血圧が急に高くなった場合、ホルモンの過剰分泌が原因かもしれません。高血圧の原因としてほとんどの場合塩分のとりすぎ、運動不足など生活習慣が関係していますが、副腎の異常で起きている場合適切な治療が必要です。
ホルモンの病気が原因の高血圧
日本人の三人に一人が高血圧と言われるほど、高血圧の患者さんは多いです。多くの場合は生活習慣が関係していますが、薬を飲んだり生活習慣を改善しても血圧が下がらないケースがあります。
副腎に異常がおこり、アルドステロンというホルモンが過剰に分泌されて血圧が上がっていることが考えられます。原発性アルドステロン症というホルモンの病気です。
血圧以外自覚症状が無いので、副腎の病気があるかもと気づきにくく、また、高血圧の原因が副腎の病気であることを見逃してしまうことも少なくないようです。
アルドステロン値が高いままにしておくと、脳卒中や心筋梗塞、腎不全のリスクも高まります。
治療には手術と薬があります。薬は一生付き合うことになるので、きちんと服用し重篤な病気のリスクを下げましょう。
*副腎は腎臓の上にある3cm程度の小さな臓器。左右に1つずつある。
病気を疑うサイン
以下のような病気を疑うサインがある場合、医師に相談し血液検査で血中のホルモンの値を調べてもらいましょう。異常が見つかったらホルモン専門医が精密検査をして診断を確定します。
病気を疑うサイン
- 急に血圧が高くなった
- 若いのに下の血圧が100mmHgを超えている
- 降圧薬を3種類以上飲んでもなかなか血圧がさがらない
- 夜、トイレに行く回数が増える
急に血圧が高くなった
原発性アルドステロン症では急に血圧が高くなります。いつから血圧が高くなったのか、時期を特定できるのが特徴です。
若いのに下の血圧が100mmHgを超えている
下の血圧(拡張期血圧)が高くなります。30~40代では上の血圧が高くなっても下の血圧はそれほど高くならない傾向があります。
降圧薬を3種類以上飲んでもなかなか血圧がさがらない
3種類以上の降圧薬を飲んでも血圧が下がりにくい場合、この病気がある可能性があります。
降圧剤は通常なら1~2種類、多くても3種類飲めば血圧をコントロールすることは可能です。
夜、トイレに行く回数が増える
尿を濃縮する腎臓の働きが低下するので、尿の量が増えます。高齢者では様々な要因で夜中のトイレの回数が増えることも少なくありませんが、この病気では若い人でも急にトイレに行く回数が増えます。
原因
アルドステロンは副腎から分泌されるホルモンの一つです。腎臓での塩分の再吸収を促進し、体の中の塩分を増やす作用があります。
副腎の異常でアルドステロンが過剰に分泌されると、食事で塩分を摂りすぎていなくても血圧が上がってしまいます。
アルドステロンの過剰分泌は大別して以下の2つです。
- 副腎にできた腫瘍
- 副腎が腫れる
副腎の異常とホルモン
副腎にできる腫瘍はほとんどが良性ですが、ホルモンの分泌に影響を与えてアルドステロンが過剰に分泌されることがあります。腫瘍は片側にできることが多いです。
副腎全体が腫れて大きくなりアルドステロンが過剰に分泌されることがあります。原因ははっきりわかっていませんが、多くの場合両方の副腎が腫れます。
副腎から分泌されるホルモン
- 副腎皮質ホルモン(アルドステロン、コルチゾール、副腎アンドロゲン)
ステロイドとして知られています。一般にステロイド薬と言われるのはコルチゾールです。
副腎アンドロゲンは男性ホルモンの一種。 - 副腎髄質ホルモン(アドレナリン)
体を興奮させ戦闘モードにするホルモンです。
原発アルドステロン症の危険度
高血圧は脳卒中、心筋梗塞など重篤な病気のリスクが問題とされています。
原発性アルドステロン症は通常の高血圧と比較すると、脳卒中4倍、心筋梗塞6倍、心房細動(キケンな不整脈)12倍も高い確率で起こると報告されています。
アルドステロンは血圧を上げる、心臓や血管に作用して心臓の機能を弱めたり、動脈硬化を促進する作用があるからです。
通常の降圧薬ではアルドステロンの分泌、心臓や血管に対する作用を抑えられません。原発性アルドステロン症を疑うサインがある場合は、まず内科医に相談し血液検査を受けましょう。
診断の確定と治療
血液検査の結果血中のアルドステロン値が高いなど、異常が見つかった場合はホルモンの専門医で精密検査をします。
病気が確定した場合は治療方針を決めるため、どちらの副腎に病気があるかなどを知るための検査です。
左右それぞれの副腎の血液を採取、左右のとぢらか、または両側でどのくらいアルドステロンを分泌しているかを調べます。
治療は
- 手術: 片方の副腎に腫瘍がある場合
- 薬: 両方の副腎が腫れていたり、手術ができない場合
です。
手術:片側の副腎に腫瘍ができている場合
腫瘍のある副腎を摘出します。医療機関によっては腫瘍部分だけを摘出することも行われています。
副腎は2つあり、一つを摘出しても通常の日常生活に支障はありません。
腫瘍がなくなれば多くの場合アルドステロンの分泌が正常に戻り、血圧も下がるので薬は不要になります。
他の原因があったり、治療していない期間が長く心臓や腎臓にダメージが蓄積していたりすると、手術をしても降圧薬が必要な場合もあります。
薬:手術ができない、両方の副腎が腫れている場合
手術とほぼ同じ効果があるとされている、抗アルドステロン薬(アルドステロンの作用を抑える)を用います。
薬の効果が充分でない場合は、他の降圧薬を追加することもあります。減塩を心がけることも重要です。
薬に寄る治療は、薬と一生付き合っていくことになりますので、きちんと服用しましょう。
まとめ~急に血圧が高くなったら…
急に血圧が高くなった場合、ホルモンの過剰分泌で起こる原発性アルドステロン症が原因の場合もあります。
通常の降圧薬ではなかなか治りません。診断を確定し適切な治療を受けることが大切です。
病気のサインを見逃さず、医師に相談してください。
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