肥満では無いのに血圧が高い場合、特に若い人は、生活習慣に関係なく起こる二次性高血圧に目を向けることも大切です。
高血圧の治療と二次性高血圧
高血圧の約8~9割が原因の特定できない「本態性高血圧」で体質や生活習慣の乱れが要因となって起こります。残りの1~2割は、特定の病気などが原因で起こる「二次性高血圧」です。
本態性高血圧の治療は生活習慣の修正と降圧剤を併用し、血圧のコントロールとなりますが、根本的な治療は難しいです。
しかし、安心してください、二次性高血圧は根治が可能のものが多いです。
今回は、主に二次性高血圧の種類と原因について解説します。
二次性高血圧の種類と原因
二次性高血圧は若いころに発症し、働き盛りに脳卒中などの重大な合併症を起こすことが少なくありません。
臓器障害を起こしてからでは、血圧を正常化させるのは難しくなります。早期発見、早期の治療が重要です。
高血圧の治療は、塩分の摂り過ぎ、運動不足、肥満などの危険因子をできるだけ減らし、生活習慣の修正が目標となり、血圧をコントロールします。
血圧が十分に下がらない場合は、降圧剤を用います。肥満が有っても、無くても同じです。
二次性高血圧の場合は、生活習慣の修正と合わせて、血圧を上げている原因を取り除けば、根治できるものがかなり有ります。
肥満でないのに高血圧の人の治療のポイント
太っていない人の高血圧の生活習慣修正のポイントを5つ挙げておきます。
- 減塩: 一日の食塩摂取量は6g未満
加工食品に表示されているナトリウム量(g)を2.54倍すると食塩量が算出できます。
※mgでナトリウム量が表示されている場合→ナトリウム量(g)=ナトリウム量(mg)
÷1000*2015年4月1日より、食塩相当量で表示されるようになりました。 - カリウムを積極的に摂る(腎障害がない場合)
カリウムは野菜や果物に多く含まれています - 一日に合計30分以上の有酸素運動
- 禁煙
- 節酒: 一日のアルコール摂取量30ml未満
(男性の場合、日本酒1合まで、ビール中ビン1本まで。女性はその半分程度)
二次性高血圧の種類とその原因
二次性高血圧には主に4つの種類があります。
- 内分泌性高血圧
- 血管性高血圧
- 腎性高血圧
- 脳・中枢性高血圧
それぞれの特徴や症状、治療は以下で解説します。
こんな症状があったら二次性高血圧かも
二次性高血圧は特定の病気などが原因で起こります。病気によっては手術で治るものもある。以下の様な症状があったら、二次性高血圧を疑います。
- 高血圧の若年発症(特に家族歴がない場合)
- 高血圧を急に発症
- 50歳を超えてからの発症(特に拡張期血圧が高い場合)
- 低カリウム血しょうや尿の異常(蛋白尿・血尿)を伴う
- 降圧薬のARBやACE阻害薬を飲んで、急激な血圧の降下
- 高血圧のコントロールが難しくなった
1.内分泌性高血圧
内分泌性高血圧は一般に若い人に多く、甲状腺や副腎などの病気による、ホルモン分泌の異常によっておこります。原因として最も多いのは、副腎が関係する次の3つの病気で、腫瘍や副腎の肥大で血圧を上げるホルモンが、過剰に分泌されるために血圧が高くなります。
- 原発性アルドステロン症
- クッシング症候群
- 褐色細胞腫
パセドウ病(甲状腺機能亢進症)も内分泌性高血圧です。
副腎が関係する二次性高血圧
副腎が関係するのは、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫の3つ。
主な原因、特徴、症状は以下の通りです。
原発性アルドステロン症 | |
---|---|
原因 | アルドステロンが増加 |
特徴 |
腫瘍は小さい(5mm以下が多い) 心肥大や脳卒中が起こりやすい 低カリウム血症(約半数に見られる) 降圧薬を複数併用しても、血圧がなかなか下がらない |
症状 |
特有の症状はない (低カリウム血症があれば)夜尿症、手足の脱力感など |
クッシング症候群 | |
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原因 | コルチゾールが増加する |
特徴 |
女性に多い 夜間血圧や早朝血圧が高い 降圧薬が効きにくい 時に症状がほとんど現れない人がいる |
症状 |
満月様顔貌(ムーンフェイス) 、赤ら顔、ニキビ 中心性肥満*、多毛、むくみ 皮膚が薄い、弱い、割れる 筋萎縮、筋力の低下 月経異常、骨折しやすい など |
褐色細胞腫 | |
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原因 | カテコールアミンが増加する |
特徴 |
男女差はなく、20~40歳代に多い 発作性の高血圧が起こり、一気に重症化することがある 高血糖があるが、肥満はない 薬(吐き気止めなどとして使う、メトクロプラミド)などで発作が誘発される |
症状 |
起立性低血圧(立ちくらみ) 胸痛 腹痛・便秘などの消化器症状 突然の頭痛、動悸、発汗、めまい、吐き気 など |
*中心性肥満: お腹のあたりは太くても手足は細い。
治療法
原発性アルドステロン症
「腹腔鏡」という内視鏡を使った手術(腹腔鏡下手術)で摘出。一方の副腎だけに腫瘍がある場合に行ないます。
副腎の腫瘍はごく小さいことが多いので、治療の前に専門的な検査と診断が必要です。身体的な負担は少なく、1週間ほどの入院となります。
「アルドステロン拮抗薬」などの降圧剤による治療。両側の副腎に腫瘍があったり、副腎が肥大している場合。
クッシング症候群
副腎の腫瘍は中くらいの大きさのことが多く、前述の腹腔鏡下手術によって摘出します。
下垂体の腫瘍は、上唇の裏側を石灰、鼻の奥に続く副鼻腔(蝶形骨洞)を経由して摘出手術を行ないます。
褐色細胞腫
副腎などの腫瘍を、可能な限り手術で摘出します。
手術を行う際にも、術前に十分な降圧治療が必要です。
手術が行えない場合は、主に「α遮断薬」を少量から徐々に使い、降圧を図ります。
2.血管性高血圧
若い女性に多い「大動脈炎症候群(高安動脈炎)」によるものが多い。大動脈や肺動脈、頸動脈などの太い血管に病変が生じます。
手首などの脈拍が弱く、血圧の左右差が有り、失神も起こしやすい。ステロイド薬や降圧薬による薬物療法の他、手術を行うこともあります。
3.腎性高血圧
腎臓は体内のナトリウム量をコントロールする役目をにない、血圧と深く関わっています。腎臓が関係する二次性高血圧の代表的なものは
- 腎実質性高血圧: 腎臓そのものの病気が原因で起こる
- 腎血管性高血圧: 腎臓に欠英気を送り込む血管が狭くなって起こる
です。両方が合併しているケースもあります。
腎実質性高血圧
原因となる腎臓の病気には
- 糖尿病性腎症
- 慢性糸球体腎炎
- 多発性嚢胞腎
などがあります。
治療
完治は難しく、食事療法や薬物療法が中心になります。「ARB」や「ACE阻害薬」を中心とする降圧薬治療で、血圧をしっかりコントロールすることが、腎不全を予防するためにも必要です。
腎血管性高血圧
腎動脈などの腎臓に血液を送り込む血管が、何らかの理由で狭くなったり、詰まったりして起こります。
- 血管の筋肉の異常(線維筋性異形成)により血管が細くなる(若い人に多い)
- 腎動脈の動脈硬化(腎動脈硬化症)によって血管の内宮が狭くなる(高齢になってから起こる)
これらにより、腎臓への血液量が減ると、血圧を高めて血流を確保しようと、腎臓はレニンという血圧を上げる物質の分泌を増やし、全身の血圧を上げてしまいます。
治療
- 血行再建術(カテーテルを使った治療を行ないます)
- 降圧薬治療(レニンの働きを抑えるARB、ACE阻害薬。左右両側の腎動脈が狭窄している場合はβ遮断薬、カルシウム拮抗薬を使用)
腎血管性高血圧ではこんな特徴に注意!
- 家族歴のない人が35歳以下で発症した高血圧
- 中年以降で突然高血圧を発症、又は高血圧が急に重症化
- 脇腹の痛みに続いて高血圧が起こった
- 中年以降の高血圧の人で、原因不明の腎機能の悪化
- ARBやACE阻害薬を用いたら、血圧が極端に低下
- 過去に心筋梗塞や脳卒中をおこしたことがある
- 糖尿病がある
尿路結石や尿管腫瘍
尿路が塞がったり狭くなることが原因で、レニンの分泌が亢進、血圧が上がります。尿路を塞ぐ原因を手術などで取り除きます。
4・脳・中枢性高血圧
脳腫瘍、脳卒中などで急に高血圧が現れることもあります。
まとめ~二次性高血圧は早めに医療機関へ
高血圧の多くは、本態性高血圧で、もともと血圧が高くなりやすい体質があるところに、塩分の摂り過ぎ、運動不足、肥満などの生活要因が重なり、血圧が高くなっているもの。
原因が特定できず、根本的な治療が難しいので、生活習慣の修正、薬物療法で血圧のコントロールをします。
割合は少ないですが、二次性高血圧は特定の病気などが原因で起こります。原因となっている病気を治療すれば、高血圧を根治出来るものがかなりあるのです。
若い人で、肥満も無く血圧が高い場合、二次性高血圧かも知れません。早めに医療機関を受診して、大事になる前に根治しましょう。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ