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眠剤の誤解と正しい理解~看護師夜勤はツラいけど睡眠薬は怖くない

眠れない時に用いられる眠剤。交代勤務、夜勤で睡眠薬を用いる看護師も少なくありません。怖いという先入観がありますが、治療で使われる薬について、正しい知識を持つことは重要です。薬の使い方を理解し正しく使いましょう。

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眠剤は正しい知識を確認すれば怖くない

睡眠不足など睡眠障害は、放っておくと生活習慣病やうつ病につながることもあります。睡眠薬を正しく使うことで、症状の緩和、改善が見込めますが、「眠剤は怖い!」という先入観から、薬の導入をためらう人も少なくありません。

睡眠薬について正しい知識を確認しましょう。どんな状態になったら医療機関を受診したほうが良いのか、受診のタイミングについてもお伝えします。

 

眠剤の働きを理解し、適切に使う

睡眠薬は怖い、という先入観や誤解があると、治療の効果が十分に得ることができません。睡眠薬の働きについて理解し、適切な使い方について知っておきましょう。

根強い眠剤への不安

生活習慣病を治療中で不眠がある人を対象にした調査*では、不眠があっても医師に相談した人は約2割、約3割の人が寝酒をしていました。最も多かった回答は、何もしないでした。

不眠を放って負いても問題ないと考えている人が多く、睡眠薬に対して不安を持つ人が多いことが見えてきます。

睡眠薬は正しく理解したうえで使えば、睡眠の悩みが改善されると同時に、眠れないことからの苦しさからも開放され、日中も活動的に過ごせるようになります。

*内村直久「日本病院薬剤師会雑誌」2007

(内村直久医師(久留米大学病院)1981年に日本初の睡眠障害専門外来を開設)

治療で使われる主な眠剤

治療で使われる薬について、種類や特徴を簡単にまとめました。薬物療法の対象になる不眠は

  • 週に3回以上の不眠が4週間以上続く
  • 日中の眠けや倦怠感などにより生活の質(QOL)が低下している

場合です。以前はバルビツール酸系の睡眠薬が使われていましたが、現在では耐性や依存性、副作用が比較的軽減された、ベンゾジアゼピン受容体作動薬が主に使われています。また、不眠の程度が軽い人などに対しては、2010年7月からメラトニン受容体作動薬も使われるようになり、治療の幅が広がっています。

 

ベンゾジアゼピン受容体作動薬

ベンゾジアゼピン受容体作動薬は大脳辺縁系(主に情動や意欲にかかわっている)にある「GABA受容体」に作用し、情動や意欲などを抑制することで、脳の活動を鎮静化して、眠りに導きます。薬の構造から、「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」と「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」に分類されます。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬

睡眠作用のほか、抗不安作用(不安を鎮める)、筋弛緩作用(筋肉の緊張を緩める)があります。また、ノンレム睡眠のステージ2を増やし、ステージ3,4とレム睡眠を抑制します。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

抗不安作用や筋弛緩作用は少なく、ノンレム睡眠のステージ3、4やレム睡眠を抑制しないので、ベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べて、自然な眠りを得られるといえます。

作用時間による4つのタイプ

ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、薬の血中濃度が最高値から半分に減るまでの時間の長さ(半減期)で分類されます。

薬の種類対象薬のタイプ半減期対応の睡眠障害
ベンゾジアゼピン受容体作動薬



不眠による頭痛などがある人



超短時間作用型 2~4時間 入眠障害
短時間作用型 6~10時間 入眠障害
中途覚醒
熟眠障害
中間作用型 20~30時間 早期覚醒
熟眠障害
長時間作用型 50~100時間 早期覚醒
熟眠障害
日中の不安の解消
非ベンゾジアゼピン受容体作動薬 筋弛緩作用による転倒の心配がある高齢者、不安が弱い人
メラトニン受容体作動薬 不眠症が軽度、不安が弱い人、高齢者、認知症の人など

脳が効き始める時間や半減期には、個人差があり、患者さんの活動性や体の状態などを考慮しながら薬が選ばれます。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬の主な副作用

持ち越し効果
日中に眠気やふらつき、脱力感、頭痛、倦怠感などが現れる。薬の効果が翌日に持ち越されるためで、高齢であるほど現れやすい

筋弛緩作用
筋肉が弛緩し、ふらついたり転倒したりすることがある。特に高齢者に現れやすい。

記憶障害(前向性健忘)
薬を飲んだ後から寝付くまでの間の出来事、夜中に目が覚めた時に起こったことなどを忘れる

半跳性不眠
飲み続けていた薬を自己判断で突然中止したようなときに、以前よりもさらに強い不眠が起こる

退薬症候
飲み続けていた薬を自己判断で突然中止すると、不安やいらいら感、手足の震え、発汗などが起こる

奇異反応
まれに抑制が取れ、興奮したり攻撃性が高まったり、錯乱状態になることがある。過食やせん妄が現れることもある

 

メラトニン受容体作業薬とその他の薬

睡眠に大きくかかわる体内時計の中枢である、視交叉上核には、メラトニンと言うホルモンの受容体がいくつかあります。これらの受容体のうち、入眠を促す働きのある受容体と、体内時計を整える働きのある受容体に作用するのが、メラトニン受容体作動薬です。

合わせてそのほかに使われる薬、飲み方の基本についても確認しましょう。

メラトニン受容体作業薬

脳と体を睡眠状態に導きます。自然な睡眠を引き出しつつ、睡眠と覚醒のリズムを整える効果があります。ベンゾジアゼピン受容体作動薬と異なり、抗不安作用や筋弛緩作用がないので、軽度の不眠症や不安が弱い人、高齢者、認知症の人などに使われます。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬に見られる筋弛緩作用や記憶障害などはありませんが、めまいや頭痛などがまれに現れます。

そのほかによく使われる薬と飲み方の基本

場合によっては抗うつ薬、抗精神病薬、漢方薬が用いられます。睡眠薬は作用が弱いものを少ない量から飲み始めるのが基本。飲んだからと言ってすぐに改善されるとは限りません。初めは効き目が弱くても、飲み続けると薬の血中濃度が安定していくので、効果が表れるようになります。1週間は用法、用量を守って必ず飲み続けます。

それでも効果が不十分な場合は、薬の種類を変えたり、量を増やしたりして様子を見ます。作用時間が違うタイプの薬を併用することもありますが、基本的には2種類までと考えられています。

ノンレム睡眠とレム睡眠

ノンレム睡眠は眠り始め、レム睡眠は起床間近に増えます。約90分間隔でノンレム睡眠とレム睡眠が交互に繰り返されます。「90の倍数で起きるとすっきり目覚める」とよく言われますが、90分周期と言うのはあくまでも平均値です。人によって異なるので、必ずしも90の倍数で起きればよいというわけではありません。すっきり目覚めるのは、起きる前に睡眠が浅くなる時です。

ノンレム睡眠 
積極的に脳を休める睡眠。脳の休息の度合いにより4つの段階(ステージ)に分けられ眠りが深くなります。脳波が緩やかになるステージ3,4が熟睡の状態です。

レム睡眠 
筋肉を休めるための浅い睡眠です。目の動きと呼吸に関する筋肉以外は完全に弛緩します。体は休んでいても脳は働いている状態で、レム睡眠の時に夢を見ます。

 

医療機関を受診するタイミングと検査の流れ

不眠に限らず、睡眠についての悩みが1か月以上続く場合は、医師に相談することが大切です。まずかかりつけ医に相談しましょう。必要に応じて精神科や神経内科を紹介されることもあります。

交代勤務、夜勤で勤務時間が不規則な看護師などは、薬での改善が必要となるので、ツラいと思ったタイミングでの受診をおすすめします。

日本睡眠学会のホームページには、睡眠医療認定医リストがあるので、近くにある医療機関を選んでも良いでしょう。

参考 日本睡眠学会 睡眠医療認定医リスト

成人の5人に1人は睡眠と問題を抱えていると言われています。睡眠薬を処方されているのは、この内の約1割程度と推定され、何らかの睡眠障害があっても医療機関を受診する人は、極めて少ないと思われます。不眠で悩んでいる人の多くは、飲酒して寝ようとするのですが、毎日飲んでいれば依存症にもつながるし、肝臓などにも悪影響が及びます。

検査の流れ

受診の前に、最低2週間程度の「睡眠日誌」を付けて持参すると診断に役立ち、問診もスムーズに進みます。(睡眠日誌はスマホのアプリもあるし、ネットからエクセルなどでダウンロードもできます。使いやすいものをご自分で探して利用してください)

まず、問診があります。その後問診の結果などを参考にして検査が行われます。

問診

  • 実際に睡眠障害があるかどうかを確かめるために、就寝時刻や起床時刻を含めた1日の生活について詳しく聞きます。 
  • 日中の活動内容から、日中に活動していて疲れているにもかかわらず、夜眠れないのかどうかが判断されます。 
  • 睡眠障害であれば、どのタイプに該当するかを調べます。 
  • 薬が原因の場合もあるので、服薬している場合は、薬の名前も伝えます。 
  • 体の痛みやかゆみ、不快感なども原因となる場合があるので、その有無も確認。 
  • 寝室に問題がないか、睡眠時の環境も確認します。
  • 更に心の問題がないか、憂鬱感、意欲低下、自責、自己否定などが無いかも確認します。

睡眠日誌があると、非常に役に立ちます。

  • 寝床に入った時刻と眠りについた時刻、目を覚ました時刻、眠りの状態などを記録します。昼寝や居眠りをした場合も書き込みます。また、日常講堂の変化も簡単に記録しておきます。
  • 睡眠日誌は、まとめて記入しようとすると忘れたりして、正確な睡眠の状態を伝えることができません。記録する時間を決めたりして、習慣づけるようにしましょう。

検査の種類

終夜睡眠ポリグラフ検査 睡眠中の脳波や眼球運動などを調べます

反復睡眠潜時検査 眠りに入るまでの時間などを調べます

簡易モニター 睡眠中の血中酸素の濃度などを調べます

アクチグラフ 日々の行動量が記録されます

などがあり、睡眠障害のタイプなどの診断に役立てます。それぞれの検査で具体的にわかることなどに関しては、ここでは割愛します。

 

交代勤務、夜勤のある仕事は対処が異なる

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看護師など、交替勤務、夜勤のある人は、勤務期間が頻繁に変わるので、体内時計の調整が間に合わず、体温やホルモンの分泌なとの周期がずれてしまいます。日勤のみの仕事をしている人と同じような対処では、睡眠不足を改善することは難しいのです。

早寝早起き、ゴールデンタイムに睡眠をとる、生活習慣を見直すなど一般的な睡眠にかかわるトラブルの改善に役立つ方法が、そのままで看護師などの職種にも効果がある、とは言えません。

睡眠の悩みを解消する情報の過多

睡眠にかかわる悩みは老若男女、いつの世もあるものです。良い睡眠をとる方法、睡眠不足を防ぐ方法、睡眠のメカニズム、など検索すると数えきれないほど、解説しているサイトが有ったり、睡眠に関する書籍なども豊富です。多少の差はあれど、ほとんどが同じようなことを、表現を変えたりしてよりわかりやすく、より詳しく説明することを競っているかのようです。

レム睡眠だの、ノンレム睡眠、90分サイクルで、体内時計など原因や改善について言われますが、看護師のように交替制勤務、夜勤など、通常の勤務形態とは違う仕事についている人にとっては、それらは知識として役に立っても、現状とはへだたりがあり、そのまま当てはめることはできません。

 

まとめ

看護師のように夜勤、交替制のある仕事では、勤務時間の変動が大きく、睡眠薬のお世話になることが増えます。薬に対する正しい知識、正しい使い方をすれば眠剤は怖いものではなく、不眠の軽減に大変役立つものです。

不眠で生活に支障がある場合は、早めに医師に相談しましょう。薬物療法で不眠の悩みがうそのように軽くなることが多いものです。

睡眠障害について、こちらの記事も合わせてどうぞ。

www.nurse-diaries.com

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参考: 「睡眠薬の適正な使⽤用と休薬のための診療療ガイドライン」

厚生労働科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループ作成

//www.jssr.jp/data/pdf/suiminyaku-guideline.pdf

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