突然髪の毛が抜ける円形脱毛症。多くの場合自然に治りますが、時間がかかり効果がなかなか見られないことも。10円はげとも呼ばれる円形脱毛症、治らないと諦めないために、診断や治療についてお伝えします。
10円はげ（円形脱毛症）とは
突然毛が抜け、脱毛部分が円形になることもあるので、10円はげとも呼ばれる円形脱毛症。複数の脱毛部分が繋がったり、頭部全体に広がったり、眉毛を始め全身の毛が抜ける場合もあります。
多くは治療を受けなくても自然に治りますが、治るまでに数年かかる、治療をしてもなかなか効果が現れないこともあります。
脱毛している事自体がストレスとなってしまうことも少なくありません。治るまでの間、患者さんや家族の心のケアも重要です。
円形脱毛症の診断
円形脱毛症は脱毛の範囲で重症度が判断されます。軽症の場合は自然に治ることがあるので、3～4ヶ月間様子を見ることもあります。
脱毛が気になる肩や重症の場合、脱毛が止まらない、3ヵ月経過しても10円はげが治らない、何度も繰り返す場合などは、適切な治療を受けることが大切。
早めに皮膚科を受診し、相談することをお勧めします。
強いかゆみがある、赤みが強い場合は感染症や膠原病など、他の病気の可能性もあるので医療機関を受診してください。
円形脱毛症のタイプと重症度
円形脱毛症は、脱毛部分の形や数などからいつくかのタイプにわけられます。
円形脱毛症のタイプと重症度
| 重症度 | タイプ | 症状 |
|---|---|---|
| 軽症 | 単発型 | 円形の脱毛が1～2箇所 痒みや大量のフケなどが生じる場合もある |
| 多発型 | 円形の脱毛が複数箇所 脱毛範囲が25％未満 | |
| 重症 | 多発型 | 円形の脱毛が複数箇所 脱毛範囲が25％以上 |
| 全頭型 | 頭部の広い部分で脱毛 | |
| 汎発型 | 髪だけでなく眉でやまつげなどの体毛がすべて抜ける | |
| 蛇行型 | 頭髪の生え際が帯状に脱毛 |
主な治療法（16歳以上に対する治療法）
円形脱毛症の治療は、患者さんの年齢や重症度、進行期や固定期と言った時期により異なる場合があります。
- 進行期
毛頭を攻撃するTリンパ球の活動が活発な状態で、脱毛が進行している時期。僅かな刺激で髪が抜ける - 固定期
炎症は強くありませんが、脱毛の進行が止まり新たな髪が生えてこない時期
重症度などにより治療法が選択される
主な治療法
| 主な治療法 （16歳以上の場合） | 軽症 | 重症 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 進行期 | 固定期 | 進行期 | 固定期 | ||
| 抗アレルギー薬 | ○ | ○ | ○ | ○ | |
| ステロイド薬 | 外用薬 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 局所注射 | ○ | ||||
| 経口薬 | ○ | ○ | |||
| パルス療法 | ○ | ||||
| 局所免疫療法 | ○ | ||||
- 軽症の場合
進行期でも固定期でも、抗アレルギー薬の内服と、概要ステロイド薬による治療が基本。固定期で脱毛の範囲が狭い場合は、ステロイド薬の注射を行うこともあります。 - 重症の場合
固定期では軽症の場合と同じく抗アレルギー薬の内服、概要ステロイド薬が基本です。更に重症の場合は、ステロイド薬の内服が検討され、進行期には「パルス療法」も行われます。
《パルス療法》
3日感だけ集中してステロイド薬を点滴で大量投与する治療法。入院して行う。発症から6ヶ月間以内に行うのが効果的とされる。
《局所免疫療法》
重症の固定期で、治療の効果が見られない場合に行われることがある。薬剤を塗って意図的に頭皮にかぶれをおこし、炎症を抑えるために集まったTリンパ球に、毛根を攻撃しているTリンパ球による炎症も押さえさせる治療。
《物理化学療法》
紫外線で毛根を攻撃するTリンパ球の活動を押さえたり、液体窒素による頭皮への刺激で血行を促したりする。
生活の改善も重要
ストレスが自己免疫反応を悪化させる可能性もあります。適度な運動でストレスを解消したり、質の良い睡眠を取るることも大切。血流の改善など頭皮の状態を改善することも治療となります。
規則正しい食生活や正しい洗髪方法など、医師の指導を受けながら改善に取り組みましょう。
円形脱毛症はよくある病気でもあります。病気が進んだ多発型、全頭型などでも改善が見られるようになってきていますが、根本的な治療方法はまだありません。
病院によっては「10円はげは治りません」という場合もありますが、改善は可能です。治らないと諦めず適切な治療を辛抱強く受けることも大切です。
健康な毛の周期（毛周期）
出典：円形脱毛症のメカニズム 皮膚科Q&A 日本皮膚科学会
健康な毛が発毛してから脱毛するまでの期間は、
- 成長期
頭皮の下に有る毛頭で血液中の栄養分を受け取り、髪を作る。2～6年続き、その間髪は伸び続ける - 退行期
成長が止まった状態が2～3ヶ月間持続する - 休止期
ちょっとした刺激でも抜ける状態が3～4ヵ月続き、脱毛する
このような周期（毛周期）を繰り返します。
免疫細胞の勘違い
なぜ起こるのかははっきりと分かっていませんが、円形脱毛症は本来体を守る免疫細胞の異常によって起こる「自己免疫疾患」と考えられています。
免疫が正常であれば
- ウイルスや細菌など体にとっての異物が侵入すると、Tリンパ球（免疫細胞）が集まり異物を攻撃する
のですが、円形脱毛症の場合は
- 攻撃の対象を間違えたTリンパ球が、毛根を異物と勘違いして攻撃
- 毛根に炎症が起こり、髪を作る機能が損なわれる
という
免疫の異常が起こり脱毛します。
原因は不明
炎症がおきているため、痒みや皮膚の赤みと言った症状が現れることもあります。
ストレスが元と言われることがありますが、ストレスは免疫の異常を起こすきっかけの1つと考えられており、円形脱毛症の多くは原因がわかっていません。ただし、
- 橋本病や膠原病などの「他の自己免疫疾患がある人」
- アトピー性皮膚炎や花粉症など「アレルギー性疾患がある人」
は円形脱毛症が起こりやすいとされています。
「遺伝的要素」も関係し、血縁者に円形脱毛症の人がいる場合は、発症のリスクが少しですが高まります。年齢や性別は、円形脱毛症の発症には関係なく、老若男女を問いません。
参考
▶皮膚科Q&A 脱毛症 Q9円形脱毛症の治療法はどうしますか
▶円形脱毛症診療ガイドライン2010
日本皮膚科学会
まとめ
10円はげが1～2箇所程度の軽症であれば、7～8割は自然に治ることが多い円形脱毛症。特に治療が長期に及ぶ場合は、髪型の工夫や、帽子やバンダナ、医療用ウイッグ（男性用、子供用もあります）などを利用し、治るまでの間脱毛自体がストレスにならないようにすることも大切です。
患者さんや家族の心のケアも大切で、引っ込み思案になったりしないよう、活動的な生活が送れるようにしたいですね。
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