これまで肩の痛み、3つのタイプについてお伝えしてきました。3つの病気は症状が共通していますが、治療は異なります。それぞれの原因、及び、肩関節の構造について簡単にまとめましたので確認し、治療に役立てましょう。
肩の痛みはどこから?
今日も肩あ?と言わないで、最後までおつきあいいただけると嬉しいのですが…
肩の痛みに悩んでいる人はとても多いです。肩の痛みを改善するには、肩の構造を詳しく知っておくことも大切。正しい知識を持つことで、どのような治療が適切なのかを、適切に理解することができ、日常生活での改善にも役立てられます。
肩関節の構造
肩関節とは、主に背中側に位置する肩甲骨と、二の腕の骨である上腕骨からなる関節を指します。上腕骨の先端は、肩甲骨の浅いくぼみにはまっていますが、非常に不安定です。その為、筋肉や靭帯、腱板などによって支えられています。
その他、肩関節の周辺には、
肩鎖関節 肩甲骨と鎖骨からなる
胸鎖関節 肩甲骨と背中側の肋骨からなる
肩甲胸郭関節 肩甲骨と背中側の肋骨からなる
という関節もあり、大変複雑な構造をしています。
これらの4つの関節が連動することで、肩や腕は様々な動きが可能になっています。例えば、腕を上げるときは、肩関節だけでなく、肩甲胸郭関節も連動して動いています。
肩関節を安定させる靭帯や腱など
肩関節の周辺には、筋肉の他、骨と骨をつなぐ靭帯、筋肉と骨をつなぐ腱が複雑に入り混じっています。さらに、肩峰、烏口突起をつなぐ靭帯がトンネルを作り、その中をくぐるような形で腱板という板状の腱が上腕骨と肩甲骨を繋いでいます。
肩関節の周辺には、その他にも3つの腱板があり、それらによって肩関節は安定しています。腱板は、肩動きによって大きな負担がかかる部位です。
例えば、腕を上げる時、三角筋という上腕の大きな筋肉が収縮して、腱板も一緒に持ち上げられるので、腱板が圧迫されます。腕を上げる動作を繰り返していると、やがて腱板がいたんできます。
肩の痛みの原因3つ
肩の痛みが起こる原因には、主に五十肩(肩関節周囲炎)、石灰沈着性肩関節周囲炎、肩腱板断裂の3つがありますが、症状が共通しています。しかし、痛みの原因はそれぞれ違うので、治療もそれぞれ違います。
治療法を謝ると、痛みが長引いたり、悪化する危険性があるので、「五十肩だろう」と自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。どのような病気が原因で肩の痛みが起きているのか、正しい診断を受けることが大切です。
五十肩(肩関節周囲炎)
出典: 日本整形外科学会
最もよく見られる肩の病気です。五十代に多いため、このように呼ばれていますが、実際には30代~70代までの幅広い年代で発症します。発症頻度に男女差はありません。
肩甲骨は関節包という袋状の組織で覆われています。また、腱板の周辺には、滑液包という組織があります。滑液包の中は、腱板が滑らかに動くための潤滑油の役割をする、かつ液で満たされています。
五十肩が起こる原因はよくわかっていませんが、関節包や滑液包似炎症が起き、肩関節の周囲が癒着するため腕を動かすときなどに、痛みが生じると考えられています。
石灰沈着性肩関節周囲炎
出典: 日本整形外科学会
五十肩同様肩関節の周辺に炎症が起こりますが、肩関節の週へ、特に頻度の高い場所である腱板に石灰(カルシウム)が沈着することで炎症が起こります。
石灰が溜まる原因はよくわかっていませんが、腱板などに石灰がたまると、体内で異物を排除しようとする反応が起きるため、炎症が生じ。非常に強い痛みが現れます。
40~50代に発症しやすく、特に女性に起こりやすい病気です。
肩腱板断裂
出典: 日本整形外科学会
肩関節の腱板が断裂し、その部分に炎症が起こって痛みが現れます。加齢や肩への負担が断裂の原因になるので、以下のような傾向があると起こりやすいです。
- 加齢に伴って発症頻度が高まる
- 重い荷物を持つ仕事をしている
- 喫煙
- 利き腕の肩に起こりやすい
断裂と言っても、完全にけれた状態ではなく、実際には孔が空いた状態です。靴下がすり切れて孔が開くのと同じように、肩の使い過ぎで腱板が傷ついてすり切れ、最終的に孔があいてしまいます。
共通する症状と痛みの原因
五十肩、石灰沈着性肩関節周囲炎、肩腱板断裂ともに症状は共通して、
- 突然の激しい痛み
- 腕の外側の痛み
- 腕を動かすと痛む
- 夜眠れないほどの痛み
などの症状が現れます。症状は同じでも、痛みの原因は違うので、自己判断は危険です。医療機関を受診して、肩の痛みがどこからきているのか、正しい診断を受け、適切な治療を受けることが大切です。
痛みの原因を調べる
医療機関を受診すると、まず視診、触診が行われます。例えば肩腱板断裂の場合、視診で左右の肩を見比べると、筋肉のつき方などに左右差があることがわかります。また、上腕骨の先端あたりに凹みがあり、検診の際に、痛み(圧痛)が生じます。
五十肩では、医師が患者さんの腕をあげようとすると痛みますが、肩腱板断裂では痛みがありません。こうした痛みの特徴も、診断の際に参考になります。
必要に応じて画像検査も行われます。石灰沈着性肩関節周囲炎が疑われるときは、X線検査が有効です。この病気の場合は、石灰の沈着が認められます。
肩腱板断裂が疑われる場合は、MRI(磁気共鳴画像)検査が効果的です。腱板の状態を画像で確認できます。
まとめ~方の痛みは原因により治療法も異なる
一口に肩の痛みと言っても、原因は大きく分けて3つあります。それぞれ治療法が異なるので、まず、痛みの原因をあきらかにし、適切な治療を受けることが重要です。
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