喘息は重い発作を起こすと窒息死の恐れもあります。特に高齢者に死亡例が多いのは、自分が喘息だと気づいていなかったり、適切な治療や自己管理が行われていないことなどがあげられます。喘息発作の治療と予防についてお伝えします。
喘息は発作を予防することが重要
喘息の患者さんの気道には、発作が起きていないときでも慢性的な炎症があります。そこに何らかの刺激が加わると、それをきっかけに発作が引き起こされ、繰り返すことで病気が進行していきます。
日常生活の注意や薬物療法により、発作を予防することが治療の基本です。また、発作が起きたときは、適切な薬を使って発作を抑えることが大切です。
喘息の治療は、病気をコントロールすることが基本。症状が治まっていても根気よく治療を続けていきます。
発作のきっかけを避ける
発作を引き起こすきっかけとなるものには、アレルギー性のもの、非アレルギー性のものがあり、代表的なものとして
- アレルギー性
動物の毛やフケ、ダニ、家のほこり - 非アレルギー性
かぜ、気象・季節の変化、大気汚染、気道刺激物、精神的なストレス、運動
などが揚げられます。できる範囲でこれらを避けるようにすることが大切です。
例えば気象の変化。喘息の症状は夏期は比較的落ち着き、空きから冬にかけて気温が下がる時期に、発作を起こしやすくなる傾向があります。
家の中と外の温度差、空気の乾燥などが影響していると考えられます。寒いところでは、
- 暖かい衣服を選ぶ
- マスクをする
などの工夫で、刺激を避けるようにしましょう。
治療と自己管理
喘息の治療は、発作を起こさないように予防することが最も重要です。重い発作を起こすと生命に関わることもあり、喘息発作による窒息で亡くなる方もいます。特に65歳以上の高齢者が、そのうち約9割を占めています。
子供の患者さんの死亡数が激変していますが、これは、保護者が治療や管理を適切にしていることが要因と考えられています。
一方高齢者は、喘息であることに気づいていないために、発作が起きたときに適切に対応できないこと、また治療や自己管理が適切でないことなどが揚げられています。
喘息の治療
喘息の治療では、発作を予防する薬と、発作を抑える薬を使います。
発作を予防する薬 気道の炎症を抑える、吸入ステロイド薬が最も多く使われます。
- 霧状のエアゾール式(スプレー式)
- 粉状のパウダー式
があり、どちらも直接気管支に広く到達して炎症を抑えるため、微量で高い効果を得ることができます。軽症から重症まで、重症度に関わらず使われます。
発作を抑える薬 予め処方された気管支拡張薬(短時間作用型)を用います。
最近は、予防する吸入ステロイド薬を、気管支拡張薬(長時間作用型)の2種を配合した薬も使われるようになっています。(後述)
喘息の重症度と治療の基本
喘息は症状の起こる頻度や強度などから
- 軽症間欠型
- 軽症持続型
- 中等症持続型
- 重症持続型
に別れます。吸入ステロイド薬は、軽症から重症まで使われ、発作時には、気管支拡張薬(吸入薬、飲み薬)や飲み薬のステロイド薬が使われます。
吸入ステロイド
エアゾール式の場合は、息を吸い込むのと同時に容器のボタンを押します。タイミングを合わせるのが、上手に吸い込むコツ。パウダー式の場合は、陽気の吸入口を加え、深く力強く吸い込みます。
エアゾール式
- 陽気の蓋を開ける
- 舌を下顎につけ、喉の広げた状態にして、息を十分に吐き出す
- 吸入口を口から数cm話、息を吸い込みながら陽気のボタンを押し、吸入する
- そのまま数秒間息を止め、ゆっくり息を吐く
- うがいをする
パウダー式
- 容器の蓋を開け、筒をねじると、カチッと音がして1回分の薬剤が装填される
- 息を吐き出す
- 吸入口を加え、深く力強く吸い込む
- 吸入口を口から離し、ゆっくり息を吐き出す
- うがいをする
重症度により吸入回数が異なることがあります。医師の指示にしたがって吸入してください。また、薬によって吸入方法が異なる場合もあります。事前に医師や薬剤師に吸入方法を確認しておきましょう。
吸入ステロイド薬の副作用
ステロイド薬は副作用を心配する人もいますが、吸入ステロイド薬の場合、内服ステロイド役に比べて、使用する量が少ないので、全身性の副作用の心配は殆どありません。吸入ステロイド薬の副作用としては、
- 声が枯れる
- 口内炎ができる
などが起こることがありますが、吸入後にうがいをすることで避けることは可能です。
発作が起きた場合の薬
発作が起きた場合には、予め処方された気管支拡張薬(短時間作用型)を用います。
気管支拡張薬には、狭まっている気管支を広げる作用があり、吸入薬と飲み薬があります。重症の場合には、飲み薬のステロイド薬を使います。
最近は、発作を予防する吸入ステロイド薬と、気管支拡張薬(長時間作用型)の2種を配合した薬も使われるようになってきました。日常的な予防目的の他、発作時にも使われることもあります。
発作が起きて、気管支拡張薬を1時間に3~4回使用しても、症状が治まらないときは、場合によっては救急車を呼ぶなど、速やかに医療機関を受診してください。
自己判断で薬を辞めない
症状が落ち着いているから、と自己判断で薬を使うのを辞めてはいけません。発作が起きなくなったので、薬の使用を中断したら、しばらくして突然発作が起き、救急車で運ばれる、というケースが少なくありません。
喘息の症状がごく軽く、年に数回程度しか症状がないような場合には、吸入ステロイド薬を中止、様子を見る、ということもありますが、この場合にも、医師の判断が必要です。自己判断で辞めては行けません。
湿布で喘息?!
肩こりや腰痛で使う湿布薬で発作が起きてしまった、というケースがあります。
アスピリン喘息と言われ、一般的な消炎鎮痛薬に含まれているアスピリンやアスピリンと同じような作用を保つ成分で、発作が誘発される場合があるのです。
アスピリン喘息は、喘息患者10人に1人程度の割合でいると考えられています。高齢者は湿布を貼ることも多いので、湿布薬に含まれている成分が発作を誘引していないか、注意が必要でしょう。
まとめ~症状を侮らず受診
軽症の発作を何度も繰り返していると、なんとかなるだろう、病院は明日で良いなどと考え、受診が遅れることがあります。
受診の遅れが窒息死につながることもありえるので、症状を侮らずに対処することが大切です。
大人の喘息に関してはこちらの記事でもお伝えしています。
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