健康と日々の徒然~Anのひとりごと

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骨粗しょう症の薬による最新治療~骨量を増やし負担も軽減

従来重い骨粗しょう症の場合、薬の効果は不十分でしたが、新薬の承認もあり骨量を増加する効果が期待できるようになってきました。骨粗しょう症の薬の種類や効果についてお伝えします。

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高粗しょう症の薬の治療が必要な人

骨粗しょう症の治療は薬物療法が中心で、骨を強くして骨折を防ぐ効果のある薬が使われます。最近は骨折の危険性のある重い骨粗しょう症でも骨量を十分増やすことができる薬や、使用負担がより少ない薬が登場しています。

薬による治療の対象となる人は

  • 骨粗しょう症と診断された
  • 骨量が70%以上80%未満で脆弱性骨折の危険因子がある(脆弱性骨折の経験無し)

です。

*危険因子のある人

  • 閉経後の女性
  • 50歳以上の男性
  • 親が大腿骨の付け根を骨折
  • 喫煙している
  • 過度の飲酒あり

などに当てはまる人で、禁煙・過度の飲酒を辞めると言った生活を改善し薬による治療が検討されます。

 

骨粗しょう症の薬

以前から使われている主な薬には骨吸収抑制薬、カルシウム代謝調節薬などがあり、骨代謝に働きかけます。新しい薬は骨形成促進薬があり、これは自分で注射するタイプです。また、月1回の服用で済む薬も使われるようになっています。

  • 骨吸収抑制薬
  • カルシウム代謝調節薬
  • 骨形成促進薬

骨吸収抑制薬、カルシウム代謝調節薬

骨吸収抑制薬には、ビスホスホネート、SERM、デノスマブ(2013年5月に承認された新しい薬)があります。

ビスホスホネート 
破骨細胞に働きかけて骨吸収を抑える薬です。多く使われているのは週1回服用するタイプです。

SERM(選択的エストロゲン状態作動薬) 
女性ホルモンのエストロゲンと同じような作用で、骨吸収を抑える薬です。女性に使用されます。

ヒト型IgG2モノクローナル抗体製剤 デノスマブ 
骨細胞の文化を抑制し、骨吸収抑制効果のある薬です。半年に1回の投与ですが、自己注射は認められていません。医師/看護師による投与が必要でカルシウムやビタミンDを服用する必要があります。

活性型ビタミンD3 
主に使用されるカルシウム代謝調整薬です。カルシウムが小腸から吸収されるのを助ける作用があります。また、骨形成と骨吸収に直接作用することもわかっています。

以上の薬を患者さんの状態や骨の状態を総合的に判断して選びます。

骨量を増やす効果

骨量を増やす効果は、薬の種類や骨量を測る部位により差がありますが、骨折を防ぐ効果はどの薬でも得られることが確認されています。例えばビスホスホネートは背骨の圧迫骨折や大腿骨の付け根の骨折が起きる割合を約半分ほどに減らします。

しかし、骨量が高度に低下している人や、背骨の圧迫骨折を何回も起こしている人などでは、様々な薬を使っても骨量が増えなかったり、新たに骨折したりすることが少なくありません。

このような患者さんにも効果のある薬が、骨形成を促進して骨量が増加する骨形成促進薬です。

新しいビスホスホネート

多く使われているのは週1回復用のタイプですが、服用の負担が少なくなった月1回で済む新しいタイプのビスホスホネートが使われるようになっています。1回の服用量が多くなりますが、副作用の頻度は、以前のタイプと殆ど変わりません。

まれですが顎の骨の壊死への注意が必要です。ビスホスホネートを服用しているときに歯の治療を受ける時は、歯科と骨粗鬆症の両方の担当医に相談してください。

 

骨形成促進薬

骨芽細胞が骨を作るのを促進する、という画期的な作用をもつテリパラチドという副甲状腺ホルモン製剤で、2010年10月から使われるようになりました。重い骨粗しょう症の患者さんのみが治療を受けられます。

テリパラチドの効果を調べた調査では、重い骨粗しょう症の患者さんで、テリパラチドを使用したグループの背骨の骨量が1年後に約10%、2年後には約13%増加したと報告されています。

骨量が増加することで、骨折の経験があってもその後の骨折を予防することが期待されています。

テリパラチド(遺伝子組換えテリパラチド製剤)

自分で注射するタイプですが、医師、看護師などによる外来指導が必要です。自分で注射するとなると使用を躊躇するかもしれませんが、実際に使用した数百人の患者さんを対象にしたアンケートでは、

「それほど怖くなかった」

「思っていたより簡単だった」

と言った声が多く寄せられています。

テリパラチドの使用期間は安全性の面から2年間に制限されています。2年間以上使用した場合の安全性や効果が十分に確認されていないためです。2年間使った後は、ビスホスホネートなどで治療を続けます。

禁忌: 高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、骨パジェット病、原因不明のアルカリホスファターゼ高値、過去に骨への影響が考えられる放射線治療を受けた場合など。

テリパラチド酢酸塩(週1回皮下注製剤)

日本で開発された骨粗鬆症治療薬です。医療機関に来院した際や、往診時に、医師またはその指導下で看護師が週1回皮下投与します。投与は72週までと制限されています。

禁忌: 骨パジェット病例、原因不明のアルカリホスファターゼ高値例、過去に骨への影響が考えられる放射線治療を受けた例、高カルシウム血症、原発性の悪性骨腫瘍もしくは転移性骨腫瘍など。

※テリパラチドはいわゆる第一選択薬ではありません。ビスホスホネート、SERMなどの治療でも骨折を生じた例、高齢で複数の椎体骨折や大腿骨近位部骨折を生じた例、骨密度低下が著しい例などで使用が奨められます。

 

薬の副作用

ビスホスホネートで比較的起こりやすいのは、胃もたれ、むかつきなど胃や食道の症状です。これらの多くは十分な水と一緒に飲み、服用後30分間横にならないことで防ぐことが可能です。

テリパラチドを使うとまれに血液中のカルシウム量が増加することで、食欲不振、だるさなどを起こることがあります。これらの症状は、薬の副作用が原因なのかそれ以外の原因で起こっているのかを明らかにするため、担当医に相談してください。血液検査が行われることもあります。

主な薬の留意点

ビスホスホネートの副作用で注意が必要なのは顎の骨の壊死です。まれですが、骨髄に細菌が感染して骨が溶けあり、むき出しになって痛みを伴います。歯の治療を受けたときに起こりやすいことがわかっています。

歯科治療をする際は、一時的にビスホスホネートの服用を休むなどの対応を摂ります。

薬物 留意点
カルシウム薬 便秘、胸焼け 血管障害助長との報告*1
女性ホルモン薬 ホルモン補充療法ガイドライン参照
選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM) 深部静脈血栓*2や視力障害
活性型ビタミンD3薬 高カルシウム血栓*3
ビタミンK2薬 ワルファリン投与例は禁忌
カルシトニン薬 悪心、顔面潮紅
副甲状腺ホルモン薬

骨肉腫、悪性腫瘍の骨転移例は禁忌
悪心、嘔吐、頭痛、倦怠感*4
使用期間に注意*5

ビスホスホネート薬 胃腸障害は連日服用製剤のほうが週1回製剤よりも多い
顎骨壊死*6、非定型大腿骨骨折
デノスマブ 低カルシウム血症、顎骨壊死、非定型大腿骨骨折

注釈*1~6については、下記ガイドラインで確認してください。
出典:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版 p85 表31

 

まとめ

従来薬の効果が十分得られなかった、重い骨粗鬆症にも使用できる薬が登場し、骨量が増える効果が報告されています。週1回の服用が月1回ですんだり、毎日の注射が週に1回の通院で良くなったりと患者さんの負担も軽減されています。

参考:骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン2015年版 - 日本骨粗鬆症学会 /www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf

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