大腸がんは近年増えているがんで、患者数や死亡者数も多いのですが、早期に発見して治療を受ければ治るがんです。がんと混同されがちなポリープの切除の重要性、大腸がんの検査についてお伝えします。
大腸がんとポリープ
アメリカの研究では、大腸ポリープを切除すると「がんの発生を76~90%抑制できる」「大腸がんによる死亡率を半減できる」というデータが発表されています。
日本でも2003年から大腸ポリープの切除により、大腸がんの発生や死亡率をどのくらい下げられるのか、研究*がすすめられています。
ポリープはがんになる危険性が高い
大腸のポリープとがんは混同されがちですが、ポリープにはいくつかの種類があります。
腫瘍か非腫瘍か。腫瘍の中で悪性のものががん、良性のものが腺腫。大腸ポリープの約80%は腺腫です。
しかし、両性の腺腫でも、がんを含んでいる危険性はあり腺腫の直径が10㎝を超えると、がんである危険性が急激にあがると考えられています。
早期発見が重要
大腸ポリープのすべてが大腸がんになるわけではありませんが、ポリープの段階で見つけて、早期に治療を行うことが、がんのリスクを予防することにつながると考えられています。
大腸がんの検査
大腸がんの主な検査には
- 便潜血検査
- 大腸内視鏡検査
の2種類があります。最近では、新しい検査を行うこともあります。
便潜血検査(便潜血検査免疫法)
自宅で2日分の便を採取し、便中に血液が混じっていないかどうかを調べる検査です。
2回のうち1回でも陽性になると、「要精密検査」となり、多くの場合大腸内視鏡検査を受けることになります。
簡便で負担も少なく、自治体や職場の「大腸がん検査」で40歳以上の人に推奨されています。
検査の方法
- 検査キットにあるスティックの先端部分で、便の表面をまんべんなくなぞるようにして再便する。
- スティックは保存容器に入れ、涼しい場所に保管し2日分を提出する。
大腸内視鏡検査
先端にカメラのついた内視鏡を肛門から挿入し、大腸の粘膜の様子をモニターに映し出して観察します。
検査前に、前処置として1.5~2ℓの下剤(長官洗浄剤)を飲み、大腸をからにする必要があります。
病変が見つかったとき
病変が見つかったときは、組織を採取して検査したり、ポリープや早期がんをその場で切除したりすることもあります。
便に血液が混じっているのが目でわかる状態になったときは、がんなど大腸の病気がかなり進行している可能性が高いです。
早期発見のために定期検査を
何も症状がないときから、便潜血検査を受けることが、早期発見につながります。しかし、日本では40歳以上の約20%しか便潜血検査を受けていません。
さらに要精密検査と言われても、約40%の人が受けていないのが現状です。
便潜血検査や精密検査の受診率を上げることが課題です。
新しい検査
最近では、大腸の癒着があるなどで内視鏡検査ができない場合に、CTのデジタルデータを画像処理して三次元画像にするマルチスライスCTコロノグラフィーを使用したり、口からの呑み込むカプセル内視鏡を使って検査を行うこともあります。
ただし、これらの検査が受けられるかどうかは、医療機関により異なります。希望がある場合は医師に相談してください。
検査の頻度
検査の目安は
40歳以上では、便潜血検査を毎年1回
50歳になったら大腸内視鏡検査を一度は受ける
家族歴がある場合、家族が発症した年齢より10年早く大腸内視鏡検査を受ける
です。
検査の結果
大腸内視鏡検査で異常がなければ、大腸がんの危険性は低いと考えられます。初めて受けた場合は、念のため1~2年後にもう一度受けましょう。
大腸ポリープが見つかった場合は、ポリープを切除した後、3年に1回の割合で大小内視鏡検査を受けることをお勧めします。(ポリープの数や大きさにもよります)
大腸ポリープは大きくなる
大腸ポリープは7~10年かけて大きくなるので、定期的に観察することにより、がんになるまえに発見して切除することが可能になります。
大腸がんの15%は遺伝的要因が関与するとされていますが、進行は遅いので家族が発症した年齢より10歳早く検査をすれば、がんを発症していたとしても、早期に発見でき、治療で治すことが可能となります。
大腸がんの原因
- 過体重、肥満、アルコール飲料の摂りすぎ
- 運動不足
- 喫煙
- 加齢
- 遺伝
などが大腸がんの原因とされています。日本で増加した原因は、食生活の欧米化など生活習慣が関係しているといわれています。
まとめ~大腸癌の予防に定期的な検査を
大腸がんの予防法はまだはっきりわかっていません。
- 自分に合った適切なエネルギー量の食事をバランスよく
- アルコールは適量
- 適切な運動
- 禁煙
など、生活習慣の見直しをしましょう。また、大腸がんの検査を定期的におこない、早期発見をすることも重要です。
*参考: 日本における大腸ポリープ切除後の大規模追跡調査「ジャパンポリープスタディ(JPS)]
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