骨の強化や骨折予防には、骨が成長する10歳代から骨量が最大になる20歳代の、食事や運動などの生活習慣が大きく影響します。え“!それでは骨粗しょう症が気になり始めるアラフォーではもう手遅れ?
若いときからの骨の強化が理想ですが…
骨がスカスカになる骨粗しょう症は、いつの間にか骨折や転倒による骨折で、寝たきりから要介護状態に進むことも少なくありません。
骨を強くし、骨粗しょう症のリスクを減らすには、実は骨量が最大になる20歳代までに、十分な量の骨量を確保できるようにすることも重要なのです。
「ええ“!それじゃあもう手遅れなの?」と思ったあなた、大丈夫です。そろそろ骨の老化も気になり始めるアラフォーや、骨粗しょう症になりやすい高齢者でも、骨の強化は可能です。骨には再生する仕組みがあるからです。詳しくは後半で説明しています。
もちろん若いうちから食事や運動で「骨太生活」を心がけることが一番ですが、今回は、今からでもできる骨を強くする運動についてご紹介します。
そして、どんな人が骨粗しょう症になりやすいのかも確認し、問題が有れば骨を強くするよう生活習慣を見直していきます。
運動と骨の強化の関係
骨も皮膚と同じように新陳代謝*で常に作り変えられています。骨密度を上げて骨を丈夫にするには運動と食事の改善が大切。更に運動は、転びにくい体力づくりに役立ちます。
なぜ運動が骨を強くするのか。骨は負荷をかけるとそれに応じて強くなり、反対に負荷をかけないでいると弱くなる、という性質があるからです。
骨に垂直方向の力が加わると、骨密度が高まり、骨が強くなっていくことがわかっています。
垂直方向の力が骨に加わると
→骨細胞を囲んでいる細胞外液に流れができる
→骨細胞がその流れに反応して、骨芽細胞に骨を作るように司令を出す
この司令で骨芽細胞は活発に骨を作り始めます。
垂直方向の力を加える運動には、陸上競技やバレーボール*などがありますが、共通しているのは地面を強く踏みしめることです。
*骨の新陳代謝については後述しています。
骨を強くする運動・転倒予防の運動
ウオーキングも地面を踏みしめる運動です。階段の昇り降り、スクワットなども骨を強くする効果があり、陸上競技やバレーボールなどの運動をする必要があるわけではありません。
地面を踏みしめる運動をすると、骨に垂直方向の衝撃がより加わり、太ももの骨や背骨のように、体を垂直に支えている骨に強く働きます。
骨折して寝たきりなどになるのを防ぐには、転倒による骨折を防ぐことが大切。自分のペースで安全に行えるスクワット、片足立ち、スネの前の筋トレ、足の指でタオルをたぐり寄せる運動などがおすすめです。
体力のある人はウオーキングやジョギングなども行うと良いでしょう。
- 片足立ち:バランス感覚と足の筋肉を鍛える
ひざに掛かる負担が少ないので、ひざの悪い人でも行いやすい運動です。 - スクワット:足腰全体の筋肉を鍛える
- スネの前の筋トレ:つま先を上げやすくする
高齢になってつま先が上がりにくくなると、つまずいて転ぶ危険性が増すので、それを防ぎます。 - タオルたぐり寄せ運動:足先の踏ん張りを鍛える
老人ホームや介護施設を利用している高齢者が、半年の間に点灯する回数を、片足立ちを続けた人は、しなかった人に比べ平均転倒回数が低かった(0.57回→0.38回)と言う報告もあります。片足立ちは転倒予防に良い、ということがわかりました。
*女子大生の太ももの付け根の骨密度の平均値を、中高生時代の運動歴(陸上競技、バレーボール、水泳、運動歴なしの4グループ)で比較した研究では、陸上競技、バレーボールをしていたグループの方が骨密度の平均値が高いことがわかった。
運動のやり方
高齢者でも安全にできる転倒予防・骨を強くする運動のやり方を簡単に説明します。無理のない範囲で続けましょう。痛みが出ない範囲で、誰かと一緒に行うと安心です。
すでに骨粗しょう症の人は、主治医とよく相談してから自分にできる運動の種類や量、ペースで始めましょう。
スクワット
- 机に両手をつく
- ひざがつま先より前に出ないようにゆっくりと腰をおとす
- もとの状態にゆっくりと戻る
- 5~6回繰り返すのを1セットとし、3セットおこなう
片足立ち
- バランスを崩したときにつかまれるよう、机やテーブルなどの横にたつ
- 途中で両脚をついても良いので、片足で1分間ほどたつ
- 左右1分間づつを3セット
スネの前の筋トレ
- 椅子に座り、かかとを床に付けたままできるだけあげる
- 5秒間保ち、つま先を下げる
- 10~20回を1セット、3セット行う
タオルたぐり寄せ運動
- タオルを椅子の前に足元から前方に向かって広げる
- 椅子に座り、脚をタオルの手前の橋にのせる
- 脚の指でタオルを握りたぐり寄せる
- 3回繰り返すのが1ッセと、3セット行う
骨密度と骨量
骨の強さには、骨密度と骨量が関係しています。骨を建物に例えると、カルシウムなどのミネラル類がコンクリート、建物を丈夫にする鉄筋がコラーゲンなどのたんぱく質です。
カルシウムなどの密度を示しているのが骨密度で、コラーゲンがしっかりしているかどうかを示すのが骨質です。
骨密度
骨の主な材料であるカルシウムなどのミネラル類の密度を示しています。
骨は新陳代謝で常に作り変えられていて、 個人差はありますが、1年で全身の骨の2~10%が作り変えられています。
健康な人では、骨を壊す細胞と新しい骨を作る細胞がバランス良く働いているので、骨量は一定に保たれています。
しかし、加齢や運動不足、過度のダイエット、偏食などでバランスが崩れ、壊す細胞の働きが作る細胞の働きを上回ると、骨量が減少し骨がスカスカに。
- 骨を壊す細胞: 破骨細胞(古い骨を壊し、孔をあける)
- 骨を作る細胞: 骨芽細胞(開いた孔を埋めていく)
破骨細胞と骨芽細胞の働きのバランスが取れていれば、新しい骨は丈夫な骨になります。
骨質
カルシウムなどをつなぎ合わせている、鉄筋に相当するコラーゲンがしっかりしているかどうかを示すのが骨質です。
コラーゲン同士がしっかり繋がっていれば、丈夫な骨質となります。
骨粗しょう症になりやすい人の特徴
骨粗しょう症は閉経後の女性や痩せすぎの人に多く、男性の3倍*と推計され、高齢になるほど増えます。加齢とともに骨も老化していきますが、過度なダイエットや偏食、運動不足などの生活習慣があると、将来骨粗しょう症になりやすい。
実際子供や若い人で、ちょっと転んだりしただけで骨折しやすい人も増えているようです。
あなたはこんな習慣に心当たりはないですか?
- 若い頃に過度なダイエットをした
- 偏った食事
- 運動不足
- 飲酒・喫煙
- 生活習慣病(糖尿病や慢性腎臓病)
- 家族に骨粗しょう症
などがある場合も、発症のリスクは高まります。
*日本骨粗しょう症学会 ガイドライン2015年版より
骨が弱くなる原因と理由
加齢
年をとると町でのカルシウムの吸収が悪くなります。若い頃と同じ量のカルシウムを取っていても体に吸収される量はすくなくなり、カルシウム不足になりやすくなります。
閉経
女性ホルモンや男性ホルモンは骨量を保つのに役立っていますが、女性は閉経後に女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が急激に減っていくので、骨量が減りやすくなります。
ダイエット
栄養、特にカルシウムなどが不足しやすく骨が弱くなります。得意骨が成長する10歳代での過度のダイエットは、非常に問題です。
骨量の最大値は20歳代ですが、この最大量が低いと、閉経後速いうちから骨粗しょう症を起こしやすいことがわかっています。
その他の原因と理由
- やせすぎ 体重が軽いので骨に適度な負荷がかからず、骨が弱くなる
- 喫煙 エストロゲンの分泌を低下させる
- 過度の飲酒 骨芽細胞の働きを邪魔し、骨を作る働きを低下させる
- 糖尿病や慢性腎臓病(CKD)などの生活習慣がある
骨折しやすい場所
骨粗しょう症になると骨が折れやすくなりますが、特に
- 太ももの付け根
- 腕の付け根
- 手首
- 背骨
が折れやすく、高齢者では太ももの付け根の骨(大腿骨近位部)を骨折すると、骨折自体は治っても筋力の低下で歩行困難や、寝たきりになることも少なくありません。
寝たきりはその後様々な病気を発症しやすくなり、命に関わることもあります。
背骨の椎骨は弱くなっていると、前かがみになっただけでも圧迫骨折することがあります。すぐに気づかないことも多く、骨折する椎骨が増えて背中や腰の痛みが引き起こされることもあります。
まとめ~骨を強くする運動で健康長寿
骨粗しょう症はちょっとしたことで骨折しやすく、寝たきりになって病気を発症したりと、人生や寿命にも大きく関わります。
将来骨粗しょう症にならないためには、20歳代の骨量を最大にする生活を行うことが重要ですが、アラフォーのあなたも、高齢者のあなたも、今からでも遅くありません。
健康な骨は新陳代謝で常に新しい骨に再生されていますので、栄養バランスの取れた食事を心がけ、骨を強くし、転倒を予防する運動を始めましょう。
閉経後は骨密度の検査を受けることをおすすめします。
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