生命に関わることのある病気脳卒中は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の総称です。原因となる病気や生活習慣の見直しで予防に取り組む、脳卒中予防十か条についてもう少し詳しくお伝えします。
脳卒中予防十か条締めくくりは前兆を見逃さないこと
脳卒中予防十か条とは、日本脳卒中協会がこれまでの調査や研究などからわかった、幾つかの脳卒中になりやすい原因から導き出したものです。
過去エントリー、
www.nurse-diaries.comでも紹介しましたが、脳卒中予防10か条の内容について、原因となる病気との関連も含めて詳しくご紹介します。脳卒中予防に役立ててください。
脳卒中予防10か条
- 手始めに 高血圧から 治しましょう
- 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
- 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
- 予防には たばこを止める 意志を持て
- アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
- 高すぎる コレステロールも 見逃すな
- お食事の 塩分・脂肪 控えめに
- 体力に 合った運動 続けよう
- 万病の 引き金になる 太りすぎ
- 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ
高血圧、糖尿病、不整脈
1~3条は、脳卒中と密接な関係があるとされる、高血圧、糖尿病、不整脈に関してです。高血圧は軽症で約3倍、重症になると約7倍以上も死亡のリスクが高まります。
糖尿病のある人は約2~3倍、心房細動(不整脈)のある人は約5倍、健康な人と比べて脳卒中になりやすいです。(厚生労働省の調査より)
高血圧
脳卒中の最大の危険因子といえるのが高血圧。血圧が高い状態が続くと、血管に負担がかかり血管壁が傷つきます。
そこに血液中のコレステロールなどが入り込み、血栓ができやすくなったり、もろくなった血管が破れやすくなったりします。内腔が狭められるので動脈硬化も進みます。
きちんと治療を受けて血圧を下げれば、脳卒中で死亡するリスクを下げることは可能です。
糖尿病
血液中の血糖(ぶどう糖)の濃度が上がると、血管壁が少しずつ傷つけられ、血管の内腔が狭くなったり動脈硬化が進んだりします。糖尿病があると、脳卒中の中でも脳梗塞が起こりやすいのが特徴です。
不整脈
特に高齢者に多いのが心房細動です。心房細動は何らかの下忍で心臓の心房が細かく震え、規則正しい拍動ができなくなる病気です。
血流が滞り血液がよどむため、血栓ができやすくなります。血栓の一部がはがれ、脳まで運ばれて大きな血管が詰まると、脳梗塞を起こします。
動悸がする、ふらつくなどの症状があったり、脈が乱れていたりする場合は、すぐに医療機関を受診してください。心電図検査で殆どの不整脈を発見できます。
心房細動と診断されても、血栓ができるのを防ぐ抗凝固薬の服用で、脳卒中の約8割を抑制できると言う報告もあります。
生活習慣が原因
4~9条は生活習慣に関する内容が多く含まれています。4~6条のたばこ、過度のアルコール、高コレステロールは、脳卒中を起こす要因になるというデータがあります。喫煙、飲み過ぎ、高コレステロールなどが当てはまる場合、改善することが重要です。
たばこの有害性
喫煙は特に脳卒中の原因になるだけでなく、心臓や肺など全身に悪影響があります。たばこに含まれるニコチンが交感神経を刺激し得、血圧を上げるためと考えられますが、1日にたばこを40本吸っている人は、吸わない人に比べて約4倍も脳卒中での死亡率が高いというデータがあります。
また、たばこを吸うたびに血圧を測った研究結果では、たばこを吸うたびに、血圧が上昇し続けることがわかっています。1本吸い終わると30mmHgぐらい上がり、2本目からは吸い始めてすぐに高くなり、吸い終わりも上がっています。
禁煙することをお勧めします。
運動の有益性
7~9条は現代人に多い生活習慣に関連しています。塩分・脂肪、運動不足、太りすぎは高血圧、糖尿病、脂質異常症、コレステロールなどに悪影響を及ぼす要因です。
8条の体力にあった運動では、ウオーキングが全身の血行を促進したり、肥満を抑制したりすることができるのでオススメです。1日1万歩を目標に少し速足で、汗ばむ程度の距離を歩くと良いでしょう。
脳卒中の前兆
10条は当たり前のことだと思うかもしれませんが、これがその通りに行動していないというケースが少なくありません。
倒れてすぐに救急車を呼んだ場合でも、それ以前に片側の足や手に麻痺があったり、ろれつが回らないと言った症状があっても、15分程度で直ったのでそのままにしていた、ということが多いのです。
最初に起きた症状は、脳梗塞が起こりかけているもので、一過性脳虚血発作(前触れ発作)と呼びます。15分から1時間程度で症状が収まるのですが、たまたま血栓が流れて消えたなどと考えられます。翌日あるいは翌々日までに本格的な発作を起こす危険性があります。
脳卒中の前兆が起きたときに救急車を呼び、適切な治療を受ければ大、きな発作や後遺症を防ぐ可能性が大きくなります。
脳卒中とは
脳卒中は大別すると、血管が破れて出血するタイプ(脳出血、くも膜下出血)と血管が詰まるタイプ(脳梗塞)に分類できます。
これらは、原因に多少の違いはありますが、脳の血管の病気です。脳卒中の予防には、脳の血管を健康に保つことが大切です。
脳卒中の分類と脳梗塞については、以下の過去エントリーでもお伝えしていますので、合わせて参考にされてください。
脳梗塞
脳の血管の一部が動脈硬化で細くなったり、血栓(血のかたまり)が血管を塞いだりして、その先の組織に血液が正常にながれなくなります。血液から十分な栄養や酸素が供給されなくなった神経細胞は壊死し、正常に働くことができなくなります。
脳出血(脳内出血)
血管の一部が破れて出血し、血液が固まってできた血腫によって脳の働きが障がいされます。主に脳の奥の細い動脈に起こります。
くも膜下出血
脳の表面に出来た血管のコブが破裂し、脳を包むくも膜と脳の間に出血が広がります。広がった血液が脳を圧迫して脳の働きを傷害します。
脳卒中の前兆に気づくために知っておきたい症状
前触れ発作(一過性脳虚血発作)に気づくために、以下のような脳卒中の症状をかくにんしておき、どれか一つでも症状が出た場合は脳卒中を疑って、迷わず救急車を呼んでください。
- 片側の麻痺
- 顔、手、足など「体の片側に力が入らない、しびれを感じる」
- 顔の麻痺
- 顔の片側の動きが悪い、ゆがむなど
- 言葉の障害
- ろれつがまわらない、言葉がでてこない、他の人の話が理解できない
- 目の異常
- 片方の目にカーテンがかかったように急に見えなくなる、視野の半分が欠ける
- 頭痛
- 今まで経験したことの無いような激しい頭痛が突然起こる(くも膜下出血の疑い)
脳卒中死亡の内訳
出典:「脳卒中を予防するための10か条と大切なお話」後述
1960年は脳出血が全体の約3/4を占めていましたが、2010年には約1/4に減少、脳梗塞、くも膜下出血が増えています。脳梗塞が増加したのは、高齢化、ライフスタイルの変化で脳梗塞の危険因子となる生活習慣病が増加したことが背景にあります。
一方、脳出血による死亡の最大の原因が、塩分の摂り過ぎによる高血圧と低たんぱく食から血管壁がもろくなることが関係していることがわかりました。その結果高血圧治療の効果で脳出血死亡は激減し、脳卒中全体の死亡率は大幅に減少しています。
▶日本脳卒中協会 福岡県支部と福岡県看護協会が作成した「脳卒中を予防するための10か条と大切なお話」がわかりやすく参考になります。
脳卒中克服10か条
脳卒中の克服に関する10か条もありますのでご紹介します。
- 生活習慣 : 自己管理 防ぐあなたの 脳卒中
- 学ぶ : 知る学ぶ 再発防ぐ 道しるべ
- 服薬 : やめないで あなたを守る その薬
- かかりつけ医: 迷ったら すぐに相談 かかりつけ
- 肺炎 : 侮るな 肺炎あなたの 命取り
- リハビリテーション : リハビリの コツはコツコツ 根気よく
- 社会参加 : 社会との 絆忘れず 外に出て
- 後遺症 : 支えあい 克服しよう 後遺症
- 社会福祉制度: 一人じゃない 福祉制度の 活用を
- 再発時対応 : 再発か? 迷わずすぐに 救急車
出典: 日本脳卒中協会
まとめ~脳卒中の前兆を見過ごさない
脳卒中予防10か条、脳卒中克服10か条を冷蔵庫など目につく場所に張っておくと良いでしょう。
脳卒中を起こす3大要因である、高血圧、糖尿病、不整脈を予防するためには、生活習慣などに注意して、血管を健康に保つことが重要です。
脳卒中の前兆を見逃さず、適切に対処することで大きな発作や後遺症を防ぐことも可能となります。前触れ発作についても確認してください。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ