子供の投球障害は、子供の骨の特徴や投げすぎでの故障が主な原因です。指導者や保護者が投球障害についての知識、意識を持つことも必要。子供が楽しく野球を続けられるよう情報を共有することも大切です。
投げすぎでの故障を防ぐ
投げすぎなどで肩やひじを痛めて好きな野球が続けられなかったり、日常生活に支障がでてくることもある投球障害。
成長期の子供の投球障害を防いだり、異常を早期に発見するには指導者や保護者など周りの大人たちの意識が重要です。
子どもたちがずっと野球を楽しめるように、大人が意識したい子供の投球障害の症状や原因、早期発見の重要性などをお伝えします。
子供の投球障害と大人への啓発
投球障害には少しずつ症状が現れてきた場合と、その1球を投げたときからのものがありますが、子供の投球障害は
- 成長期の骨が障害を受けやすい
- 投げすぎ
が主な原因です
投げ過ぎは意識することでコントロールは可能ですが、子供の場合は指導者の知識や意識に寄るものが大きい。
肩やひじに痛みがあった場合知らせるのは6割強が親で監督には2割ほど、また痛みがあっても半数近くが投球を休まなかった、という調査結果もあります。(下記実態調査より)
まずは投球障害を防ぐことが大切ですが、早期に発見し治療するためには指導者、親の関わり方が重要となります。
指導者や親など大人に求められる努力
投球動作の何処かに無理があると、それをごまかそうと肩やひじに負担がかかります。投球障害の予防には
- ストレッチで下肢や体幹を柔軟にする
- 準備運動や投球後の体の手入れをしっかり行う
- 適切な休養と栄養をとる
- 痛みがあるときは投げない
など*
がありますが、子供がこれらのことを自主管理するのは難しい場合が多く、痛みや障害があっても野球を続け、進行してから明らかになるケースが多い。
予防や早期発見には指導者や親の関わりが不可欠です。投球障害についての正しい知識と意識が求められます。
参考:宮崎大学 健康スポーツネットワーク 投球障害肩とは
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子供が肩やひじの痛みを親に話しても、それが指導者に伝わらなければ適切な治療を開始する時期も遅れます。親が投球障害について正しく知ることも大切です。
成長期投球障害は進行した状態で初めて医療機関を受診する可能性があるため,チームの監督・コーチだけでなく保護者への障害予防の啓発も重要と考えられる。
学童野球検診における投球肘障害の実態調査と予防のための取り組み
出典:J-STAGE Home
/article/cjpt/2009/0/2009_0_C4P2184/_article/-char/ja/
障害の予防と早期発見
治療せずにいると痛みが消えず、野球ができなくなることもあります。さらに関節の動きが制限されるようになり、日常生活にも支障をもたらす可能性も。
投球障害は進行するほど治療が難しくなり、痛みで野球ができなくなることもあります。
治療で完全復帰も可能なのでなるべく早期に発見して、できれば初期段階で治療を受けることが大切です。
異常を早く発見するポイント
- 野球検診
- ひじのチェック
投球障害を防ぐための取り組みとして、2015年から「中学生投手の投球制限に関する統一ガイドライン」*も導入されました。
野球検診
野球検診は異常を早期に発見する取り組みで、徳島県で約30年前に始まりました。現在では実施する自治体や医療機関も増えています。
「痛くなってから病院に行く」のではなく、異常を早期に発見するのに役立ち治療で完全復帰も目指せます。
- ひじの動きなどのチェック
- 超音波検査による骨や軟骨のチェック
を行います。
受診したすべての選手の約2割に障害の疑いが発見され、特に離断性骨軟骨炎がよく発見されるようになっています。
野球検診の機会があればぜひ受診してください。保護者や指導者が情報を調べて受診の機会を見逃さないようにすることも大切ですね。
ひじのチェック
ひじの動きのチェックは家庭でも簡単に行えます。定期的にチェックする習慣をつけ、投球障害の早期発見につなげましょう。
- 手のひらを上に向け、両腕を上下前方に向けて伸ばす
- 両腕をそのまま肩の高さまで上げる
- 「ひじは伸びているか」をチェックする
ひじが伸び切っていない場合、その腕だけ手のひらの位置が高くなります。
週に1度など定期的に行い、ひじの異常の発見に役立てましょう。
投球障害の治療
子供の骨には骨と骨の間にある隙間、「骨端線」(こったんせん)があります。これから徐々に骨になる軟骨でできている部分です。
障害が起きやすいのが、この「骨端線」とその先にある「骨端部」。投げすぎはひじや肩に普段ではかからない大きな負担がかかるので、投球数が多いと骨の弱い部分に障害が起きやすくなります。
投球障害には
「内側上顆障害」(ないそくしょうかしょうがい)
「離断性骨軟骨炎」(りだんせいこつなんこつえん)
があります。
治療法は
- 内側上顆障害は保存療法が主体
- 離断性骨軟骨炎は保存療法と手術
です。
内側上顆障害とは
子供のひじに現れる投球障害のうち、約9割が内側上顆障害です。
ひじの内側の骨端部が靭帯や腱で引っ張られ壊死したような状態になり、剥がれてしまいます。
子供の骨は内側上顆のそばに骨端線があり、内側上顆は骨端部になるので投球数が増えると、内側上顆が繰り返し引っ張られるので、この部分が障害されます。
*内側上顆:手のひらを上へ向けると、ひじの内側(小指側)にある小さな骨の出っ張り。この骨から手首の方に靭帯がつながっている。
内側上顆障害の治療
「保存療法」が中心で第一選択となります。一定期間の投球を制限または制限します。
痛みは3~4週間ほど続くことが多いですが、この期間は投球を休みます。
痛みがなくなってきたら最初はキャッチボールなどからはじめ、徐々に投球を再開していきます。
保存療法でほとんど完治しますが、投球ができるようになるまでには2ヶ月ほどかかります。
離断性骨軟骨炎とは
手のひらを上に向けて触ると、ひじの外側(親指側)の骨の間に凹んだ部分があります。上腕の骨と前腕の骨の隙間で、投球動作によりこの部分で骨と骨がぶつかります。
成長期の子供では障害を受けやすい骨端線の先の骨端部が衝突を繰り返すので、骨と骨があたる部分にある軟骨(骨軟骨)にストレスがかかり、その一部が剥がれてしまいます。
内側上顆障害に比べ少ないですが、重症化しやすい障害です。
離断性骨軟骨炎の治療
保存療法または手術です。離断性骨軟骨炎は進行状況により
- 初期
- 進行期
- 終末期
に分類され、それに合わせて治療法が選択されます。
初期・進行期
保存療法を行います。1年ほど投球を禁止、復帰まで1年半ほどかかります。進行すると日常生活にも支障をきたすので、
- バッティングや守備練習も禁止
- 重いものを持たないようにする
など、厳格に行われます。
終末期
軟骨が完全に剥がれてしまった終末期まで進行した場合は、手術で剥がれた軟骨を除去します。投球できるようになるまで3~6ヶ月必要です。
高校野球の球数制限
金農の快進撃に日本中が湧いた今年の甲子園、地区大会から一人で投げ続けた吉田投手や、184球を完投した済美の山口投手など、投球数の過多と体への負担が取り沙汰されました。
タイブレーク制*が導入され投手の負担が軽減されたと言われていますが、高校野球でも投球制限の導入について議論が白熱しているようです。
*延長13回から無死一、二塁から始まり、15回まで。引き分けの場合は再試合。
*第12回 BFA U18アジア選手権では、新たに「級数制限」が導入されました。
*中学生投手の投球制限に関する統一ガイドライン
1.試合での登板は以下のとおり制限する。
1日7イニングないとし、連続する2日間で10イニング以内とする。
2.練習の中での全力投球は以下のとおり制限する。
1日70球以内、週350球以内とする。また週に1日以上、全力に
よる投球練習をしない日を設けること。
中学生選手の障害予防のための指導者の義務
1.複数の投手と捕手を育成すること。
2.選手の投球時の肩や肘の痛み(自覚症状)と動き(フォーム)に注意を払うこと。
3.選手の故障歴を把握し、肘や肩に痛み(自覚症状)がある選手には適切な治療を受けさせること。また、ウォームアップとクールダウンに対する選手自身の意識を高めること
出典: 日本リトルシニア中学硬式野球協会
/news/48.html
まとめ~子供の投球障害を防ぐには大人の努力が重要
野球は小・中学生にも人気のスポーツですが、投球障害で治療を受けたり野球をやめなくては行けない子どもたちも少なくありません。
子供の投球障害の予防や早期発見、早期治療には指導者や保護者など、周りの大人が投球障害について正しい知識をもち、意識して予防、治療に取り組むことが重要です。
子どもたちが楽しく野球を続けられるよう、大人の努力も求められます。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ
おまけ
クライマックスシリーズファーストステージ第2戦、巨人の菅野投手がCS初のノーヒット・ノーランを達成しましたね。
たまたま見ていたのが7回の攻防でした。2死からの投球、「なにか妙な空気が…」と思ったのですが、そういうことだったんですね!終了後のニュース速報でノーヒットノーランを知りましたが、四球は本当に惜しかった!
おまけついでに…
今日のウルグアイ戦(サッカー)も見応えありました!