高齢者の腰痛の原因は、色々ありますが、その中で最も注意が必要な、骨が潰れる圧迫骨折についてお伝えします。気づかないまま進み背骨全体が変形してしまうこともあるので、早期に発見し、適切な治療をすることが大切です。
圧迫骨折とは
しばらくぶりに離れて暮らす親にあったら、なんだかずいぶん小さくなっていた、と感じることは良くあることです。多くの場合、知らない間に圧迫骨折をし、背が縮んでしまったことが原因で、腰の痛みもあります。
圧迫骨折は殆どの場合、骨粗鬆症によっておきます。骨粗鬆症は加齢により骨の中のミネラル量が減り、骨がもろくなった状態になります。
骨粗鬆症で弱くなった腰椎に負担が罹ると、骨が押しつぶされて、腰痛などの症状が現れるのが、圧迫骨折です。
高齢者では、骨折時にあまり痛みを感じず、気づかないまま圧迫骨折が進んで、背骨全体が変形してしまうことがよくあるので、注意が必要です。
腰の痛みの原因と姿勢
圧迫骨折が腰の痛みの原因となりますが、高齢者の場合は、ちょっと尻もちをついたり、重い物を持ったりしただけで、圧迫骨折を起こすことも少なくありません。
高齢者だけでなく、閉経前後の女性も骨粗鬆症になりやすいので、圧迫骨折に注意することが必要です。
痛みを感じにくい、高齢者の圧迫骨折を早期に発見するには、本人はもちろん、家族や周囲の人も、高齢者の日常の姿勢などに目を向けることが大切です。
姿勢に注意
痛みに気づかず、潰れた形のまま骨が固まってしまうので、痛みは消えても背中全体が曲がってしまいます。潰れるのはお腹側の骨が多いため、前かがみの状態で背中が曲がることになります。
その結果、歩行などの日常生活で、腰や背中に大きな負担がかかり、慢性的な腰痛が現れて来ます。
- 姿勢が前かがみになり、その姿勢が辛い
- 仰向けに寝ることができない
- 身長が急に3cm以上縮んだ
などの症状が見られたら、早めに医療機関で検査を受けてください。
治療法
高齢者の腰の痛みは、初期の段階でしっかりと治療しておくことが大切です。骨全体がもろくなっているので、一度圧迫骨折を起こすと再発しやすくなります。
もともとの原因である骨粗鬆症の治療を行い、骨をできるだけ強くして、圧迫骨折の再発を予防することが重要です。その上で、腰痛の治療も行っていきます。
骨粗鬆症の治療
骨は日々形成と吸収(破壊)を繰り返していますが、吸収が形成よりも過剰になると、骨が弱くなります。
- 骨の吸収を抑えるビスホスホネート製剤や、骨の形成を促す副甲状腺ホルモン薬などを用いて骨の強度を高める
- カルシウムを骨に取り込むときに必要な、活性型ビタミンD3製剤
などの薬物療法を行います。
食事療法で、骨の材料であるカルシウムやビタミンDなどを、十分に摂取することも大切です。
運動も重要です。痛みが治まっているときは軽い運動をしましょう。
体を動かすと骨に負担がかかり、それが骨の形成を促進します。筋肉が鍛えられるので、骨折のきっかけになる転倒を防ぐことにもつながります。
週に2~3回続けてできるものが良いでしょう。高齢者にはウオーキングがオススメです。
ウオーキング
前傾姿勢にならないように、上体を起こして歩くと腰への負担が軽くなります。あごをひき、目線は10~15m先を見ます。
腰痛の治療
骨粗鬆症の治療と並行して、腰痛に対する治療も行います。腰痛治療には保存療法と薬物療法があり、保存療法の中心は薬物療法です。
圧迫骨折など、強い痛みが急激に起こったときは、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID)などで痛みを和らげます。骨粗鬆症の薬で、骨の吸収を抑える、カルシトニン製剤の注射にも鎮痛作用があります。
腰椎の安定性を確保するために、コルセットやギブスを使うこともあります。これらの治療で痛みが治まったら、ウオーキングなどの運動を行っていきます。圧迫骨折で猫背になっている場合は、杖やシルバーカーの利用も検討します。
手術
保存療法を行っても痛みが改善せず、日常生活に支障が出ている場合は、手術療法を検討します。
潰れた骨の部分に骨セメントを注入して、腰椎を安定させる、経皮的錐体形成術を行います。
手術は30分~1時間程度で終わり、入院は数日必要ですが、退院後はすぐに日常生活に戻れます。神経が障がいされてマヒがある場合は、金属を用いる手術が必要です。
骨粗鬆症が重いと、他の部位に圧迫骨折が起こる可能性があるので、手術後も骨粗鬆症の治療を継続することが重要です。
杖やシルバーカーの使い方
姿勢良く歩くために、杖の正しい使いかたを知っておきましょう。
ちょうどよい長さ
杖をついたときに肘が軽く曲がる程度、体の横に手をたらした時の手首の高さにあわせる
長すぎる
バランスが崩れる、左右に傾いてしまう
短すぎる
前につきすぎ、前かがみになってしまう
自分で背筋を伸ばすのが大変でも、シルバーカーを使うと、比較的用意に上体を起こして歩けます。両手で支えられるので、腰への負担も軽くなります。
持ち手
持ったときに肘が軽く曲がるたかさに合わせる
歩き方
シルバーカーと体の距離が20~30cmになるよう引き寄せてあるく
以下のような状態の場合は、付き添いの人がいると安心です。
- たったままの姿勢が保てない
- シルバーカーに体重を預けないと歩けない
シルバーカーに体重をかけすぎると、転倒の危険があるので注意しましょう。
まとめ~気づきにくい高齢者の圧迫骨折
高齢者の腰の痛みの原因は、骨粗鬆症による圧迫骨折が多いのですが、本人に自覚がなく、背骨が変形してしまったりすることも。
姿勢が悪くなった、急に背が縮んだということに気づいたら、早めに医療機関を受診するよう、周りからの注意も必要です。
腰痛の治療と骨粗鬆症の治療を同時に行い、改善していきましょう。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ