肩と腕の痛み、と言えば日常生活にも支障をきたす五十肩があげられます。五十肩には3つの時期があり、それぞれ治療法が異なります。早期の改善を目指す、時期に応じた治療法についてお伝えします。
五十肩とは
五十肩(肩関節周囲炎)は肩関節をおおっている関節包や、潤滑油の役割をする滑液で満たされた滑液包に、何らかの原因で炎症がおき、肩が痛む病気です。
五十肩は無理をしても動かしたほうが良いと考えている人が多くいますが、動かしてはいけない時期もあります。
行ってはいけない時期に肩を動かすと、かえって炎症を悪化させてしまうので、経過にあった治療を受けることが大切です。
症状と経過
五十肩は腕を動かすと強く痛むなどの症状が突然起こります。痛みのために、腕を後ろに回せなくなったり、頭に手が届かなくなるため、洋服を着る、背中や頭を洗う、お尻を福、と言った日常生活にも支障をきたしてきます。
痛みは特に夜間、寝ているときに起こりやすくなります。体を起こしている昼間は、腕が重力で下に引っ張られるため、肩関節が安定し、関節包や滑液包などの組織はあまり圧迫されません。
しかし、横になって寝ると、寝返りなどで肩関節が動きやすく、炎症が起こっている関節包などが刺激され、眠れないほどの強い痛みが生じます。
運動療法は五十肩を早期に改善するために重要な治療法ですが、時期に合わせた治療を受けることが大切です。五十肩の経過は以下の3つの時期に分けられます。
五十肩の経過3つの時期
発症~約3か月 急性期 | 約3か月~年 抱縮期 | 1~2年以降 回復期 | |
---|---|---|---|
痛みの程度 | 非常に強く痛む | 和らいでくる | ほぼ改善する |
薬物療法 | 消炎鎮痛薬(内服薬、貼付薬) | ほとんど行われない | |
局所麻酔薬(注射) | 急性期は痛みが強いため、消炎鎮痛薬や局所麻酔薬で痛みを抑える。 抱縮期でも痛みがある場合には、消炎鎮痛薬が用いられることもある | ||
運動療法 | 行わない | 開始する | 積極的に行う |
五十肩は以下のような3つの時期をへて、やがては自然に治りますが、長い場合は2年ほどかかります。改善、治癒までの期間をできるだけ短くするためにも、時期に応じた適切な治療を受けることが大切です。
急性期
発症からおよそ3ヶ月の間で、炎症が強く、眠れないほどの強い痛みが現れる時期です。寝返りをうったり、腕を少し動かしただけで、強く痛みます。
抱縮期
関節包や滑液包などに癒着が起き、関節が縮まって固くなる時期(抱縮期)です。五十肩の多くは、発症から約3ヶ月で抱縮期に移行し、少しずつ痛みが改善していきます。夜間、痛みがなくぐっすり眠れるようになったら、抱縮期に入ったと考えて良いでしょう。
回復期
発症から1~2年以上経過した時期です。この時期になると痛みはほとんどなくなり、肩の動きも少しずつ改善してきます。
出典: 日本整形外科学会
治療
五十肩の治療は、主に薬物療法と運動療法です。時期に合わせて、これらを組み合わせたり、どちらか一方が選択されたりします。具体的には、以下のような治療を行っていきます。
急性期は炎症を悪化させる危険性があるので運動療法は行わず、抱縮期以降は、肩関節の動きを改善するため、運動療法を行います。
急性期の治療
痛みが強いので、消炎鎮痛薬を用いて痛みを軽減します。内服薬と貼付薬があります。痛みが非常に強く、日常生活に支障が出ている場合は、局所麻酔薬を肩に注射することもあります。
この時期は、運動療法を行わず、肩を安静にして過ごすことが大切。痛みがあるのに無理に肩を動かすと、痛みが悪化する危険性があります。特に腕を上げる動作をすると、炎症を起こしている滑液包や腱板などが、肩峰に圧迫され、さらに炎症が強くなると言う悪循環が起こってしまいます。
抱縮期の治療
急性期よりは和らぎますが、痛みは残っているので、消炎鎮痛薬が継続して用いられることがあります。
固くなった肩関節を動かさずにいると更に抱縮が強まり、動かしにくくなるので、適切な運動療法を開始することが大切です。
腱板に負担をかけずに行うことができ、関節包をストレッチすることで肩関節の動き(可動範囲)を改善する効果がある、振り子体操が有効です。
回復期の治療
痛みはほぼ改善されるので、薬物療法はほとんど必要が無くなります。痛みがなくても、肩関節の抱縮は残っているので、より積極的に運動療法を行いましょう。
肩関節の動きを更に改善する効果がある、棒体操が進められます。準備運動として振り子体操を行い、次に棒体操を加えると良いでしょう。
振り子体操
- 机の横に立ち、痛みのない側の手を机につき、上体を軽く倒す
- 痛みのある腕は力を抜き、下に垂らす
- 軽く反動をつけて、下に垂らした腕を揺らす
- 肩の力を抜いて揺れが自然に収まるまで続ける
- 腕の動きが止まったら、再び軽く反動をつける
- これを繰り返す
- 痛みのない腕も同じように行う
基本は、前後左右に揺らす。痛みがなければ、手首を回すようにも揺らす
片腕につき5分間、1日2~3回行う
棒体操
- 体の前で腕を上げる
- 背筋を伸ばしてたち、体の前で長さ約1mの棒(傘や杖、タオルなどでも可)の両端を上からもつ
- 棒を水平に保つようにしながら、ゆっくりと両腕を上げる
- 肩の痛みを感じたら、痛みのない腕で棒を軽く引き上げ、痛みのある腕を少し上げる
- 3~5秒間キープし、両腕を下ろす。
- これを繰り返す
- 5~10回、1日2~3回行う。
上の体操が楽にできる場合は、以下の体操もオススメです。
腕を横に上げる
- 背筋を伸ばして立ち、体のまで棒の両端をもつ(痛みのある腕は棒を下から握る)
- 痛みのない腕でゆっくりと棒を斜め横に押し上げ、痛みのある腕を引き上げる
- 肩の痛みを感じるところまで上げたら、3~5秒間キープし両腕を下ろす
- これを繰り返す
体の後ろで腕を上げる
- 背筋を伸ばして立ち、体の後ろで棒の両端をもつ(棒は下から握る)
- 棒を水平に保ちながら両腕をゆっくりと斜め後ろへあげる
- 肩の異編みを感じたら、痛みのない腕で棒を軽く引き上げ、痛みのある腕を更にすこしあげる
- 3~5秒間キープし、両腕を下ろす
- これを繰り返す
運動療法の注意点
運動療法が必要な時期でも、やり過ぎは禁物。無理なくできる回数から始めて、少しずつ回数を増やしていきます。強度が強すぎたり、回数が多すぎると肩の痛みは悪化します。
運動を毎日継続するためには、自分に適した強度や回数で行うことが大切です。痛みがない範囲で動かし、徐々にその範囲を広げていくようにすると良いです。運動後に強い痛みがある場合は、必ず医療機関を受診してください。
多くの場合、運動療法を始めて2~3ヶ月で肩を動かしやすくなります。効果が見られない場合は、正しく行われていない可能性があるので、一度受診して、適切な方法で行えているかどうかを確認してもらいましょう。
まとめ~五十肩の痛みは治療で早く治す
肩の痛みの主な原因となる五十肩、最初は激痛でも時間をかけて自然に治癒しますが、適切な治療を行うことで、改善、治癒までの期間を短くすることは可能です。
日常生活の支障をなるべく減らすためにも、早めに医療機関で見てもらいましょう。
肩の痛みについては、こちらの記事でもお伝えしています。
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