脳梗塞の予防には、動脈硬化を促進し、脳梗塞のリスクを高める「死の四重奏」*にならないように、生活習慣病を予防することが大事です。予防のために毎日の生活の中で意識したい、「一無」「二小」「三多」についてお伝えします。
脳梗塞、死の四重奏
アメリカの医師カプランが発表した「高血圧」「糖尿病」「高脂血症」「肥満」の4つが重なると動脈硬化が促進され、脳梗塞や心筋梗塞のリスクがたかまるという説の中で、この4つを弦楽四重奏に例えて「死の四重奏」と表現しました。
これら4つの生活習慣病の発症を防ぐには、問題となる生活習慣を改善することが重要です。毎日の生活の中で心がけたいことが、「一無」「二小」「三多」。ひとつずつ、どんな生活習慣を意識すればよいのか見ていきましょう。
脳梗塞予防に心がけたい「一無」「二小」「三多」
「一無」「二小」「三多」とは、「無煙」「小食・小酒」「多動・多休・多接」を言います。この生活習慣を心がけると、本当に脳梗塞などの危険因子を減らすことができるかどうかを、実際に調査*した結果では、確かに「死の四重奏」から身を守るのに、「一無」「二小」「三多」の生活は有効であると実証されています。
*東京慈恵会医科大学健康医学センター調べ
無煙、小食、小酒、多動、多休、多接の6項目を人間ドックの健診データと比較。肥満度、善玉(HDL)コレステロール値、血糖値、血圧などほとんどの項目で、「一無」「二小」「三多」の生活をしていない人ほど悪い数値が出ていました。
肥満は子供の頃から
食事の欧米化、便利なものが周りにあふれ、動くことが少なくなった現代人は肥満が多い。ゲームや塾通いなどで外遊びがめっきり減った子供たちにも、肥満の子が増えていて切実な問題です。
子供の肥満は、子供の糖尿病が増えているということだけでなく、将来生活習慣病になりやすい、というリスクが高くなるのです。子供の頃に増えた脂肪細胞の数は、その後やせても減りません。そのためおとなになっても、太りやすい体質が残ってしまいます。
中年になって太らないためにも、子供の頃からバランスの良い食事など、生活習慣に注意して、よく動いて肥満を予防することが大切です。
無煙
たばこには有害な物質が多く含まれており、動脈硬化を促進して脳梗塞を引き起こします。
1日20本喫煙する人は非喫煙者と比べると、脳卒中での死亡率が男女ともに1.7倍と言う調査報告もあります(厚生労働省「健康日本21」)発がん物質も含まれ、肺がんなどの原因にもなります。
喫煙指数=1日に数本数×喫煙年数
たばこの害が出やすいのは、若いころから喫煙している人です。喫煙指数は危険度を図りますが、これが400を超えると、脳梗塞や心筋梗塞、肺がんなどの発症のリスクが高まります。危険指数が400を超えている人は、今すぐに禁煙することが望まれます。
禁煙の効果は?
「すぐ効果が出るわけではない」がんの場合は確かにそうです。しかし、脳梗塞や心筋梗塞の予防効果は、禁煙すれば比較的早く表れます。(がんの発症の危険性が半減するまで、禁煙してから5~10年かかります。)
日本の社会全体で喫煙率0%になると、脳卒中で発症する人が約60%減少する、と言う推計もあります(厚生労働省 健康21)
禁煙で発症のリスクが下がる病気
脳梗塞や心筋梗塞、肺がんに限らず、喉頭がんや食道がんなどの各種がん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの危険性も下がります。
女性では、喫煙が流産や早産、低出生体重児などの原因になることもありますが、こうした危険性を減らすことも可能です。
小食・小酒
肥満は死の四重奏のリード奏者。生活習慣が原因で起こる生活習慣病、高血圧、糖尿病、高脂血症は肥満がもとであると言っても良いのです。食べ過ぎ、飲み過ぎは肥満の原因です。40歳を過ぎたら、若い頃の8割ほどの食事量にしましょう。
肥満が脳梗塞の危険性を高めるのは、
- 肥満細胞から分泌されているヤセのホルモン「レプチン」の作用が出にくくなる
- →基礎代謝が下がり、食欲は旺盛になる
- 動脈硬化を防ぐ作用のある「アディポネクチン」の分泌が減少する
ためです。
少食には腹八分目
肥満を解消するには、少食を心がけることが大切です。腹八分目とは、目の前にある食事は、8分目で止めておくということではなく、20歳ころの食事量と比べて8割くらい、ということです。
自然の摂理ですが、年を取ると若い頃に比べて基礎代謝が減ります。なので若い頃と同じように食べていては太ってしまいます。体を鍛えて若々しく見える人でも、内臓の基礎代謝は減ります。若い頃と同じようにはいかないのです。
ただ単に少食にすれば良いわけではなく、栄養のバランスに注意が必要です。少ない量でもバランス良く食べることが大切です。
小酒
アルコール飲料の飲み過ぎが肥満の原因になることも多いです。アルコール自体のカロリーよりも、食欲が増進されるという点が問題です。
つまみを食べながら飲むことが多いので、ついカロリーを摂り過ぎ、肥満につながります。当然脳梗塞の危険性も高くなります。
少量のアルコールは、善玉(HDL)コレステロールを増やすと言った、からだに良い作用もあります。
しかし、アルコールには依存性があり、徐々に量が増えることも少なくありません。飲酒に自制心を持てる人以外は、あまりお酒は飲まないほうが無難でしょう。
飲酒量の目安
適量の飲酒、とはどのくらいでしょう。飲酒量の目安は
- ビール 大瓶1本(633ml)
- 焼酎(25度) 1/2合(約90ml)
- 日本酒 1合(約180ml)
- ウイスキー・ブランデー ダブル(約60ml)
- ワイン 2杯(約240ml)
*この内の1種類だけが、1日に飲んでも良いとされる飲酒量。
意外と多いと思いませんか。ただし、これだけ飲むと良い、というわけではありません。すぐ顔が赤くなる人や女性、高齢者はこれより少ない量にすべきだし、もちろん飲まないで済むなら、そのほうが良いのは明らかです。
多動・多休・多接
3つの多とは、多動、多体、多接のことです。
- 多動 普段の生活の中で意識的に動くようにする
- 多休 多く休む、つまり十分にやすむ
- 多接 色々な人やものに接する
若い頃からこれらの三多を意識した生活習慣を送ることで、将来の生活習慣病の発症を予防し、ひいては脳梗塞の予防につながります。
多動
日常生活で動く機会が減って言うため、その分意識的に運動しないと肥満につながります。
マラソンに挑戦したり、スポーツクラブで汗を流す中高年が増えているのは、ある意味良いことです。
外遊びする子どもたちの姿を目にしなくなっていますが、大人にとっても現代の生活は、動く機会が少なくなっています。交通機関の発達、家事の自動化、パソコンに向かう毎日…
運動は、まとめてやっても効果がありません。間違った方法ではかえってからだに負担をかけたり、トラブルの原因になるので、十分注意することが大切です。
ウオーキングなどの有酸素運動と、筋力トレーニングやストレッチなどを組み合わせて行うのが理想的です。
そして、少しずつでも良いので、毎日続けることが大事。運動の効果は蓄積できません。
多休
十分に休むことが大切。休養の柱となるのは睡眠です。十分な睡眠は疲労回復やストレス改善につながります。
十分に眠り心身の疲労を回復させることで、翌日も元気に働くことが出来ます。睡眠は長く眠れば良いのではなく、時間と質、両方が必要です。
眠れない、眠った気がしないという人も多い不眠症の原因は様々です。睡眠時無呼吸症候群などの病気が原因で眠れないこともあります。悩み事やストレス等、心の問題でも眠れなくなります。
不眠の状態が続くと健康を害することもあるので、気になる場合は睡眠障害の専門医を受診することをおすすめします。
ストレスの解消
質の良い睡眠は精神的なストレスを和らげる効果もあります。脳梗塞の危険因子である心室細動の引き金にもなるので、ストレスはできrだけ解消したいものです。
睡眠以外にも、入浴やアロマテラピー、趣味やスポーツなどの方法も効果的です。
どのような方法であれ、自分自身がリラックスできることが大切です。また、一人で過ごす時間を持つことも、ストレスを減らすことにつながります。
多接
人とのコミュニケーションは何よりも大切です。さまざまな人との出会いを通して、自分自身を高めていくようにしましょう。趣味を持つことも大事です。
趣味を通じて内面を豊かにすることができるし、知り合う仲間との交流も、意義ある楽しいものとなります。
趣味は若いうちから取り組むと良いでしょう。最近話題の老オケなど、定年後に初めた趣味で活躍されている方も増えてきていますが、定年退職後に始めようとすると、なかなか難しいものです。
様々なものや人との接触し、自分の世界を作ることも大切です。
現代は様々な情報がインターネットやメディアなどから、簡単に得られるので、そうした情報を活用し自分の生活を豊かにすることも可能です。
短時間でも自分のために過ごすことが人生を豊かにし、心のゆとりを生みます。
まとめ~健康長寿には死の四重奏に注意を
脳梗塞についてのエントリーが続きましたが、脳梗塞、生活習慣病などの病気の予防をし、健康で長生きするためには、死の四重奏をかなでないこと。
それには毎日の生活習慣がキーポイントであることを忘れずに、理想的なものに近づけるよう、意識することが重要です。
豆知識 生活習慣病と成人病
生活習慣病は、以前加齢により発症すると考えられたため、成人病と呼ばれていました。中でも死亡原因の上位を占める「がん、心臓病、脳卒中」は3大成人病とされ、集団検診による早期発見、早期治療の体制が進められました。
また、3大成人病は40歳前後から死亡率が高くなるため、昭和30年代に主として「40~60歳の成人に多い病気」として、行政により提唱されたものと言われています。
その後の研究で、子供にも発症すること、長年の生活習慣が深く関わっているわかり、高血圧や高脂血症など、子供の頃から予防に注意しなければならないことから、「生活習慣病」と1997年頃から呼ばれることが多くなりました。
現在でも組織や保険などには「成人病」の呼称(成人病センター、成人病特約など)が残っています。
参考
「Anのひとりごと」~今日も1ページ