脳梗塞は、脳の血管が詰まり、その先の脳細胞が死ぬ病気です。自然に治ることもありますが、重い障害が残ったり、死亡することも。健康で長生きするために、3つの種類の脳梗塞について、特徴や原因について知っておいてほしいことをまとめました。
脳梗塞が起こるしくみと症状
脳卒中とは、脳の血管が破れたり詰まったりすることによって起こる病気で、破れて起こるのが脳出血とくも膜下出血で、詰まって起こるのが脳梗塞です。
脳細胞が死ぬと、その部分がになっていた機能が損なわれ、様々な症状が現れたり、後遺症が残ることがあります。ときには、死に至ることも。
脳は神経細胞の集団です。体のあらゆる機能を司り、脳が働くためには、燃料となる酸素と栄養(ブドウ糖)を豊富に含む血液が大量に必要です。
しかし、脳梗塞で血管が詰まると、血流がと途絶え、その先の脳細胞は酸欠と栄養不足で死んでしまい、その細胞は2度と再生しません。
見る、聞く、話す、体を動かすなど、様々な機能を分担している脳細胞が死ぬと、その部分がになっていた機能も損なわれるので、脳梗塞を起こすと、様々な症状が現れたり、後遺症が残ることがあるのです。
脳卒中の分類
出典:田辺三菱製薬 わが国の脳梗塞(急性期~慢性期)の治療実態PDF
(://www.mt-pharma.co.jp/ir/meeting/pdf/S_081007.pdf)
脳梗塞の種類は3つ
脳梗塞は、大きく分けると
- 脳を養う動脈に原因があるもの
- 心臓に原因があるもの
の2種類があり、更に、動脈に原因がある脳梗塞は、起こる動脈によって2つにわけられので、脳梗塞の種類は血管の詰まり方により、次の3つにわけられます。
- ラクナ梗塞 細い動脈が詰まる
- アテローム血栓性梗塞 太い動脈が原因
- 心原性脳塞栓症 心臓に原因がある
脳卒中急性期患者データベース(JSSRS)1999~2003年
出典:田辺三菱製薬 わが国の脳梗塞(急性期~慢性期)の治療実態PDF
脳梗塞の特徴比較
3つの種類の特徴を比較してみましょう。
脳血栓症 | 脳塞栓症 | ||
---|---|---|---|
ラクナ梗塞 | アテローム 血栓性脳梗塞 | 心原性脳塞栓症 | |
梗塞の大きさ | 少梗塞(1~1.5cm) | 中~大梗塞 | 中~大梗塞 |
発症時の状態 | 覚醒時に多い(50%) | 安静時(睡眠中) | 日中活動時 |
(症状の)起こり方 | 比較的緩徐 | 緩徐、段階上増悪あり | 突発完成 |
意識障害 | 殆ど無い | 強くない なんとなくおかしい |
やや遅れて強くなる |
大脳皮質症候 (失語、失認、失行など) |
ない | あまり多くない (心原性塞栓症と比べると) |
多い |
その他の症状 | いわゆる楽な症候群 (構音障害、片麻痺のみなど) |
症候の程度は様々 | 重度の場合が多いが、 ときに著名改善 |
参考:田辺三菱製薬 わが国の脳梗塞(急性期~慢性期)の治療実態PDF
脳梗塞の起こりやすい時間帯
ラクナ梗塞とアテローム血栓性梗塞は、睡眠中に起こることが多くあります。血圧は1日のうちで変動し、一般的に昼間は高く、夜に低くなる傾向があります。
通常は夜中の3時頃が最も低く、その後上がり始めます。血圧が上がり始めたときに血小板の持つ、血液を固める機能が活発になり、血栓が作られやすいとされているからです。
心原性脳塞栓症は、朝起床後間もなくの、活動を始めるような時間に発症しやすいです。心臓にできた血栓は、急に体を動かしたときなどに、剥がれやすくなるからです。
ラクナ梗塞
脳の中にある細い動脈が詰まって起こる脳梗塞です。ラクナとは、「ちいさなくぼみ」を意味しますが、梗塞巣((脳細胞が死んでしまった部分)の直径が1.5cm以下と小さいのが特徴。日本人の脳梗塞では最も多く、脳梗塞の約35%を占めています。
主に高血圧が原因で、高齢になるほど見られます。梗塞巣の大きさは、「CT検査」や「MRI検査」などの画像検査でわかります。
血管の詰まる仕組みと症状の起こり方
疝痛動脈と呼ばれる、脳の太い動脈から枝分かれした細い動脈に、高い圧力がかかり続けると、血管壁が徐々に厚くなります。その影響で血管の内腔が狭くなり、最終的に血管が詰まります。
ラクナ梗塞は、大部分が突然起こりますが、症状は比較あて気軽く、障がいされた部位によっては、症状が全く現れないこともあります。(無症候性脳梗塞)
1回の発作は軽くても、繰り返しおこったり、いつの間にか梗塞巣がたくさんできると、認知症の原因となることもあります。
アテローム血栓性梗塞
脳に血液を運ぶ太い動脈(頸部の頸動脈)や頭蓋内の太い動脈のの動脈硬化が原因で起こります。アテローム血栓性梗塞は、最近日本で増加傾向にあります。
余分なコレステロールなどが血管壁に入り込むと、お粥の固まりのようなものができます。これがアテロームです。アテロームのために血管壁が厚くなり、血管の内腔が狭くなって起こった動脈校がが原因で、以下のような仕組みで血管が詰まります。
血管の詰まる仕組みと症状
血栓性 脳の動脈にできたアテロームが破裂すると、そこをうさ具ために血小板が集まってきて血栓(血の塊)ができ、血管が詰まる
塞栓生 頸動脈などに動脈硬化が起こり、そこにできた血栓がはがれて血流に乗り、脳の血管をつまらせる
血行力学性 動脈効果で血管の内腔が狭くなっていても、なんとか血流が保たれている場合もあります。
が、急に血圧が低下したりすると、動脈硬化で狭くなった部分より先の血流が減少し、徐々に血管が詰まっていきます。アテローム血栓性梗塞のうち、約10%以下と比較的少ないです。
症状
突然激しい症状が起こる事もあれば、軽いこともあり、又、段階的に進行することも。動脈硬化がじわじわと進行する間に、多くの場合は代わりになる血管(バイパス)ができますが、脳の血流は全体的に低下します。
そのために起こるのが、なんとなくおかしい、ぼんやりする、と言った意識の変容です。また、本格的な発作の前触れとして、一過性虚血発作を起こすこともあります。
*一過性虚血発作については、機能のエントリ「脳梗塞を前触れに気づいて防ぐ」で季節しています。
心原性脳塞栓症
脳の血管にできた血栓ではなく、心臓の病気で心臓内にできた血栓が、突然脳の血管をつまらせることで起こります。
その殆どの原因は、心臓の拍動が乱れる、心房細動です。突然血管が詰まるので、大きな梗塞巣ができることが多く、症状も重くなります。
心臓でできた血栓が脳で詰まる
不整脈の1つである心房細動などで、心臓の拍動が乱れると、心房内の血流が滞り、血栓ができやすくなります。できた血栓が血流に乗り、脳に到達することで脳の血管が詰まります。
心原性脳塞栓症は、アテローム血栓性梗塞などと異なり、突然血栓が脳に流れ込んで詰まります。そのため、バイパスができる時間的余裕がありません。問題のなかった血液が突然止まるので、梗塞巣も大きくなるのです。脳梗塞の中でも、発症時の症状が特に重いのが特徴です。半側空間無視や、失語症などを伴うこともよくあります。
危険な出血性脳梗塞
突然血管が詰まると、体が持っている血栓を溶かそうとする働きが活発になります。その為、脳の動脈が詰まっても、血栓が溶けたり、流れたりするので、約6割の人は、血流が完全に再開します。
数時間以内に回復すれば、症状が改善することもありますが、遅れると、傷んだ血管に急激に血液が流れ込み血管壁が破れ、脳内に出血することもあり、これを出血性脳梗塞と言います。病巣が広がり、危険な状態になります。
まとめ~予防、治療には症状や特徴を知る
脳梗塞は前触れの段階で発見したり、発症後すぐに対応することで良くなる可能性が高いです。
予防法を知っておくのも大切ですが、発症に気づき、早く受診するためには、症状や特徴について知っておくことも必要です。
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