:03-3212-2323、多摩地区:042-521-2323)
赤: 緊急度が高く消防に救急車の出動を要請
橙: 概ね1時間以内に自力で病院へ行ってもらう
黄: 6時間以内に自力で病院へ行ってもらう
緑: 翌日以降に通常の診察時間内に病院へ行くようアドバイス
埼玉県の場合は、大人の救急電話相談は#7000又は048-824-4199で相談できます。
判断に迷った時は居住地の救急相談窓口を利用しましょう。電話番号を調べて控えておくと良いですね。次のような電話相談窓口もあります。(平成23年3月現在)
#7119 救急相談センター(東京都)
救急安心センター(大阪府、奈良県)
#8000 小児救急医療電話相談事業(各都道府県に窓口あり)
まとめ
緊急性のない救急車の出動要請や、中にはタクシー代わりに使う不届き者もおり、真に救急車を必要としている人が待たされることも多い。
消防庁や、各自治体では、救急相談電話窓口を設け、緊急性の相談を受け付けています。
また、トリアージを試行した東京都では、実際に救急搬送が半減したり、院内トリアージを取り入れた病院では、患者さんの満足度の向上、看護師のモチベーションアップにもつながっています。
「救急通報のポイント」救急車を呼んだら用意しておくべきものなど
「ためらわず救急車を呼んでほしい症状」重大な病気やけがの可能性がある
「救急車の呼び方」実際に救急車を呼ぶ場合
参考:トリアージ
トリアージ(仏: triage[注 1][注 2])とは、患者の重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行うこと。トリアージュとも言う[1]。語源は「選別」を意味するフランス語の「triage[注 1]」である。
救急事故現場において、患者の治療順位、救急搬送の順位、搬送先施設の決定などにおいて用いられる。識別救急(しきべつきゅうきゅう)とも称する。
トリアージはまた、病院の救命救急部門(ER)受付や[2]、救急通報電話サービスでも行われている[3]。
判定分類
日本のトリアージ・タッグ
黒(black tag) - カテゴリー0(死亡群)
死亡、または、生命徴候がなく救命の見込みがないもの。
赤(red tag) - カテゴリーI(最優先治療群)
生命に関わる重篤な状態で一刻も早い処置をすべきもの。
黄(yellow tag) - カテゴリーII(待機的治療群)
赤ほどではないが、早期に処置をすべきもの。
一般に、今すぐ生命に関わる重篤な状態ではないが、処置が必要であり、場合によって赤に変化する可能性があるもの。
緑(green tag) - カテゴリーIII(保留群)
今すぐの処置や搬送の必要ないもの。完全に治療が不要なものも含む。
搬送・救命処置の優先順位はI → II → IIIとなり、0は搬送・救命処置が原則行われない。
出典: Wikipedia
「Anのひとりごと」~今日も1ページ