一般にイボと呼ばれるものは良性で自然に治ることが多く、通常は積極的に治療をする必要はありませんが、美容上の問題から顔のイボを取りたい場合もあります。イボはなぜできるのかやイボを治す方法をお伝えします。
そもそもイボはなぜできる?
イボと呼ばれるものは医学的には「疣贅(ゆうぜい)」といい、皮膚から盛り上がったできものの事を言います。ウイルス性(ウイルス感染により生じる)と老人性(加齢によって生じる)に大別され、どちらも痛みやかゆみはなく良性です。
ウイルス性のイボの80%は自然に治ると言われますが、大きくなったり数が増えたりすることがあります。また皮膚の老化により生じたイボは自然に治ることはありません。
放おって置いても問題はありませんが、大きくなる、増えるなどの変化があったり、痛い、出血する等の場合には皮膚科の受診をおすすめします。
顔のイボを美容上の観点から取りたい、と思う場合も皮膚科を受診して相談しましょう。最近では女性だけでなく、イケメンに見えるように、と顔のイボを取りたいと相談する男性も増えているようです。
イボの種類と特徴
ウイルス性や老人性のイボの代表的なものには
- 尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)
- 老人性疣贅
- 伝染性軟属腫
の3つがあります。それぞれの特徴と治療は以下のとおりです。
イボの種類 | 尋常性疣贅 | 老人性疣贅 | 伝染性軟属腫 |
---|---|---|---|
できる場所 | 指 爪の周り 膝 顔 など |
顔 頭 背中 胸 など |
全身 |
原因 | ヒトパピローマウイルスの感染 | 皮膚の老化 | 伝染性軟属腫ウイルスの感染 |
主な治療 | 凍結療法 レーザー治療 塗り薬 内服薬 など |
凍結療法 切除 レーザー治療 など |
水いぼ専用のピンセットでとる 塗り薬(ワセリンなど保湿薬) 凍結療法 など |
市販のイボ取り薬はヨクイニンを配合したものが多いですが、イボだと思っていても悪性の病変(基底細胞がんや表皮内がん(ボーエン病))である可能性もあります。
必ず医師の診断を受け、管理と指導のもとで利用しましょう。またイボによく似ている悪性の病変の場合もあるので、おかしいと思った時は受診を。
ヨクイニンとは
内服薬で利用されるヨクイニンとは、ハトムギの皮を取り除いた種子を原料とし、漢方でも使われる生薬です。
ハトムギ特有の成分コイクノライドには、新陳代謝を高める作用、特に皮膚の角質細胞の代謝を活発にする効果があると言われ、イボだけでなく、ニキビ、アトピー性皮膚炎、肌荒れなどにも効果があると、従来から化粧品の成分としても利用されてきました。
ヨクイニンの内服薬は市販されていますが、イボ治療に病院で処方されると保険適用となります。
ただし、凍結療法のようにすぐになおるわけではなく、長い間服用することで少しずつ効果が現れてきます。再発を防ぐための補助的な利用などと考えると良いでしょう。
尋常性ゆうぜい
もともよく見られるイボです。ヒトパピローマウイルスの感染が原因となりイボができます。できやすい場所は、指、爪の周り、膝、顔などです。放置すると少しずつ増えていきます。
このウイルスには100~200種類の方があると言われていて、皮膚に感染するものと粘膜に感染するものがあります。皮膚に感染してイボを作るウイルスは30種類ほどと言われています。
手足の傷やひげ剃りあと、アトピー性皮膚炎の炎症などから皮膚の中に、ウイルスが入り込んで増殖することでイボが生じます。
尋常性ゆうぜいの起こり方
- 傷などからウイルスが侵入
- 表皮の底部に達し基底細胞などに感染する
- 自分の遺伝子を送り込み基底細胞を乗っ取る
- ウイルスに感染した細胞が活性化して増殖
- 皮膚の表面に向かって押し上げられ、病変を形作る
- 包皮の表面に近づくとウイルスの形を取るが、表皮の底部にいる時は遺伝子の形なので、免疫の働きで排除されにくい
- 1つの病変が見つかるまで、3~6ヵ月かかる
- あかとなって剥がれ落ちた細胞も感染源になる
尋常性ゆうぜいの治療
凍結療法が最も一般的な治療法です。マイナス196℃の液体窒素を含ませた専用の綿棒をイボにあて、縦貫的に超低温でイボを凍結、4~5秒後に温めて融解させます。
「凍結-融解」を5~6回繰り返し、ウイルスに感染した細胞の細胞膜を破壊して細胞を死滅させる方法です。凍結療法では、1回の治療で約45%の人が治りますが、数回の治療が必要な場合もあります。
すぐにイボを取りたい場合は、レーザー治療を行うことがあります。その他には
- 皮膚表面の角質を取る「サリチル酸」などの塗り薬
- 漢方薬の「ヨクイニン(ハトムギ)」
などを使うこともあります。
老人性疣贅
老人性、と名前はついていますが25歳ぐらいからでき始めて、中高年では誰にでも見られる一般的なイボです。
「脂漏(しろう)性角化症」とも呼ばれ、シミやほくろが少し盛り上がったような形をしています。顔、頭、背中、胸などにできます。
老人性ゆうぜいの原因は、紫外線に長時間、くり返し当たってきたことによるもので、皮膚の老化現象です。
健康上は何の問題もありませんが、大きくなったり、顔や首、手の甲など目立つ部分にできたものが美容の観点から気になる場合には、治療を検討しても良いでしょう。
老人性ゆうぜいの治療
凍結療法が一般的です。尋常性ゆうぜいと比較すると細胞の増殖がないので、多くの場合1回の治療で治ります。レーザー治療を行うこともあります。
悪性の病変が疑われる場合は、イボを切り取り生検を行うこともあります。
伝染性軟属腫
皮膚同士の接触などによりウイルスが感染して起こります。「ポックスウイルス」の一種である「伝染性軟属腫ウイルス」の感染が原因のイボで、子供によくできます。一派に「水いぼ」と呼ばれるイボです。
イボは小さく直径6mm以下で体のどこにでもできます。プールで感染することが多く見られたため、以前はビート板などを介して感染するのではないかと言われていました。
現在は子供同士の皮膚が触れ合って感染すると考えられています。
治療
子供の水いぼの多くは、半年以内、長くても1~2年以内には自然に治りますが、プールに入れなかったりする場合もあり、また、他の子供に感染を広げる可能性もあるので、治療したほうが良いでしょう。(子供の水いぼの治療は、医師により意見が別れます)
水いぼ専用のピンセットでイボをつまみ取るのが一般的です。凍結療法を行うこともあります。どちらの治療も痛みを伴いますが、短期間に治すことができます。
皮膚が乾燥したり荒れていたりすると、ウイルス感染が起こりやすかったり治りにくかったりします。保湿剤を使うなど、皮膚の保湿を心がけることも大切です。
予防
尋常性疣贅 | ウイルス感染を防ぐ 皮膚の保湿 肌荒れの予防 アトピー性皮膚炎の治療 |
---|---|
伝染性軟属腫 | |
老人性疣贅 | 紫外線を防ぐ 日焼け止めの使用 |
皮膚のバリア機能が低下すると、ウイルスが感染しやすくなります。手足、肘や膝の傷、肌荒れや手荒れ、ひげそりあと、アトピー性疾患などがあると、皮膚のバリア機能が低下します。
免疫力が低下しているときや、免疫力の低下を引き起こす病気にかかっている場合などは感染しやすいので注意が必要です。
尋常性疣贅と伝染性軟属腫の予防には、免疫力を低下させない、傷の治療、保湿を心がけます。老人性疣贅は、紫外線が原因となります。普段から日焼け止めを使ったり、紫外線を浴びにくい工夫をします。
まとめ
イボはウイルス感染によって生じるウイルス性、肌の老化が原因の老人性の2つに大別されます。
どちらも良性で自然に治ることもよくありますが、イボとにている悪性病変もあり、気になる場合は皮膚科で相談しましょう。
顔や手など良く目につく場所のイボは、美容の観点から取りたいと思うことも多いです。最近は顔のイボを取りたい、という男性も増えています。イケメンにイボは似合わない、ということでしょうか(笑)
積極的に治療する必要はありませんが、こういった場合は凍結療法やレーザー治療、塗り薬や内服薬での治療を検討するケースも少なくありません。
イボ取りの市販薬もありますが、使用する前に医師の診断をあおぎ、その管理と指導のもとで利用しましょう。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ