職場うつのほか、家庭でのうつ状態は認知症の入り口であるかもしれません。今回は、メンタルヘルスと関係の深い認知症とせん妄、うつ状態との違いを知り、認知症の中でも多いアルツハイマー病について、少しお話したいと思います。
認知症とはどういうものか
認知症は記憶障害などの知的機能の低下があり、通常の老化に伴う記憶障害ではなく、自立した生活が困難になるくらい機能が低下し、家庭・社会・集団生活に支障をきたした状態を言います。
認知症の診断基準
認知症については、アメリカの精神医学界の診断基準「DSM・4」が世界的に広く使われています。認知症として診断されるのは
- 記憶障害がある
- 失行:麻痺などが無いのに手足の協調運動ができにくい
- 失認:対象物が何か認識できない
- 失語:ことばを忘れて自分から話しにくい、人のことばが理解できない
- 実行機能障害:ある状況に置かれた時に、適切な判断と行動ができない
以上すべてを満たし、家庭・社会・集団生活に支障をきたしている場合です。
※詳細は下記pdfで確認できます。
せん妄、うつ状態との違い
せん妄と認知症の鑑別の要点
せん妄 | 認知帳 | |
---|---|---|
発症 | 急激 | 緩徐 |
初期症状 | 錯覚、幻覚、妄想、興奮 | 記憶力低下 |
日内変動 | 夜間や夕刻に悪化 | 変化に乏しい |
持続 | 数日~数週間 | 永続的 |
身体疾患 | 合併していることが多い | 時にあり |
薬剤の関与 | しばしばあり | なし |
観光の関与 | 関与することが多い | なし |
うつ状態(偽性認知症)と認知症の鑑別の要点
うつ状態(偽性認知症) | 認知症 | |
---|---|---|
発症 | 発症の日時はある程度明確 | 発症は緩徐なことが多い |
経過 | 発症後、症状は急速に進行し、日内・日差変動を認める | 一般に緩徐で、変動が少なく、一般に進行性 |
持続 | 数時間~数週間 | 永続的 |
物忘れの訴え | 強調する | 自覚がないこともある |
自己評価 | 自分の能力低下を投げく | 自分の能力の低下を隠す |
言語理解・会話 | 困難でない | 困難である |
答え方 | 質問に「わからない」と答える | 誤った答え、作話やつじつまを合わせようとするう |
症状の内容 | 最近の記憶も昔の記憶も同時に障害 | 昔の記憶より最近の記憶の障害が目立つ |
出典: 認知症の定義、経過、疫学pdf 9p 日本神経学会
症状の原因
色々な疾病が原因となりますが、その一つがアルツハイマー病であり、脳血管性認知症です。
以前は「老人性痴呆」と基本的に同じものとされていましたが、今では年齢に関係なく発症することが知られています。
進行性の中枢神経の病気です。急激に進行することもありますが、あまり進行しないことも。
脳のたんぱく質が関与して、神経細胞が死滅するのではないか、等原因には諸説あります。
加齢、遺伝、小血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、喫煙、頭部外傷などが危険因子です。女性は男性と比べて約2倍発症しやすいので、注意が必要です。
生活習慣病は、アルツハイマー病の危険因子としても、避けたい病気です。
アルツハイマー病の症状
物忘れ、判断の生涯、失行、失語が現れ、感情が乏しくなります。末期には行動が緩慢になり、嚥下障害も現れ飲食が不自由になります。
また、以上のような症状に加えて、脳梗塞、脳出血などの脳血管の疾患ではないこと、意識がはっきりしていることなどの条件があります。脳血管の疾患がある場合は、脳血管性認知症を疑います。
アルツハイマー病の予防
- 生活習慣の見直しは必須(高血圧・脂質異常症・糖尿病など)
- 魚や果物を食べる
- ビタミン摂取(C、E、葉酸など)
- 適度な飲酒
- 趣味を持つ
- 禁煙
- 肥満に気をつける
生活習慣病の予防は食事と運動
生活習慣病の最大の対策は、バランスの良い食事も重要ですが、運動をすることです。
運動と言っても大げさに構えず、手軽にできることから始めればOK。通勤や買い物などでは階段を意識的に使う、とか少し遠回りするとかでも良いのです。
健康法はちょっとアバウトくらいで調度良い
「毎日やらなければいけない」「まず運動するシューズやトレーニングウエアを揃えて」などと考えると、始める前に嫌になってしまいがち。
手軽にできることから少しずつ始めることです。時にはサポったっていい。余裕を持って楽しみながら実践していいましょう。
食事も野菜や魚などのバランスと考えながら、1日3食、ちゃんと摂ることが大切。そのうち身体の方で、食べ物を選ぶようになってくるはずです。
日本の伝統食は世界も注目
ご飯に味噌汁、豆腐、魚介類、根菜の煮付けなどの伝統的な和食がローカロリーで健康的、と言われ世界の注目を浴びています。
その一方で日本人の食卓はどんどん欧米化して来たことで、病気のほうも欧米化(笑)してしまっています。
かつては低たんぱく、低脂肪、低カロリー出会った日本の食は、高タンパク、高脂肪、高カロリーになっているのです。
そのため、それまで日本人にはさほど多くなかった肥満などによる糖尿病、高血圧などの生活習慣病が激増しています。
和食、地元で折れる旬の食材を、もっとしっかり毎日コツコツと摂る、ということがより自然で健康的な食生活につながります。
アルツハイマー病を疑う10の症状
アメリカのアルツハイマー病協会が示した「アルツハイマー病を疑う10の症状(2009年版)です。気になる症状がある場合は、医師の診断を受けるようおすすめします。
- 日常生活を混乱させるほどのもの忘れがある
- 計画を立てたり問題を解決することが困難になる
- 家、仕事場、レジャーで馴れたことを終わりまで出来にくくなる
- 時間や場所について混乱する
- 視覚および空間的関係の理解が難しくなる
- 話したり書いたりするうえでの言葉の問題が生じる。
- 置き場所を間違えたり、来た道順を思い出せなくなる
- 判断する力が低下したり衰える
- 仕事や社会的活動から引きこもる
- 気分や性格が変わる
参考:アルツハイマー病を疑う10の症状(説明は省きました。)
※ちなみに2000年版の10のことを掲載しておきます。
- 仕事や生活に支障のある物忘れ
- なれた仕事なのにうまくできない
- 簡単な日常の言葉も忘れる
- 自分のいる場所がわからなくなる
- 季節にあった服装を判断できない
- 数字を確かめることができない
- ものをふさわしくない場所に置く
- 理由もなく感情の起伏が激しくなる
- 性格が急に変わる
- 社会と関わろうとしない※もとは英語ですので、訳文により多少ニュアンスは違います。
まとめ~認知症とうつの違いを確認
メンタルヘルスの不調はうつを呼びこむことが多く、重症となると仕事もできなくなってしまいます。
一見認知症と同じような症状もあり、うつ思っていたら認知症だった、ということも少なくありません。
うつと認知症のちがいを確認することで、適切な治療を受ける(受けさせる)ことが大切です。
今回は少しテーマが離れてしまいましたが、次回は看護師のメンタルヘルスの不調の続きを取り上げる予定です。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ