原因不明の症状や、繰り返す病気に悩んでいたら、原因はペットからの感染症、ということも少なくありません。感染を予防するために注意したいことや、ペットからの感染症について解説します。
猫や犬の病気からの感染予防
少子高齢化の現在、猫や犬、ウサギ、インコ、ハムスターなどのペットと、家族同様に室内で一緒に暮らすことが増えたことで、ペットからの感染症も増えています。
その結果、「ペット感染症」や「動物由来感染症」などと呼ばれる、動物が持っている細菌やウイルス、寄生虫などの病原体が、人にうつる感染症が増加の傾向にあります。
人から動物にうつる感染症もあり、最近は「ヒトと動物の共通感染症」と呼ばれることも多くなってきました。
感染症を予防し、安全に楽しくペットと暮らすために、どんな感染症があるのかを知り、正しい飼い方や接し方の基本を確認しましょう。
体調が悪くて医療機関を受診するときの注意点
インフルエンザかな、と思って病院にいき、薬をもらっても一向に治らない。もしかしたらそれは、熱やせきの症状が出るオウム病かも知れません。
猫や犬などペットの飼い主が、体調不良で内科や皮膚科を受診するときは、正しい診断を受けるためにも、「ペットを飼っている」と伝えることが必要です。
副鼻腔炎の原因は犬だった
副鼻腔炎を何度も繰り返す患者さん、治ってもまた再発してしまいます。睡眠障害も出てきたので、寝ている間の様子を監視したところ、無呼吸になることが有りました。
すると、一緒に暮らしている犬が、無呼吸状態の患者さんを心配そうに、ペロペロ舐めている様子が。
聞けば、同じ布団で毎晩寝ているそうです。この犬がパスツレラ菌に感染していることが判明し、それが繰り返す副鼻腔炎の原因になっていたと考えられます。
犬は別の部屋で寝かせるようにした所、再発しなくなりました。
このケースでも、最初の段階で犬と一緒に寝ていることが医師に伝わっていれば、再発はなかったと思われます。
噛まれたりひっかかれたりした時の対処
すぐに水道水で洗い流し、石けんで傷口を洗って消毒します。
傷が深い場合や、傷は浅くても免疫力が弱い高齢者や幼児、糖尿病、腎臓病などの慢性の病気を持っている場合は、すぐに外科を受診しましょう。重症化しやすいです。
傷の治りが悪い、しばらくしてから発熱した、リンパ節が腫れたなどの症状が出てきた場合は、共通感染症かもしれないので受診します。
他人の飼い犬や野犬に噛まれた場合は、傷の治療を受けた後、保健所に届けます。(噛んだ犬の飼い主は、保健所への届け出、狂犬病の有無についての検診をする義務があります)
共通感染症を防ぐ飼い方
共通感染症の多くは、人間と動物が過剰にふれあうことでうつります。かわいがるのは良いのですが、適切な距離を置くことも大切。
以下の様な飼い方をしていたら、すぐに改めましょう。
共通感染症にかかる可能性がある飼い方
一つでも当てはまる場合は、可能性があります。
- ペットの口や顔にキスをする
- 顔や口の周りを舐めさせる
- 口移しや自分の箸で餌を与える
- 同じふとんやベッドで寝る
- 台所でペットのトイレや水槽などを洗う
- 台所にペットのトイレを置いている
口だけでなく顔にも病原体
もともと動物の口の中には、人間に感染症を起こす病原体がいるし、散歩などで不潔なものを嗅いだり舐めたりしているかもしれません。
犬回虫は肛門周りに次いで、顔にも多く付着しています。
ペットの口や顔には、感染症の原因となる病原体がいることを、良く理解することが重要です。
睡眠中に感染しているかも
普段は猫や犬に舐めさせたり、キスしたりしない人でも、寝ている間に猫や犬が顔を舐めているかもしれません。
鳥の場合は、羽ばたく時に乾燥した糞が寝室中に広がり、それを吸い込んでいるかもしれません。
気づかないうちに共通感染症にかかってしまうリスクが高いので、寝室は別にすることが大切です。
台所に排泄物を近づけない
動物の排泄物には、感染源となる病原体がたくさん含まれています。猫や犬のトイレ、カメの水槽などを台所で洗ったり、掃除をしたりするのはNGです。
台所にトイレを置くのも良くありません。
環境づくりや感染しにくい工夫
日常で気を付けたいのがペットのしつけや環境づくり、感染しにくい工夫です。
- 引っ掻いたり噛んだりしないようにしつける
- ひっかかれても傷つきにくいように爪を切る
- ノミを定期的に駆除
- 排泄物には直接触れず、すぐに処理する
- 鳥かごなどは毎日掃除
- ペットの健康状態をよく観察し、調子が悪い時は受診
- 一年に一回は検便などの健康チェックを受ける
代表的な共通感染症
共通感染症には様々な物があります。その中の代表的な7つの感染症です。( )の中は感染するペットです。
- レプトスピラ症(犬)
- パスツレラ症(犬、猫)
- トキソプラズマ症(猫)
- ネコひっかき病(猫、犬)
- 皮膚糸状菌症(うさぎ、ハムスター、犬、猫)
- オウム病(トリ)
- サルモネラ症(カメ、ヘビ、トカゲなど)
レプトスピラ症(犬)
主にネズミが保菌してます。レプトスピラ(細菌)を保菌している、ネズミや犬などの尿で汚染された川の水などが、皮膚に触れて感染します。
人が感染した場合、発熱、黄疸、腎炎などをおこし、死亡する場合もあります。
パスツレラ症(犬、猫)
殆どの犬や猫の口の中にいる常在菌です。足を舐める習性があるので、爪にもこの細菌が付いていることがあります。
動物は無症状ですが、人が噛まれたりひっかかれたりすると感染し、傷が化膿することも。
高齢者や糖尿病など免疫力が低下している人は、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎などを起こすこともあるので、舐められたり、キスをしたりしないようにします。
トキソプラズマ症(猫)
猫の分に含まれる原虫「トキソプラズマ」が口から入り感染します。健康なら特に問題はないのですが、妊娠中に感染すると、流産などが起こることもあります。
ネコひっかき病(猫、犬)
飲みが媒介して犬や猫の間で広がるバルトネラ菌は、犬や猫が感染しても症状はありません。しかし、保菌している猫や犬に人間が噛まれたり、ひっかかれたりして感染すると、傷が可能、発熱や疼痛、数週間後に傷口に近いリンパ節がはれたりすることも。
皮膚糸状菌症(うさぎ、ハムスター、犬、猫)
皮膚にカビが映えます。動物が感染すると円形の脱毛がみられ、病気の猫や犬などを抱くなどで人にも感染し、マルイ赤みや水ぶくれが出来ます。
オウム病(トリ)
オウムやセキセイインコなどトリの糞の中に、オウム病の病原体(オウム病クラミジア)が含まれています。
糞が乾燥して病原体と一緒に空気中に広がり、それを吸い込むことで感染します。インフルエンザに似た症状が起こるのが特徴です。
成人、特に年配者が発症することが多く、感染したトリも「羽毛がたつ」「下痢をする」などの症状が現れます。
サルモネラ症(カメ、ヘビ、トカゲなど)
サルモネラ菌は食中毒を起こすので有名な菌ですが、カメ、ヘビ、トカゲなどの爬虫類の消化管にも住んでいます。
子どもが良く飼うミドリガメも保菌していることが多く、感染すると腹痛や下痢が起こります。
2018年8月3日追記:ペットではないですが、うなぎのサルモネラ菌が原因の集団食中毒も起きました。
共通感染症が増えている原因
2003年にはペットとして飼われている犬や猫の数が、人間の子供の数より多くなりました。最近は猫ブームとかで、犬よりも猫の飼育数が多くなっているそうです。
ブーム、という言葉は使いたくありませんが、近年猫のcmが増えていたり、散歩が不要で飼いやすい、猫の性格がたまらない、という人も多いです。
動物を飼育する、というよりもペットとのスキンシップが、以前より濃厚になっている傾向があります。その結果、ペットから様々な病原体が人間に伝染る機会が増えたと考えられます。
さらに、ウサギやフェレット、カメなどの輸入動物を飼う人も増え、その予防法が良く知られていないために、新しい共通感染症が発生することも懸念されています。
まとめ~ペットの感染症について知識を持つ大切さ
共通感染症の多くは、必要以上に人と動物がふれあうことで起こります。
ペットは友達、と言う感覚で接して、触った後は手洗いとうがいをすること。環境やしつけにも注意を払うことです。
飼い主や家族の体調が悪く、医療機関にかかるときは、ペットを飼っていることを伝えるのを忘れないで下さい。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ
ヒトには感染しないけれども、人間を介して感染が広まる猫バルボウイルス、猫カフェの運営をめぐりニュースになっています。
ペットからヒトへの感染症の他にも、こういった問題があることも知っておくことが大切でしょう。(2018年8月3日追記)