シミやシワの原因となり肌の大敵とも言える紫外線は、骨を丈夫にする、皮膚がん発症のリスクを高めるなど、健康にも大きな影響があります。紫外線の影響について確認し光老化を遅らせるなどの紫外線ケアを。
紫外線の影響
紫外線は体内でビタミンDを作って骨を丈夫にするなど、体に良い作用をもたらしています。一方で肌の老化をすすめ、良性腫瘍や皮膚がんが起こりやすくなる、などの変化が起こる可能性もあります。
紫外線が皮膚に与える主な悪影響
- 日焼け
- 光老化(シミ、シワ、日光角化症、皮膚がんなど)
- 免疫の働きが低下
- 白内障
肌の老化の原因は加齢によるものが約20%、紫外線による光老化は約80%と言われています。紫外線を浴びた時間と量に比例して老化がおこり、産まれたときから浴び続けている紫外線の量の半分は、18歳くらいまでに浴びてしまっています。
紫外線対策
後述する紫外線による悪影響を防ぐためには、日焼け止めや服装などの工夫で紫外線対策をすることが重要ですが、肌のタイプを知ることや、紫外線が強い時期や場所などについての正しい知識を持つことも大切です。
日焼け止めについても、SPF値、FA分類について正しく知り、適切に利用しないと乾燥肌などの肌トラブルを起こすリスクもあります。
日本人の肌タイプと日焼け止めの選び方、紫外線による健康への影響について見ていきましょう。
自分の肌のタイプを確認
日本人の肌のタイプは、真夏の太陽に1時間当たった時、どのような変化があるかにより大きく3つのタイプに分けられます。紫外線に対する感受性を表したものです。
タイプ | 日焼けした時 | そのあと | ||
---|---|---|---|---|
I | かなり赤くなる | あまり色がつかない | ||
II | 赤くなる | 色がつく | ||
III | あまり赤くならない | かなり色がつく |
タイプI
皮膚がかなり赤くなり、その後黒くなりにくいタイプ。最も感受性が高く、紫外線の影響をうけやすい。
タイプII
皮膚が普通に赤くなり、その後黒くなる。感受性は中位で紫外線の影響はIとIIIの中間。
タイプIII
皮膚はあまり赤くならずに黒くなり、それが持続する。感受性が低く紫外線の影響を受けにくい。
日焼け止めを選ぶ目安
日焼け止めには「SPF 値」と「PA分類」の2つが表示されています。
SPF値
B波による日焼け(サンバーン)をどのくらいの時間防ぐことができるかを示したもの。数値が大きいほど効果が高くなります。日本では現在SPF50+が最も効果が高いものです。
PA分類
A波に対する効果の大きさを示した者で、「+」の数が増えるごとに効果が高くなります。2013年1月から「++++」が販売されています。
タイプ | 日焼け止めを選ぶ目安 | |||
---|---|---|---|---|
散歩、外出、洗濯物を干すなど 短時間の場合 | 海水浴、山歩き、屋外スポーツなど 長時間の場合 | |||
SPF | PA | SPF | PA | |
I | 10~20 | +~++ | 30~50+ | ++~++++ |
II | 10~20 | 20~50+ | ||
III | 5~15 | 15~30 |
日焼けしたくないからと、SPF値やPA分類で効果が高いものを常に使う必要はありません。自分の肌のタイプや使う状況、環境に合わせて使うことが大切です。
普通の生活をしている人が、SPF50++++を日常的に使ったりすると、肌へのダメージが強く、乾燥肌や敏感肌の原因となることもあります。
環境、状況とは
散歩、洗濯物を干す、外出など短時間の場合と、海水浴、山歩き、屋外スポーツなど長時間の場合とで使い分けます。
日焼け止めの塗り方例
日焼け止めには、クリーム、ローション、ジェル、スプレーなど、様々な種類があります。使い心地など自分にあったものを選び、使用法をよく読んで適切に使用しましょう。
- 顔全体に塗る場合 クリーム状ならパール粒2個分
- ローションタイプなら一円玉2枚分
- 日焼け止めを手のひらにとり、表面に均一に伸ばすようにする(すり込まないようにする)
日焼け止めは、手で触れて取れたり、汗で流れたりします。2~3時間おきに塗り直すことも大切です。
紫外線を浴びない工夫
日焼け止めを適切に使うことも大切ですが、服装などにも注意して紫外線を防ぐようにします。
日傘、帽子、サングラス、手袋や長袖の服など、なるべく皮膚を直接紫外線に当たらないようにします。紫外線をカットする作用のあるものを利用するのも良いでしょう。
また、紫外線をあびる時間をなるべく少なくすることも心がけてください。曇りの日でも紫外線は届いています。壁や地面からの照り返しなどにも注意が必要です。
紫外線の悪影響とは
紫外線、というとまず浮かぶのは肌へのダメージ。シミ、シワへの影響がポピュラーな悩みですね。紫外線は浴びすぎると、健康に影響があることが多くの研究によりわかってきました。紫外線が関係していると考えられている病気には以下の様なものがあります。
急性
- 日焼け(サンバーン、サンタン)
- 紫外線角膜炎(雪目)
- 免疫機能低下
慢性
- シワ
- シミ、ほくろ
- 良性腫瘍
- 前がん症(日光角化症、悪性黒子)
- 皮膚がん
- 白内障
- 翼状片(白目が翼状に角膜(黒目)に侵入する繊維性の増殖組織。視力障害をきたす)
A波とB波の危険度
A波
波長が長いA波の危険度はそれほど高くありません。しかし長時間浴びると皮膚の中(真皮)まで届き、細胞を傷つけます。
B波
波長の短いB波は皮膚の表面(表皮、真皮の一部)にしか届きませんが、危険度はA波よりかなり高いとされています。
日焼けによるダメージ
サンバーン 赤い日焼け
- 太陽光線に当たって、8~24時間ぐらいで現れる
- 皮膚が炎症を起こして赤くなり、ヒリヒリしたり、水ぶくれができたりする
サンタン 黒い日焼け
- 太陽光線に当たって、4、5日~1週間ぐらいで現れる
- サンバーンが落ち着いた後に現れ、色素沈着が暫く続く
日焼けでダメージを受けると皮膚の弾力性を保つコラーゲンやエラスチンなどの成分を作る、線維芽細胞が壊されたり、皮膚の細胞の核に傷が残ったりし、将来的にシミやシワができやすくなる、皮膚がん発症のリスクが高まるなどの影響があります。
日焼けの対処
日焼けをした場合は、早く炎症を沈めることで、細胞の破壊を少なくすることが可能です。軽症の場合は、水道水で濡らしたタオルを当てて冷やします。
それで治まらない場合は、皮膚科を受診してください。ステロイドの塗り薬や飲み薬を使ったりします。症状が重い場合は点滴をして炎症を鎮めます。
光老化
シミ、シワでお悩みの方には、おなじみと言ってよいほど言われるのが「光老化」です。長期間日光に繰り返しあたり続けたことで起こる顔や首、手などの皮膚の変化を指します。
加齢によっても皮膚の老化は起こりますが、浴びた紫外線の総量が多いほど、光老化は早まります。
光老化では、シミ、深いシワ、厚く硬い皮膚、たるみ、血管拡張、良性腫瘍や皮膚がんのリスクなどの変化が起こります。
産まれてから浴びた紫外線の量による
紫外線は産まれたときから浴び続けていますが、赤ちゃんや子供にはシミやシワが現れないのは、肌が本来持っている力によるものです。
加齢で機能が低下したり、紫外線によるダメージを修復しきれなくなると、トラブルとして現れます。紫外線の害は、ある一定の量を越えたところから現れます。
良くコップの水に例えられますが、コップに少しずつ水を入れると、だんだんたまってやがて縁から溢れそうになりますね。そこに1滴の水が落ちると、一気に溢れます。
紫外線も同じです。子供の頃から不必要に紫外線を浴びることがないように、紫外線対策が必要なのはこのためです。
しかし、紫外線はカルシウム代謝の調整をするビタミンDの合成にとっては必要なものなので、必要以上に紫外線対策をするのはかえって良くありません。
紫外線が主な原因である皮膚がん
有棘細胞がん
顔に多くイボと間違われやすい
基底細胞がん
日本人の皮膚がんの中でよく見られ、顔に多い。比較的おとなしいがんとされるが、放置しておくと大きくなったり、皮膚の深部に入ったりするので早めの治療が大切
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性度が高く、治療しないと命に関わることが多いがん。日本人の場合、手のひら、足の裏、爪の下にできやすい
日光角化症
がんの前段階で高齢者に多い。顔や手の甲にできやすい
有棘細胞がん、基底細胞がん、悪性黒色腫の治療はがんの部分を切除する手術が治療の基本です。日光角化症は手術の他、免疫の働きを高めて腫瘍細胞を壊す作用を持つ薬が使われることもあります。
意外と知らない紫外線のこと
紫外線は地球に届く太陽光線のうち、目に見えず波長の短い光で、波長のちがいにより「A波(UVA)」、「B波(UVB)」、「C波(UVC)」の3種類があり、A波とB波の一部が地上に届いています。C波は地上には届きません。
A波とB波では、皮膚に与える影響が違います。また、紫外線の強さは時期によりちがいますが、紫外線は年間を通して降り注いでいます。時期に合わせた対策をすることが大切です。
紫外線が多い時期、環境
紫外線の量はお天気にも左右されますが、実は一番多く降り注ぐのは雲一つない快晴ではなく、晴天で雲がでている日です。紫外線が雲に反射して全体の量が増えるのです。
また、地面やビルなどの壁からの照り返しも注意が必要。室内にいても窓越しにA波は届きます。
各地点の日最大UVインデックスを1997年から2008年までの期間について平均した月別グラフです。
UVインデックスは、衛星による上空のオゾン量や気象台・アメダスで観測された日照時間などのデータ(1時間積算値)を用いて、 推定しています。
出典: 日最大UVインデックス(推定値)の年間推移グラフ1997~2008年 東京 気象庁
月別の紫外線の強さは、平均すると7、8月が最も多い傾向にありますが、実は3月頃から増え始め、5、6月にも真夏と同程度の紫外線が降り注いでいるので、紫外線対策は5月頃から本格的に始めると良いでしょう。
3月、4月でも外にいることが多い場合は、それなりの紫外線対策をお勧めします。
ビタミンDの合成を助ける働き
紫外線は悪影響ばかりではなく、ビタミンDの合成に必要なものです。ビタミンは体に欠かすことのできない栄養素で、食物から摂取します。
しかし、ビタミンDは皮膚で合成することができるのです。その時必要なのが紫外線の助けです。
でも、日焼けしないように紫外線対策はしなくてはいけないし…大丈夫です。
- 両手の甲の面積が15分日光に当たる程度
- 日陰で30分くらい過ごす
これらのことで食品から摂取される、平均的なビタミンDの量と合わせると、十分な量のビタミンDが得られると思われます。
ビタミンDの働き
ビタミンDの主な働きはカルシウムの代謝を調整することです。カルシウム不足やビタミンD不足になると、骨折の危険性も増し、骨粗しょう症の原因の一つとも考えられています。
また、妊婦さんがビタミンD不足だと、赤ちゃんの骨の発育に影響を与えることが報告されています。
妊娠中や授乳中の女性や中高年女性は特に、屋外に出る時間を作ったり、ガラス越しではなく直接日光に当たる工夫をすることが勧められます。
誤解されやすいメラニンの働き
紫外線を浴びると日焼けするのは、メラニンの働きによるものであり、シミの原因と悪者扱いされているメラニンですが、本来の働きは皮膚への害を守ることです。
体の中には毎日活性酸素が作られていますが、通常は体内でバランスが取れているのでトラブルは起こりません。
しかし、紫外線に当たると過剰に活性酸素が発生してしまい、メラニンが対応しきれずに肌の約70%を締めるコラーゲンを破壊、シワやたるみなどが起こります。
紫外線に当たると、紫外線のダメージから細胞を守ろうと色素細胞が新しいメラニンを作ります。メラニンは基底細胞の核にある遺伝子を帽子のように乗って守っています。有害な紫外線を吸収したり、散乱させたりする働きをしています。
この働きが上手くバランスがとれず、メラニンが過剰に生成されたり、ターンオーバー(皮膚の新陳代謝)が乱れたりすることでシミとして残ります。
まとめ
悪者にされがちな紫外線ですが、骨を丈夫にするなどの働きもあることを忘れてはいけません。とは言え、紫外線による悪影響は皮膚がんのリスクの他、しみ・しわ・たるみなどアンチエイジングにも関わり多くの女性の悩みのもととも言えます。
紫外線について正しい知識を持ち、うまくバランスをとった紫外線対策をしていくことが大切です。子供の紫外線対策もお忘れなく。
「Anのひとりごと」~今日も1ページ