健康と日々の徒然~Anのひとりごと

心と体の健康を大切にしたい方へ贈るひとりごと

人のものには手を出すな!看護師が教える薬の副作用

処方薬などは、例え同じ薬でも、患者さん一人ひとりに合わせて出されています。同じような症状だから、と安易に共用してはいけません。特に高齢者は善意で薬を共有したりしがちです。高齢者の薬物療法での注意点をお伝えします。

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湿布と膏薬は貼ればよいというものではない

市販の風邪薬など、症状が同じなら家族で共有することは、量や回数など注意書きに従って服用する分には、問題ありませんが、処方薬は医師や薬剤師の支持に従って、本人だけが使用しなければダメ。。

看護師も薬による副作用などに注意するとともに、特に高齢者が他人の薬を共有しないように注意することも必要です。

 

人のものには手を出さない

ご夫婦で入院されている高齢の患者さん、どちらが何の病気かわからなくなるほど、いろいろな慢性病を持っていらっしゃいました。

ある晩おじいちゃんが、全身チアノーゼ、呼吸も止まりそうな状態になり、夜勤ナースがあわてて点滴をしようと、おじいちゃんの腕をまくりあげると…

 

ショックの原因は全身に貼った「膏薬」

腕には、強心剤を配合したフィルムのような貼り薬が、3枚貼ってあるではないですか。もしやと思って全身を見ると、なんと背中にも腰にもフィルムがべたべた!

この貼り薬は、血管を拡張して血圧を下げる働きも持つ、非常に強い薬で、本来一日1枚決まった時間に張り替えるものです。

 

おばあちゃんの善意

 「なんでこんなに貼っちゃたの?」とお聞きすると、心配してそばにきていたおばあちゃんが、

「だってじいちゃんが、あんまりここだあそこだ、と痛がるから、アタシがもらっているこの膏薬、よく効くから貼ってみなって」

スタッフ一同、開いた口がふさがらない。おじいちゃんのショックの原因は、おばあちゃんに処方されていた貼り薬のせいだったのです。

 

薬の共用は絶対ダメ!

幸い、大事には至りませんでしたが、内服薬に限らず、貼り薬だって、他人の薬を使うのは、絶対にだめですよ!

たとえ同じ薬であっても、容量が違うことだってあるし、「症状がおなじだから」と言って同じ病気とは限りませんから。

 

高齢者の薬物療法について

高齢者は現状を維持する防衛力、予備力、適応力、回復力が低下するので、体にもさまざまな影響が出てきます。

高齢者の身体的特徴

  • 複数の疾患や異常を持つことが多い
  • 否定形な経過をたどることがある
  • 体内水分量が減少し、脱水や電解質の以上を起こしやすい
  • 筋肉量が減少している
  • 全体的に内蔵の機能が低下

 

高齢者の薬物代謝

全体的に内蔵の機能が低下するのは、普通に想像できるので、薬物との関係については、しっかり理解しておく必要があります。

ADME(アドメ)のプロセス

 ADMEとは薬物動態学および薬理学で用いられる、吸収(英: Absorption)、分布(英: Distribution)、代謝(英: Metabolism)、排泄(英: Excretion)の英語表記の頭文字からなる略語であり、生体において薬物が処理される過程を示す用語である。これら4項目は薬物の血中濃度と、組織への暴露の経時変化に影響する。したがって、ADMEは投与された化学物質の薬理活性と効用に関係する重要な項目である。

出典:  Wikipedia 

吸収

胃液の分泌量低下や、胃腸の運動低下などによる消化管での吸収力の低下

代謝

肝臓の血液量・幹細胞数の低下による代謝の低下

分布

血液中のアルブミンの低下、筋肉量、体内水分量の低下による、水溶性薬物の濃度上昇、その他脂肪組織の増加によって脂溶性薬物は蓄積しやすくなる

排泄

ネフロン現象による腎血流量(糸球体濾過値)の低下

 

消化管での吸収力が低下すると吸収に時間がかかる

代謝が退化すれば、肝臓で分解されたり、反対に薬効を発揮するように変化することができなくなる。

一般的には、代謝の低下によっせ高齢者の薬物の血中濃度は、青壮年期よりも上昇しやすい。

血中濃度が上がるのに時間がかかり、最高濃度は高くなるということ。

 

水溶性薬物

注意しなければいけないのは、実は筋肉水分を蓄えるという働きもあるのです。

加齢と言うのは乾燥のプロセスだとも言われますが、体全体の水分は減っているので、水溶性薬物の血中濃度は比較的早く、しかも高くなることがあるので、よく判断する必要があります。

 

脂溶性薬物

脂溶性薬物に関しては、筋肉が衰えて減って、その分、脂肪組織が増える人が多いので、脂溶性薬物は蓄積しやすい。さらに血液中のアルブミンが減少することも影響します。

 

高齢者の薬効が強く出やすいのは?

薬物はアルブミンと結合する結合型と、結合しないでフリーの状態の遊離型に別れて血液中に存在します。

効果を発揮するのはフリーのタイプなので、アルブミンと結合しない遊離型が高齢者では増えてしまうので、薬効が強く出やすい。

腎臓での排泄が低下するので、血中濃度がなかなか下がらない傾向にあります。

 

気をつけたい副作用

高齢者は副作用が強く出やすい。高齢者だけが使用することが多い薬物もあります。

注意が必要な副作用

カルシウム拮抗薬 徐脈、めまい、頭痛、歯肉の非行、顔面紅潮など
β遮断薬 徐脈、房室ブロックなどの不整脈、不眠、気管支喘息の悪化など
ループ利尿薬 難聴、低カリウム血症、高尿酸血症など
アンギオテンシン変換酵素阻害薬 空咳、高カリウム血症など

眠れない高齢者は多そう

「持ち越し」

大抵の睡眠薬には筋肉を弛緩させる作用があって、しかもあけがたや朝に薬の影響が残っているとふらついたり、寝ぼけたりして、転倒などの自己に繋がることがあります。この影響が残ることを持ち越しといいます。

 

転倒や転落を起こしやすい主な薬物

筋弛緩作用や眠気などの
精神神経系作用によるもの
睡眠薬(ニトラゼパム、ジアゼパム、エチゾラム、クロチアゼパム)
抗うつ薬(フルボキサミンマレイン酸塩)
低血圧によるもの 抗高血圧薬
レボドパ(パーキンソン症候群治療薬)
起立性低血圧を
引き起こしやすいもの
向精神薬(クロルプロマジン塩酸塩、オランザピン)
狭心症治療薬(ニトログリセリンなど)
低血糖によるもの 経口血糖降下薬
インスリン

鎮痛薬

・非ステロイド性抗炎症薬のNSAIDsの副作用は幅広い。

・胃腸障害(消化管潰瘍を含む)、腎臓や肝臓にも負担をかける。眠気が出るものもある。

・サリチル酸には高血小板凝集作用やアスピリン喘息もある。

・抗炎症は解熱作用があり、急激に体温が下がることによる血圧低下にも注意が必要。

 

高齢者と薬物の関係で気を付けたいポイント

  • 身体の生理機能には個人差がある
  • 健康食品や察プリメントなどは、薬物に影響することもあるので使用しているかどうかを把握する。また、一般に鉄やビタミン類の吸収は低下していることが多い。
  • 高齢者への薬物療法は「少量から始める」「薬剤の数を最小限にする」「短期間の与薬を心がける」必要がる。他の医療機関からの処方にも注意する。
  • 薬物療法に関するコンプライアンスが向上する支援をする。具体的には服薬する能力をアセスメントする、薬剤師と連携するなどである。
  • 嚥下機能の低下にも留意する。ご縁や、食堂に薬物が停滞すると、薬剤性の食道潰瘍を起こす可能性がある。
  • 体温が低く、直腸の血流量が低下しているため、座薬の溶解や吸収が遅延することがある。

高齢者の特徴

太っているか痩せているかの2極になっているといえますが、痩せている人のほうが多いでしょうか。痩せている方はきっと、小食なのでしょう。高齢者は筋肉も毛称しています。

上記の患者さんのように、あれこれ病気や異常を抱えていることが多いので、例えば、肺炎になったとしても、肺炎の典型的な症状があらわれなくて、気づきにくいことも多い。

脱水や電解質の異常を起こしやすいのは、腎臓の機能に関連しているのかもしれません。

 

まとめ~高齢者の薬物療法の注意点

高齢者の薬物療法には、まず、高齢者の特徴を知り、注意が必要な、薬の副作用についての理解が必要です。

他人に処方された薬は、貼り薬といえども共用してはいけません。軽い気持ちで使用して、重大な問題が引き起こされることもありえるからです。

特に、様々な症状、病気を抱えている高齢者は、身体の機能も低下しているので周りが注意する必要があります。

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